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【シリーズ】あるじとしもべのダイアローグ(19)

「おいコラしもべ 起きろください」
「…あれ珍しい 寝床に来るなんて久しぶりじゃないですか どうしたんですか」
「どうしたもこうしたもあるか ほら起きろ 今何時や思てんねん」
「何時って…何時ですか」
「日曜も昼の1時半やないか おまいいい年した働き盛りの中年男がよ 何してけつかるねん」
「いい年も働き盛りもなにも…(けつかるてアンタ…)今日は日y」
「そうや 日曜日や 日曜日いうたら何の日やねん」
「日曜日いうたら、休日ですやんか」
「アホか それは世の中のほかの人間たちの話や おまいはちがうよな じゃあおまいはなんやねん 答えろください?」
「なんやねんとは… わたくしも世の中の一員ではないのですか」
「いいえちがいます おまいにとってあるじとはどんな存在ですか」
「どんな存在て…そんな改まって言われても…/// まあその、大事な家族っていうか…///」
「何を布団に入ったまんま照れとんねん ○すぞこのアホボケカス~ その大事な家族とやらによォ おまいは今まで何してくれてんねん コラ」
「なにしてって…それはもう、あるじのごはん代を稼ぎに長崎市内をあっちこっち回っておりましたよ 去年の秋からはほら、ご存じの通り長崎大でしょ、長崎外大に夜はオンラインで東京外大オープンアカデミーでしょ、そしてなんといっても週4日で活s…」
「せやな それだけか??おまいのワイに対するひどい仕打ちは」
「しうちってそんなご無体な 言うなればあるじのごはん代のためにお外に出て仕事をしておりますのに」
だまらっしゃい ワイはその間どうしていたんや」
「… おうちでだらだらと過ごされていたのでは…」
「それはそういう時間もたしかにまああったけど、おまいはワイが遊びたいときもお尻をポンポンしてほしいときも、肝心なときにかぎって家におらんかったんや しかもおまい 週に半分も帰って来んかと思うたら、日によってはほかのネコチャンのにおいつけて帰ってきよるねん 浮気か?浮気なのかコンチキショー」
「いやいやいやいや痛い痛い痛い痛い あるじ それはあんまりです そりゃもうここはネコチャンの街長崎なんですから 一歩外に出たならば、猫さんたちのふれあいなどは日常茶飯事ですから ほかのネコチャンの頭なでたぐらいじゃ浮気になりませんでしょ」
「いーや 浮気です おまいは最低なやつやねん ワイはキレてます」
「(またこのパターンかぇ…)でもほら、週末はちゃんとこうやって実家に帰ってきてますでしょ それもあるじを思えばこs」
「あ!!思い出した おまいがワイを特にほったらかしにしてた時期 アレや 去年10月と12月 どこ行ってたんやっけおまい 言えください コラ」
「10月と12月…?ああ…! トルコとアゼルバイジャンですね データ取りに行ってきましたよ 10月にいたってはあるじの故郷を4年9か月ぶりに訪れることができましてね いやーいろんな人にも会えてよかったです!あとほら、前にも言いましたっけ、アンカラでお世話になってた動物病院のハサン先生、彼があるじによろしく伝えといてって言ってました…って話しましたっけ??」
「… ワイは獣医さんはキライやねん フン いろいろ世話にはなったけど好き嫌いはまた別の話やねん 何の話やねん ちがうねん おまいはその、一人で勝手にトルコにいって、その間ワイはまたほったらかしにされました」
「そんな無茶な 実家でゆったりしておられたでしょ」
「してたけどあかん なんにせよおまいはあかんねん ワイはおまいみたいな出来の悪い…なんちゅうのこう、どんくさいというか薄情というかよお あーあこんなしもべ… ピノチャン現世最大の不幸かも」
「そんなこと言わんと…わかりましたわかりました 起きますよ今 起きます… (起き上がって)で?あるじのご用件は」
「ひさびさに遊べください おもちゃ出してくれください とっておきのやつ あのほれ、芋虫みたいなふにゃふにゃしたやつや おまい隠し持ってたやろあの、トルコ語レッスンの生徒さんからありがたいことに超絶かわいい最強ピノチャンの誕生日プレゼントとかいうのでいただいたやつ」
「… … ああ!はいはい あれですね 今日はあれをご所望で」
「せや あれ捕まえて達成感を味わいたいから おまいはよ用意しろください」
「わかりましたわかりました えーと あれどこいったかな…」
「はよせえください おまいはもう… だからワイにいつもいつもどんくさいいわれるねんで さあはよはよ」
「まったくもう口が悪い… 誰に似てそんな芸風になったんですか」
「おまいがお酒飲んでできあがったときにどっかの言語学者たちの悪口言うてるやんけ ワイそれ聞かされて育った気g」
「あーーーーーーーー聞こえない聞こえない あるじそんな根も葉もないこと言ったらいけません どこかの政治家じゃあないんですから」
「そう?じゃあそんな事実はなかったことにしてやってもええで」
「…ちゅーるで手を打ちましょう」
「ちゅーるやな 2本やで」
「…ちゅーる2本です あんま変なこと言いふらさないでくださいよね」
「わかった わかったて あ 言語学者っていえばさあ」
「っていえば…なんでしょう」
「 おまい、たしか言語学フェス2025のポスターの締め切りが明後日とかいうてなかったっけ」

「(顔面蒼白で)そうでした まだなんも手つけてない ヤバいじゃないですか
「なにがやねん おいコラ おもちゃしまうなください 最低30分 ワイが飽きるまで芋虫動かしてくれや ワイ捕まえてドヤ顔したいやんけ」
「あーもう… しかたない とりあえず、10分で手を打ってくださいな」
あかん ポスター作り終わってから残り20分遊べください」
「(チッ…めんどくさいネコチャンやで…) わかりましたわかりました」

「…まあでもたしかにそやな ポスター出さへんかったらえらいこっちゃ おまい逮捕されてしまうやんけ」
「タイホ?タイホはさすがに大げさでは…」
「いーやヤバいで わからんの?おまい」
「?わかりません…そのこころは?」
「ポスターだけに」
「…ポスターだけに…」
「ケイジ事件になってしまうでしょう」
「…」
「刑事と掲示がかかっとるわけやねこれね!!!!」

(次回に続かない!)(決してだ!!)

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吉村 大樹
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