「やらなきゃならないことをやるだけさ、だからうまくいくんだよ。」
世間が騒がしくなってきました。緊急事態なんて、本来の意味つまり本当の危機として使ったことは無いし、そもそも映画とかドラマでしかあんまり聴いたことがない言葉だし、自分の身が実際の意味を頭と体で実感する言葉として認識したことは、正直ほとんどなかった。東日本大震災の時くらいです。
今回、国から正式に出されたこの緊急事態宣言。諸外国とは異なって、法的な拘束力はあまりない、つまり罰則規定は期待できないんですね。私たちの行動に強い制限を掛けることが、法の下にあって難しいことが明らかになりました。
というか知らなかったんですね僕たち。危機に際しては、フランスみたいに外出したら罰金とか、強制的に店を営業停止にするとか出来るもんだと、恐らく多くの人が考えていたのではないでしょうか。それくらい平和に慣れて生活していたのかなと。だからこそ、比較的自由に今まで暮らしてこれたんだなあって思ったりもした。いいところでもある反面、私たちの規範や善意が土台にあって成り立っていたんですね。
その土台が、今揺らいでいる。
理由はそれほど難しくはない。誰にも先行きが予想できず、一部の人だけでなく自分にも降りかかる可能性があるからです。今まで起きてきた危機を考えてみる。自然災害は起きた地域の人たちに降りかかってきたけど、そうじゃなかった人たちは彼らを支えるように努めた。金融関係の問題は働く人たちに打撃を与えたけど、多くの人にとっては直接命の危機に繋がるものではなかった。だから、問題に関係の無い人たちは誰かを「かわいそう」って思いながら、いつも通りの生活を続けていた。
でも、今回は違う。全員が不安なんです。この事態に今まで誰も直面したことがない。だからどうしていいか分からないんです。危機感が高い人は政府を批判するし、危機感が低い人は平気で飲みにも行く。今までなら、それぞれの自由だからって片づけられてたハナシ。まあそうでしょうな、だって自分には関係ないもんね。でも、今回は違う。だからどうしていいかわからない人がたくさんいる。
強い権力を発揮させて、全員の行動を制限すればいいって意見もあるし、あくまで自粛って意見もある。毎朝コメンテーターの人たちが議論してる。しかし、これは憲法や法律に関わる問題だからどうしようもないので、今議論しても仕方ない。たとえ議論をしても、平行線にしかならないので。もしするとしたら、全部が終わった後でみんなで行っていくべき。
さて、私たちに今必要なことは何か考えてみました。交通機関も動いてるし、飲食店も開いている。外出もしようと思えば出来るのではないか。ある程度の自由を制限することは出来ない中でのこの宣言に、どのような姿勢で向かうのが良いのか。
そんなとき、大好きな映画のセリフが頭に浮かんできた。
「やらなきゃならないことをやるだけさ、だからうまくいくんだよ。」
みうらじゅんさん原作「アイデン&ティティ」の中島(峯田)のセリフです。
普段、「やらなきゃならないこと」ってあっても意識しづらい。本当に「やらなきゃならないこと」なんて滅多にないから。やらないとどうなるかを考えても、そこまで切羽詰まった事態なんて滅多に生じないせん。まして、自分の命に関わる問題はそう起こりません。事実、僕にだって起きたことないし、未だに半信半疑なところもある。実際は、「やらなくてもなんとかなる」とか、「やらなかったら謝る」とか、そんなことばっかりです。
でも今は違う。「やらなきゃならないこと」をやらないと、本当に大変な事態が起こるかもしれない。そんなときだからこそ、「やらなきゃならないこと」が現実味を帯びてきています。立場によって、職業によって、異なるでしょう。でも、今それぞれが「やらなきゃならないこと」が明確になっているはず。実行するかどうかは自分次第ですが、そうしないと「うまくいかない」ことは明白です。
「やらなきゃならないこと」やりましょう。私たちなら出来るはずです。