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令和歌謡論① 乃紫さんのノスタルジー

 何の気なしに見ていたインスタから流れてきた「下北で遊んだハイセンスボーイ」というパワーワードが、胸にぐさりと刺さった。

 今、断片的で印象的なフレーズをSNSで日々消費している生活の中でも、印象に残ったものはちゃんと原曲を聴くようにしています。
 平成の頃はテレビで見て知ってタワレコやHMVで視聴して買うか、誰か(ちょっと尖った音楽好きの人がクラスに1人か2人はいませんでした?)から教わってCDを貸してもらって、音楽を聴いていた。こうやって繋がる友達がいたり、好きな子と駆け引きをしたりしていた青春時代。
 当時は聴こうとする姿勢があって、聴きたいものを自分から受容していた気がする。いつの間にか時代は変わって、主体的に聴こうとしなくても日々の生活、それもいつでもどこでも繋がるネットの世界の中で、勝手に音楽が入ってくるようになった。受け身なのかもしれないけど、この時代の変化を意外とすんなり受け止められている。
 提供し、与えてくれる側のアーティストの皆さんも僕たちに伝わりやすい形が変わっていることを分かっている。モノ(CD)があってそれを届ける形があった頃はGEOやTSUTAYAに通ったけど、Web上でモノが無くても伝わるようになった。これが令和の音楽。

 Youtubeを見ていると、大学生が作曲してみたみたいなショート動画があった。

https://youtube.com/shorts/e0kzDmlz1t0?si=RcOvF77UEPLAOKFn

 これはたまたま過去に僕が見て、すごい才能ある人いるんだなって思った動画だった。なんかこういう偶然に出会える可能性があるのも令和の良さなんだなと感じました。

 その人の名前は乃紫さん。最近SNSを中心に若者から支持を集めている。

「初恋キラー」

「全方向美少女」


 この2曲が特に有名。TikTokやインスタでサビしか知らない人も多いかもしれない。でも、とりあえず曲をちゃんと聴いてみると、印象は変わると思う。なんか癖になるんです。なぜだろうと考えて、他の曲もAmazon Musicで全部聴いてみました。そして、自分なりに一つの考えに至った。

 少なくとも今僕らに聴かれている音楽とは違った。新しいものであることは間違いない。誰かの模倣ではなく、乃紫さんにしかできない音楽。
 その上で僕が感じたのは、懐古主義郷愁、いわゆるノスタルジーでした。乃紫さんの曲は「令和の歌謡曲」だった。

 そもそも歌謡曲とは何を指すかが難しいけど、日本の音楽業界では1990年代以前が歌謡曲、1990年代以降はJpop、という認識がある。どういう違いがあるか。次にもう少し掘り下げていきます。

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