人を育てるより、人が育つ土壌をつくろうという話
少し前にテレビ番組で「協生農法」という栽培法について特集されているのを見た。
ウチは母方のおじいちゃんが農家。
幼少期より農業は身近なものだったので、興味を持って視聴していたところ、これって現在自分が取り組んでいる組織開発と本質は同じなんだなと思った。
参考までに、協生農法とは無耕起、無施肥、無農薬、種と苗以外一切持ち込まないという制約条件の中で、植物の特性を活かして生態系を構築・制御し、の有用植物を生産する露地作物栽培法と定義されている。
また、生態最適とは、与えられた環境条件で可能な範囲で、複数種が競合共生しながらそれぞれ最大限の成長を達成する状態を言うそうだ。
簡単に訳すと、「人の手をほとんど加えなくても色んな野菜・果物が成長し収穫できるような野生の農地を人為的にデザインする」ってこと。
人為的にデザインするってワードがポイントで、何をどこに植えるか?の考え方の基礎は科学的なものらしい。
ここまでくれば皆さんにもご納得いただけるであろう。
協生農法のアプローチの仕方は、組織開発と本質的に同じでしょう?
モノづくり産業を中心に高度経済成長期を歩んできた日本では、ラインごとに組織化され・同じ作業をサボらず黙々と従事できるような人材を育成してきた。
農業で言えば、単一栽培で同じような品質の野菜を大量に作るようなもの。それで日本は勝ってきた。
しかし、VUCAと呼ばれる今の時代、単一栽培的な組織開発は通用しない。
自律的な人材が集まりそれぞれの個性を活かしながら環境変化にしなやかに対応できるような、生態最適状態の組織づくりが求められている。
また、協生農法の基礎に科学があるように、組織開発の基礎には心理学がある。
リクルート社の創業メンバーの一人で、同社元専務取締役の大沢武志氏の名著「心理学的経営」を読むと心理学と組織開発の密なる関係性がよく理解できる。
組織開発においても学術的な根拠に基づいた意図的アプローチが可能であるということだ。
しかし、特に世の中の多くのベンチャー・スタートアップにおいて人材育成や組織開発は創業者の感覚やバイアスに基づくことが多いのが実情。
私の過去のキャリアの中では例外なく、人員の採用・配置・評価・報酬・育成において経営者の私見が色濃く反映されてきた。
人事・組織に興味のない経営者はいない。むしろ非常に熱心である。
業績が芳しくないときには特に、急な思い付きで人員の異動・組織変更・抜擢・降格など実施しがちである。
会社が上手くいっていない「今」の状態を解決するための手段として、人や組織をいじればなんとなく改善した感を得られるのであろう。
しかし、その意思決定には学術的に裏付けされたものではなく、組織の「未来」を見据えたものではないことが多い。
そのような意思決定に人事としてどう向き合うか?
戦略人事の4つの機能の内、HRBP(経営戦略の実現を目指す経営層のビジネスパートナーとして、人事面から貢献することを意味する)というものがある。
人事のプロフェッショナルとして、心理学や経験に基づいた根拠のある提案・アドバイスをすることで、場当たり的な人事施策から脱却し、
人の手をほとんど加えなくても社員が自律的に、自らの個性を活かしながら、非連続的な成長を実現することができる生態最適状態の組織づくりをする。
ちょうど協生農法のように。
人の手を加えて人を育てるのではなく、人が育つ土壌を人為的にデザインする。
人事としての組織開発のアプローチとして、心がけていきたいものだ。
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