「ベイビー・ブローカー」を見て

アマプラ映画感想日記第11弾。
今回見たのはこちら。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8T4MWWQ/ref=atv_dp_share_cu_r

是枝裕和監督が韓国で制作し、2022年に公開された映画で、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門正式出品作品です。

一言で言うと、「正義と悪が交錯する」作品。
ハ・サンヒョン(ソン・ガンホ)とユン・ドンス(カン・ドンウォン)は間違いなく乳児売買に手を染めたブローカー。
ムン・ソヨン(イ・ジウン)は間違いなく殺人犯で、子を捨てて逃げた。
スジン刑事(ペ・ドゥナ)とイ刑事(イ・ジュヨン)はブローカーを摘発しただす存在。

それは間違いなくそうなんだけど、子供を映し鏡にして、それぞれの立場の心情が揺れ動く様子が本当に人間らしいというか、何が正しくて何が間違っているのかわからなくなってきます。
登場人物の間の関係も変わっていきます。
サンヒョンやドンスが徐々にソヨンと子供のウソンに情が移っていき、その姿を見てソヨンのサンヒョンやドンスに対する接し方も変わっていく。

そして顕著なのが2人の刑事。
スジン刑事はブローカー摘発に固執し、囮を立ててまで人身売買を成立させようとする。
同僚のイ刑事は、その姿を見て、自分たちが一番人身売買を望んでいるのではないか、とだんだん不信感を抱いていく。

心境の変化、善と悪の交錯も、グラデーションのように徐々に入れ替わっていく。
…わけでもない。どの人物も心境が様々な方向に揺れ動き、しかもそれらがすれ違う。

結局誰が正しくて、ウソンのためにはどうするのが正解だったの??
物語が終わりに近づけば近づくほど、訳がわからなくなる。

そして個人的にこの物語のキーを握っているのがヘジン(イム・スンス)。
ドンスの育った養護施設に滞在してから売買相手を探すことになるのだが、その施設で育てられているヘジンが施設からの脱走を図って車に乗り込み、一緒に旅をすることに。
ヘジンは基本的にはサッカー好きのやんちゃで手がかかるのだが、ときどきみんなをハッとさせるような、かき乱すような発言をするんですよね。

「ソヨン、生まれて来てくれてありがとう」

結局みんな、この言葉が欲しかったんだなと思います。ソヨンも他の登場人物も。
この言葉があれば、みんな幸せで終われたのかな。

最後の展開はちょっと意外というか、衝撃でした。
そしてこの先が見たい、と思ったところでぶつ切りになってエンドロールが流れるのが憎いですね。
幸せを願います。

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