『クレイジー・リッチ!』ド派手な超絶リッチぶりは表層。ファミリーと価値観の対比を問う映画 9/28(金)~公開中
原題:Crazy Rich Asians ★★★★☆4.8
クレイジーなほどスーパーリッチな御曹司と、NYで中国系移民の母に育てられた大学教授が、結婚するのか、できるのか!?
私が結婚するのはあなた? それとも家(一族)? というラブコメディ。
これが、全米で3週連続1位というのも納得のおもしろさ。
アジア人としての誇り、プライドも感じさせる1本でした。泣けた。
ケビン・クワンのベストセラー小説をハリウッドでアジア人監督(ジョン・M・チュウ)、全員アジア人キャストという形で映画化。しかも、初登場から3週連続の1位。日本の『カメラを止めるな!』に匹敵するような大事件です。
キャストには、日系の英国人ですが、『ラ・ラ・ランド』や『エクス・マキナ』、ユニクロや資生堂のCMでもおなじみのソノヤ・ミズノさんも出演しています。『007』新作の監督に決まったキャリー・ジョージ・フクナガのNetflix「マニアック」(配信中)では、まさにステレオタイプなルックの日本人科学者を演じているので、こちらの弾けたクレイジーリッチなキャラ(しかも花嫁!)は鮮烈な印象を放ちます。華麗なダンスのシーンもあります。
これは確かにゴールイン・ムービー
結婚は本人同士だけの問題ではないですし、ましてや片方が、シンガポールの礎を築いたような、スーパーリッチな旧家ならばなおさら。そこに残る、日本にも通じるアジア的価値観と、移民のシングルマザーが女手1つで育ててきた現代女性の価値観のバトルでもあるのです。
恋人の母親エレノア役は大好きなミシェル・ヨーなのですが、もし彼女に「あなたじゃ無理」といわれたら、どちゃくそヘコミそうだなぁ…。
しかし、主人公のレイチェル(コンスタンス・ウー)はNY大で経済学を教えている若き教授であり、自立しています。
周囲はそう思われないのですが、財産目当てなんかじゃ、決してありません。シンデレラストーリーとはひと味違うのです。
それでもエレノアを代表とする従来型の結婚観・家族観と立ち向かう、勇気と知性とガッツに溢れる彼女を、思わず応援したくなるはず。
演じるコンスタンス・ウーもキュートです。
また、恋人ニック役のヘンリー・ゴールディングは、ブレイク・ライヴリーの夫役で、アナ・ケンドリックとのラブシーンもある『A Simple Favor』に出演しており、これも現在全米でヒット中です。
「ゲーム・オブ・スローンズ」『ハン・ソロ』のエミリア・クラークとの共演も控えているようで、もうすっかりブレイク男子。
少々ずるいぞ、と思うところはあれど、穏やかで優しくて、紳士なニックの魅力は、終盤のあるシーンで炸裂しております。
アジアンカバーの「YELLOW」に泣く…
最初こそ、原題から『Asians』が取れてしまったことを嘆きましたが、日本の映画人口のすそ野、そして【アジア人】としての一般的な自覚度を思えば致し方ないのかもしれません。『Hidden Figures』の当初の邦題よりは許せます。致し方ありません。
ただ、すでに指摘されているように、日本版ポスターの2人の肌が白っぽく飛ばされているというのは残念です。どうやら、夜の花火に照らされているだけではないらしい、という…。
劇中にはテレサ・テンの「つぐない」からマドンナの「マテリアル・ガール」、プレスリーの「好きにならずにいられない」などのアジアンカバーも多数流れます。これらがまたよいのですが、
特に涙があふれて止まらなかったのが、監督自らコールドプレイのクリス・マーティンに手紙を書いて使用許諾を得たという「YELLOW」のカバー。
もともと大好きな曲である上に、そのシーンのレイチェル、ニックの心情を象徴するかのようで、それを使った監督たちの気概をヒシヒシと感じ、
これは「アイデンティティと誇りについての映画だ」と思った次第。
そう、そして『オーシャンズ8』にも出演していたオークワフィナが、最高! エンドロールでは彼女の本領発揮の、ラップも聴くことができます。