『ROMA/ローマ』どこか懐かしい、もの悲しさと優しさの余韻…。 Netflix配信中
原題:ROMA ★★★★★+
祝!アカデミー賞10部門ノミネート!
ヴェネチア映画祭で金獅子賞を獲得し、現在もいたるところで絶賛され、アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか10部門にノミネートされた、『ゼロ・グラビティ』『トゥモロー・ワールド』のアルフォンソ・キュアロン監督最新作。
昨年の東京国際映画祭で、スクリーンで目にした方が本当にうらやましい!
タイトルのROMAとは、もちろんイタリアのそれではなく、メキシコシティにある町の名前。本作はキュアロン監督自身の幼少期の体験も交えた自叙伝的な作品で、全編モノクロで1971年を舞台に描かれます。
主人公はクレオ(ヤリツァ・アパリシオ)、おそらくまだ10代か20歳そこそこ。白人医師の家でメイドをしています。彼女が夜、部屋の電気を1つ1つ消していく様を360度ぐるっと見せるだけで、その家の豊かさも、構図も、そして一家の関係性までも説明されています。
子どもは男の子3人、女の子1人の4人に、さらにおばあちゃんも。夫人のソフィア(マリーナ・デ・タビラ)はちょっぴり神経質。
あるとき、主人の医師が出張といって家を出ていってしまいます。浮気です。
クレオは同僚を介して知り合った青年と交際し、妊娠。しかし、彼はそれを知ると行方知れずに…。
そんなクレオを中心に描かれていく物語となっています。
水をまく音、子どもたちのはしゃぐ声、犬の鳴き声、クラクションなどの生活音、雑踏、映画館、そして暴動…。
モノクロの映像に、あらゆる音が重なっていきます。
やがて訪れる1971年6月10日。“血の木曜日事件”と呼ばれる学生運動の弾圧・虐殺が起こります。
そこに身重のクレオが巻き込まれていくのです…。
劇中の重層的な音の洪水とは打って変わって、とても静ひつで、余韻の深いエンドロールが爽やかな感動とともにもの悲しさを与えてくれます。
異国の40年以上も前の話が、私自身にとってもどこか懐かしい。東京国際映画祭での上映後は小津安二郎を引き合いに出していた方もおりましたが、確かに、今ではあまり作られなくなったタイプの日本映画を思わせます。
また『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』なども記憶に新しいところ。
すべてのシーンを切り取り、永遠に記録保存したいくらい。1つ1つのシーンが、情報量という点も含めてとても豊かなのです。
ただ人がいて、時が流れて。
ただそれだけのことなのですが、心をとらえて離さない、今を生きている人々。メイドたち。
そう、これもまた女性たちの物語なのです。
『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』でもそうでしたが、台所で繰り広げられる内緒のガーズトークがここにも。
やがて、物語はビジュアルにもなっている浜辺のシーンに帰着していきます。
このシークエンス直前の数十秒もまた、最高の画。
なお、本作はモデルとなったという監督のメイド、リボさんに捧げられています。
アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、撮影賞(キュアロン監督自身!)、美術賞、音響編集賞、録音賞、もちろん『万引き家族』の最大のライバルとなるであろう外国語映画賞にも。
『万引き家族』は外国語映画賞に、『ROMA/ローマ』は作品賞に、という思いが働くのではないかしら…と勝手に予想しています。
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