『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』蒼井優+黒木華似のヒロインで現実味アップ!学歴社会と格差社会を問う。 公開中
英題:BAD GENIUS ★★★★★+
現役の学生さんはもちろんのこと、そのママさん、パパさんにもぜひ観ていただきたい! 久しぶりに観たタイ映画ですが、タイ映画に★5つは、初めてかもしれません。劇場は次の次の回も満席でした。『クレイジー・リッチ!』と同様、年間ベスト10入りは確実かな。
これは、最高に面白かった!
中国・韓国で実際に起きた集団カンニングをモチーフに、タイで映画化された青春クライムエンターテイメントとでも言うべき作品。カンニングの成功をめぐるヒヤヒヤ、ハラハラはジェットコースター・ムービーの感さえあります。
米ヴァラエティ誌は「高校生版オーシャンズ11」と謳っておりますが、決定的にオーシャンズたちと違うのは、ここに登場する高校生たち、10代の天才たちは“これが悪事であること”を十分に認識した上で、言い知れないほどにものすごい葛藤を抱えていること。
それって、日本でも納得するところのある格差(各家庭の経済状況)が背景にあることが大きいのです。
日本でだって、ずいぶん前から言われていることですが、経済格差は教育格差。直結しているんです。
9月22日(土)より、東京の映画好きなら誰でも知っている新宿武蔵野館1館でスタートしたものの、あまりにも満席が続いたため、ヒューマントラストシネマ有楽町や川崎チネチッタなどでの緊急拡大公開も続々決定。
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この盛り上がり方は、『カメラを止めるな!』さながら。
すでにタイ本国では2017年年間興収のNO.1、中国・香港・台湾・ベトナム・マレーシアなどでは、タイ映画史上最大の興行収入を記録しています。日本でも、同様くらいにヒットするのではないかと思われます。
主人公の天才少女から目が離せない
最初こそ、校内の中間テストレベルだったカンニング。天才少女リンに、タイのいわゆるクレイジー・リッチ!な同級生はカンニングの見返りとして金銭を渡しておりましたが、やがてはアメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試「STIC」(実際にはSAT)を舞台にして行われることに。
SAT対策の勉強は実際、都立国際高校などでも行われています。
このSTICでのシーン、約30分にわたり続くハラハラは全身に力が入り、手に汗握る緊迫。それをいっそう煽る音楽の使い方もあざとくて、とても効果的であり、カメラワークも外連味があります。テンポもいい。
リンを演じた、9等身モデルで本作が映画初出演、初主演だというチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは、その聡明さと気の強いところなんかは、蒼井優や黒木華にも通じ、親近感がいっそう増します(冨永愛という声も)。
彼女の目力が、徐々に増していく点は必見です。
しかも監督は、本作が長編2作目、1981年生まれという新鋭ナタウット・プーンピリヤ。恐るべし。
例えば、ジェットコースターのような絶叫マシンから降り立った後って、「いや~今のは、いったい何だったんだ」とぼう然とすることがあるかと思いますが、この映画の終着もそんな感じ。
最後の展開は、絶句ものでした。
ある純粋な良心が、超学歴社会と超格差社会の前に崩壊してしまうのです。
そんな姿は見たくはなかったのですが、きっとおそらく、それが現実。
妙に納得できてしまう、元受験生の母でありました…。
っていうか、勉強しなよ!自分で!
ちなみに当初、STICの試験の舞台はシドニーでなく、日本にしようとしたそうですが、時差がわずか2時間しかないために断念したそうです。