ベトナム ダナン旅 3泊4日・1日目 「思考は現実化する」
旅好きを自認しているが、ポリシーとして、一人旅、行ったことがない場所へ行く、と決めている。
リピートをすることは、ほぼない。
そのお金と時間は、一度も行ったことがない場所への旅に使いたい。
この世を去るまでに、一体何カ国知らない国に行けるのか、挑戦してる気がする。
まだ私が30代の頃、大学へ営業で伺っていた。
最初は飛び込み営業で、やがていつも対応してくださる国際経済学部の教授がいらした。
頭も切れ、私自身あらゆるアドバイスをいただいたが、それらは的を得ていて、苦言も喜んで聞いていた。
当時その先生は50代後半だっただろう。
いつも仕事でいっぱいいっぱいで飛び回ってる私に、先生はある時こんなことを言った。
「仕事、本当に好きなんですね」
「え、はい。好きですね」
「仕事より、死ぬまでに行ったことがない国を全部回りたいって僕は思うんですよね」
「そうなんですか」
「だってあとどのくらい海外に行けるかわからないし」
この時私にはまだその気持ちがわからなかった。
でも、今はすごくわかる。
残された時間が少ないと感じるほど、行ったことがない国、街に行きたい気持ちが。
その先生には大変お世話になり、いつもいろんなお話をしていただいたのは、何かお互いに通じるものがあったのかもしれない。
そんなことを思い出しながら、今回は初のベトナム旅を選んだ。
普通ベトナム旅といえば、ハノイかホーチミンだろう。
ホーチミンには惹かれるものがあったのだが、かなり人もバイクも車も多いと知り、今回の旅の目的にはそぐわない気がして、一旦はベトナム旅を諦めかけた。
しかし、以前から聞いたことがあった、ダナンを調べてみると、グッと興味が湧き、飛行機を調べ、ホテルを調べ、両方がセットになってるものを調べた。
結局ホテルは、昨年の世界一周のおまけで、朝食もアップグレードも付いてくる特典を持っているため、少々高くても結局はこの方が安いだろうと思い、飛行機はLCC、ホテルは五つ星という、チグハグだけど安くて快適な旅を選んだ。
旅の前は、ワクワクドキドキが止まらない。まるで遠足の前の小学生状態だ。準備で忘れてはいけないのは、いくつかの点だけ。
これは別記事で書きたい。
それを終えるとあとは出発を待つだけ。
体調しっかり整え、朝四時半起きで空港に向かった。
行きのタイエアアジアは、荷物が7キロ以内という制限があり、家でも体重計に乗せて確認済みだったが、無事クリアできてホッとした。
日本人より、タイ人と白人が多い機内は満席。
赤い、短いタイトスカートにロングヘアと言う、エアアジアのお姉さんたちの仕事ぶりを、元客室乗務員として見ていたが、彼女たちは「見た目女子、中身は男子」だとつくづく思った。
これは、客室乗務員経験者の人ならきっと同意してくれるだろう。
見た目は女性らしくしていても、緊急事態の時に一瞬を争い乗客の命を救う仕事に就く人はほとんど中身はサバサバ、バリバリ。
彼女たちの国籍はほとんどタイだろうと思ったが、国は関係なく客室乗務員あるある、は世界共通だと思った。
欲しいものをいえば、タイバーツ、円、ドル、なんでも使える。お釣りはタイバーツになるが。
私も、前回のバンコク旅で残っていたバーツを使って、コーヒーを頼んだ。
450円くらいで、美味しかった。
(日本のセブンコーヒーがいかに安いかがわかる。でもこれは決していいことではないのだけど)
隣の韓国人らしきカップルが、日本の有名カステラメーカーのカステラを、器用に底の紙を剥がして食べるのを見て、日本人としてなんだか嬉しかったのも、旅が私にくれたプレゼントに思えた。
バンコクドンムアン空港到着。ここで4時間ほど乗り継ぎ時間を過ごし、ダナンへ向かう。タイバーツを既に持っているのは、なんとも安心だ。
日本からタイ。
タイからベトナムへ。
なんと私たちは簡単に、国境をいくつも超えることができるのだろうか。
それもすべてビザなしでいける、世界最強の日本パスポートを持って、世界でもかなり弱い通貨になりつつある円を背負って。だが、今回のダナンでは物価の安さに驚くことになる。
ダナン国際空港は、中身こそ天井も高く国際空港の体を成しているが、一歩外に出るとインドネシアバリの空港より小さく、モルディブマレ空港と似た雰囲気があった。
ATMで暗証番号を間違えて、少し手間取ったが、なんとか現金を6,000円くらい手にして、ライドシェアを呼んだ。
乗り場に行くと、他のタクシードライバーが声をかけてくるが、ライドシェアならば事前に料金は決まっているし、ルートから逸脱すればセイフテイボタンを押せ、クレジットカード払いができるのだから、すべて断る。
ESIMでつないだWi-Fiが遅く、そこにいる男性スタッフに聞きながら無事呼んだが、空港まで入ってくるとドライバーは入場料がかかるらしく、10,000ドン(60円くらい)を現金で支払う必要がある、と教えてもらった。
現金は持ってるよ、と500,000ドン(3,000円くらい)を見せると、若い男性スタッフが慌てて「それは大きなお金だから、お釣りをドライバーが持ってないかもしれない)と言われた。
じゃあ、もう一回少額のお金をATMで下ろそうかと思ったら、ドライバーがきて、「とりあえず乗れ」と言うので、最悪ホテルのATMでなんとかなるだろう、(こんな時五つ星ホテルは安心だ)と思い乗り込んだ。
(急かしていた理由は、あとからわかる)
荷物もトランクに入れてくれたおじさんは、悪い人ではなさそうだったが、何せ英語が全く通じない。
彼はiPhoneで翻訳ツールを上手に使ってなんとか私と会話しようとしていた。初めは英語で、また途中から日本語で話しても翻訳ツールは見事に翻訳してくれた。
しかし、ドライバーの狙いは明日以降の私の観光地案内の仕事だと気づいたのは、LINE登録をやたらと勧めてきたからだ。
とりあえず登録して友達になったものの、「なんで1人で旅をしてるのか」
「どこからきたのか」と、翻訳ツールでの会話が続く。
その目的は全て、明日以降の観光へのアテンドが目的だったらしい。
やんわりと、疲れてるから明日連絡するね、と言っても、明日明後日はすごく天気がいいから、ここはどうか、あそこはどうか、と運転もそこそこにセールスに余念がない。
今までこの会社も含め、あらゆる国でライドシェアを使ったが、こんなにセールスされたのは初めてだった。
この時の出来事を、一つエッセイ記事にまとめた。
https://note.com/uenohiromi03/n/ncdc736fd5ab9?sub_rt=share_sb
なんとかやり過ごして、ホテルに到着すると、ベルスタッフに「ATMはどこですか」と聞いて、すぐに少額のお金を下ろそうとしたが、50,000ドン(300円)以下は出てこない。
仕方なく彼にそれを渡して、お釣りを40,000ドンもらおうとすると、21,000ドンだけ渡す。
私が驚き、ベルスタッフの若い女性に伝える。彼女がベトナム語に通訳し、ドライバーと彼女を介して交渉が始まる。(そもそも交渉でもないのだが)
すると、「29,000ドン」とかいた領収書を持ってきた。何が何だかわからず、ベルスタッフに聞くと、「あなたが出てくるのを待ってる間にかかった駐車料金だと言っている」と言う。
そう、彼は駐車料金を少しでも安くするために、私を急かせて乗せたのだ。
しかし私は、ライドシェア乗り口に到着してから車を呼んだし、呼んで3分くらいで到着している。
それをベルスタッフに伝えると、渋々再度車に戻り、「40,000ドン」を返してきた。
これでいい。
ようやくフロントへ向かい、チェックインをした。
お部屋は、メンバー特典で最上質のスイートルームに無料アップグレードされ、三日間朝食がつき、五つもあるプールサイドでの2ドリンクも無料になるらしい。
先ほどのベルスタッフの女性同様、若いフロント女性スタッフは美しく、優しい。
途中で、ホテルのマネージャーも挨拶に来た。若きアジア人ビジネスマンと言う風貌は、インドネシア バリの同じ系列ホテルに宿泊した時のマネージャーと似ている。
いかにもできる、スリムなアジアのイケメン男子だ。
レイトチェックアウトについて聞かれたので、真夜中のフライトだと言うと、時間も決めずに、いつまでも楽しんで、と言ってくれた。
さっきのドライバーとのこの違いはなんだ?
もしかすると、古いアジアと新しいアジアの違いではないか、と思った。
私が日本人だと言うとドライバーがすごく喜んだのは、訳もわからず騙される人種と思われていたのかもしれない。彼との交渉中に、「もう180円くらいなんだから彼にチップとしてあげたらいいじゃん」と言う囁きも聞こえたが、ベルスタッフのおかげで、お人好しの日本人では終わらなかった。
その後この聡明なベトナム人ベルスタッフ女性は、私を部屋に案内してくれ、三つもあるバルコニーや二つもあるお手洗い、キッチン、リビング、バスタブなどを見せてくれた。
お礼も兼ねて私は彼女に、20,000ドンのチップをあげた。
120円程度だが彼女はとても喜んでくれた。
「あなたのおかげだから」
と言うと、「彼はあなたからもっとお金を取ろうとしていた」と、ゲストである私の完全なる味方になってくれていた。
ああ、やっぱりこのホテルを選んでよかった、と思った。
部屋は、まさに私のドンピシャの好みだ。
スイートルーム、ホテル最上階、ど真ん中の部屋をごらんください。
マホガニー調の家具
100平米は夕に超える部屋
高い天井にはファンが回るこの部屋で、「ああ、私が住みたいと思ってる部屋だ」と漠然としたイメージがビジュアル化された。
アンテイークっぽい歴史がありそうなクローゼットに、3日分の服を納めると、すぐに三つあるうちの一つの、ソファが置いてあるバルコニーへ出た。
さらに今日は満月だ。
飛行機を予約した後に満月だと知ったのだが、おそらくこれも運命だったのだろう。
言葉を失う美しさ。
他には何もいらない。
この景色を見るために私は、乗り継ぎ時間を含め11時間かけてきたのだ。
その甲斐は十分にあった。
しばし放心状態で見つめ続けたあと、小腹を満たすために一階のレストランへ向かった。
続く