【自分は死なないと思っているヒトへ(養老孟司)】うえこーの書評#83
養老孟司さんの講演集。自然と都市との対比が相変わらず面白い。
現在、日本全国で年間一万人の方が交通事故で亡くなっています。しかし、年間一万人の人が車の事故で亡くなるからといって、車を不気味だという人は一人もいません。けれども、香港でで猛威を奮っているインフルエンザのウィルスが原因で、年間に一万人の人が亡くなるようなことになったら、日本はパニック状態に陥るでしょう。
では、インフルエンザと車ではどこが違うのかということになります。インフルエンザは私たちが意識的につくったものではありませんから、われわれは、それに何重かの重みをかけて嫌う。嫌なもの、不気味なもの、自分たちがコントロールできないものという、いわば典型的な原始的な心性を「自然」という対象に対して投げかけるのです。そういう嫌なものをいっさい消してしまっていく社会、世界が都市であると考えられます。(p.220)
実際に、ウィルスの影響で一万人以上の人間が亡くなった世界になってしまったが、養老先生が20年ほど前に書いた通りのことが起こっている。
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