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消費者政策の新展開を読み解く~「消費者をエンパワーするデジタル技術」~【全7/7】

前回紹介した「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」に続いて、2024年4月30日に「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会」が議論を開始しました。

6月5日に開催された第2回会合では、私たちもヒアリングの機会をいただき、グループ執行役員 CoPA、Fintech研究所長の瀧から当社のサービスの概要や制度上の課題などについて説明しました。

第1回会合からこの専門調査会の課題設定や議論の進め方を、また、第2回会合から、私たちマネーフォワードがなぜこの議論を大事にしているのか、お伝えできればと思います。


第1回会合より

専門調査会のミッション

設置・運営規程によると「消費者を支援するデジタル技術に関する重要事項について調査審議する」とされています。ちょっと、これだけだと言葉が足りない印象を受けますが、ホームページには、「消費者契約の場面において、消費者を支援することに活用できるデジタル技術の現状と見通し、個々の消費者にパーソナライズするAIの検討及び社会実装に向けた課題等を整理し、取りまとめることを目的としています」とあります(強調は筆者)。

特にデジタルでの消費行動や選択において、消費者の「脆弱性」が意思決定に影響を与えうるという課題に対し、消費者自身をデジタル技術やAIによってサポートすること、エンパワーすることができないか、という課題設定だと理解できます。

委員名簿からも明らかなのですが、デジタルやAIなどの技術をご専門とする先生が多く参加していますので、技術的な部分にも踏み込んだ検討が行われることが想像されます。

スケジュール

第1回で事務局から提示された資料(「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会の設置の趣旨及び今後の進め方(事務局資料)」)によると、今年(2024年)の10~12月にかけて報告書をとりまとめて、消費者委員会に報告することが予定されています。

とりまとめに向けて、主に「消費者を支援することに活用できるデジタル技術の見通し」「個々の消費者にパーソナライズするAIの検討」「社会実装に向けた課題等の整理」を検討していくようです。

デジタル技術やAIの社会実装、ということなので、出口(具体的な施策)も制度的なものに限らず、実証事業の実施や研究開発、サービスの認証など様々な選択肢が議論されるのではないかと思われます。

議論の内容

こちらの専門調査会では、初回から委員によるプレゼンテーションが行われています。いずれも大変興味深く、また、この専門調査会の意義への理解を深めることができると思いますので、ぜひご一読ください。(中身に踏み込むと長くなるので割愛します)



第2回会合より

当日は、委員及び事業者からのヒアリングということで、当社を含む3名からプレゼンテーションがありました。



紙幅の都合もありますので、当社の資料に絞って簡単にご紹介します。

マネーフォワードがこの議論に注目する理由

私たちは、「お金を前へ、人生をもっと前へ。」をミッションとして、消費者向けには、お金の見える化サービス「マネーフォワード ME」をはじめとするお金の課題解決のためのサービス群を提供しています。

「マネーフォワード ME」の特徴は、有料プランを提供し、サービス単体で成立させていることです。裏を返せば、連携する金融商品などの手数料に依存しない形でサービスを提供しています。このため、特定の金融商品やサービスへの導線になるのではなく、純粋にユーザー(消費者)の皆様に向き合うことができています。

もちろん、広告の掲載・配信もさせていただいていますし、私たちがユーザーのみなさまに喜んでいただけると考えた商品・サービスへの仲介などもしていますので、収益構造として100%ユーザーサイドのサービスであると言い切ることはできないのですが、「ユーザーフォーカス」という価値観を社内で共有し、特定の金融機関・商品に依存していない、中立的なサービスであること、あり続けることを意識しています。

技術としては、金融機関や決済サービス、ECサイトなどの情報を連携し、1つにまとめるという、最近流行りのAIなどに比べるとある意味シンプルなものです。しかし、この「アカウントアグリゲーション技術」により、誰でも簡単に家計簿をつけることができる、複数のクレジットカードやキャッシュレス決済を使っていてもその履歴を1つのサービス上で見られる、万一不正な履歴があった場合も気づきやすい…こうした様々な価値をユーザー(消費者)の皆様にお届けできています。

第1回会合の資料を見ていると、「パーソナライズされたAI」といったより先進的な技術で消費者の意思決定をサポートすることが念頭に置かれているようにも読み取れます。ただ、その手前で、自分のデータを集めることができ、自分が信頼できるサービスや事業者などに共有でき、意思決定のサポートを受けることができる、という環境を作っていくことが必要です。

ユーザーの皆様から信頼を寄せていただき、毎月利用料をいただきながら家計や企業の大事なお金に関するデータを扱わせていただいている事業者の1つとして、こうしたメッセージをお伝えしてきました。

残念ながら、日本では「自分のデータに対するアクセス権」の議論が進展していません。今回の議論をきっかけに、技術だけでなく、デジタル時代に消費者が守られるためにどのような仕組みや制度が必要なのか、という議論が深まっていくことを期待しています。

第2回 消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会
【資料2】株式会社マネーフォワード提出資料より画像引用

さいごに

ここまで、全7回にわたって消費者政策の新展開と題して、消費者庁や消費者委員会での議論、また、私たちの期待をお伝えしてきました。今議論されているのは、消費者法制・消費者政策の在り方をゼロから作り直すとは言わないまでも、デジタル時代にあった形に大きく転換するチャレンジングな議論です。

簡単な話ではないのですが、ぜひ1人でも多くの方に知っていただきたいと思い、長々と記事を書いてきました。最後までお読みいただいた方、ありがとうございます。今後も議論の進展があればお伝えしていきたいと思いますし、何より、このチャレンジに加わっていただける方がいれば、消費者委員会の議論を傍聴するとかSNSでシェアいただくとか、どんな形でも結構なので、少しでも一緒に機運を盛り上げていけたらと思います。(完)

<このシリーズの過去記事>


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