消費者委員会「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会報告書」について
こちらのシリーズで消費者政策の動向をご紹介してから、半年ほどが経ってしまいました。時が経つのは早いですね・・・
され、この連載の最終回でご紹介した「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会」の報告書が12月4日に公表されました。
私たちの登壇資料やサービス事例も掲載していただいており、それもとてもありがたいのですが、それ以上にこの報告書の内容がすばらしいので、ぜひ1人でも多くの方に読んでいただきたいと思っています。(私が宣伝したところで影響力はないでしょうけど、消費者委員会事務局に成り代わって大宣伝したい気持ちです!)
大まかな構成やポイントはこちらの概要資料にまとまっています。「消費者委員会」ですので、消費活動への影響という観点から論じられてはいるのですが、掲げられている課題や論点は、昨今話題の選挙とインターネットやSNSの関係などとも共通する点が多くあるなという印象です。
この報告書を読んでいると、より広く、人々の意思決定にデジタル技術がどのような影響を与えているのか、そこから生じる課題に、私たちはどのように対応することができるのか、といった課題を考えさせられます。
あとはぜひ報告書をご覧いただきたいのですが、「概要」資料だとざっくり過ぎるし、本文は長すぎる…ということで、生成AIの力を借りて要約を作ってみました。今回はGoogleのNotebookLMを用いています。
私たちが特に関心を持っているのは、金融データへのアクセスのあり方です。デジタル、キャッシュレスの時代に、私たちが家計や資産を適切に管理するためには、自分自身の資産残高や決済履歴などの金融データに、自分が選んだサービスを通じて、アクセスできることが必要です。
多くの方は、銀行口座もクレジットカードも電子マネーやコード決済も複数利用しています。利用しているサービスごとにサービスサイトやアプリにログインして都度確認する、というのは現実的ではありません。家計簿アプリなどのサービスを使って、金融データを一元的に管理できる環境が必要ですし、こうしたサービスへの参入が容易であることが消費者の利益になると考えています。
今回の報告書でも、「消費者をエンパワーする」ためには、自らデータへのコントロールが及ぶことや、データがAPIを通じて連携されることが重要であると明記されました。
金融データアクセスに関する諸外国の動向や、日本の現状についてはこちらの記事でご紹介していますが、日本での議論は遅れをとっています。
今回の報告書などをきっかけとして、金融データアクセスに関する制度検討が具体的に進むことを期待しています。
これまで、消費者政策については、景品表示法など事業に直結する規制に注意を払うことはあったにせよ、あまり注目してこなかったというのが正直なところです。しかし、今回の「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会」の議論は、真にユーザーのためになるサービスは何か、を問い続けてきた私たちにとっても、新たな気付きが多くありました。並行して議論がなされている「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」でも、デジタル時代における消費者法制のあり方について、本質的な議論がなされているように見ています(こちらは「中間整理」が10月に公開されています)。
来年も、消費者政策の展開に注目し、微力ながら何らか貢献もできれば思っています。