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伝記(偉人)の取り扱い方 〜高学年〜

本シリーズでは、道徳科の授業で多くの先生方が「どの学年でも扱うけど、もう一歩踏み込めない・・」と感じることの多い伝記(偉人)教材に焦点を当て、その魅力的な活用法を探っていきます。今回は、高学年の教材を活用して、具体的な授業づくりのアイデアを共有します。
*ぜひ、前号と併せてお読みいただけると幸いです。


1 教材「内村航平 選手」で考える

本号で取り扱うテーマは、元体操選手「内村航平選手」の、子ども時代からら金メダリストへと成長するまでの物語です。
内村選手が理想の自分を思い描きながら、試行錯誤を重ね、夢や目標をノートに記し続けて努力を積み重ねてきた姿が描かれた内容です。
内容項目は「希望・勇気、努力と強い意志」です。
*参考教科書:学研5年「世界に羽ばたく『航平ノート』」

2 教材の見方・考え方

多くの子どもたちは、「努力すること=苦しいこと」や「目標を達成しなければ努力に意味がない」と思い込みがちです。
しかし、本時ではその枠を超え、努力そのものに価値があることを実感してもらうことを目指します。

努力のプロセスは、確かに困難や挫折を伴うこともあります。しかし同時に、工夫を重ねる中で生まれる充実感や、壁を乗り越えたときの達成感、そして小さな一歩一歩に感じる喜びがあります。
こうした経験そのものが努力の持つ本当の価値なのです。

つまり、本時を通して、努力とは単なる結果追求ではなく、その過程に価値があることを学び、挑戦し続けることで自分を成長させていく喜びを知ってもらいたいと考えています。
この学びが、子どもたちの未来を切り拓く大きな力になるといえるでしょう。

3 本時のねらい設定

上記のようなことを踏まえると、ねらいは次のようになります。

【本時のねらい】
目標を立てて、それに向かって努力することは、苦しいこともあるが、それと同時に工夫している時の充実感や、壁を乗り越えた時の嬉しがある。そんな努力すること自体に価値があることに気づき、希望と勇気を持って努力してこうとする態度を育てる。

4 授業展開(発問)

以下の主発問で、ねらいに迫ってみます。また、導入や終末の発問は省略します。

T:内村航平さんが金メダルを取れたのは、なぜですか。
C:ノートを作ったから。
C:お母さんのおかげ。
C:ノートでイメージしたから。

(問い返し)
T:では、ノートを作れば誰でも金メダルが取れるんだね。
C:そんなことはない。
C:ノートに目標を書いて、少しずつ努力しことが大切だと思う。
C:何度も失敗しても諦めなかったのが結果につながった。

T:ノートを書いている時や練習の時は、内村選手は苦しかったでしょうか、それとも楽しかったでしょうか。
C:苦しいこともあるが、楽しかったと思う。
C:色々、工夫することは楽しかった。
C:でも、イメージ通りいかない時には悔しかったと思う。

T:みんなは宿題ノートを書いている時には「楽しい」ですか、それとも「苦しい」ですか。
C:え〜(笑)
C:苦しい方が多いかな

T:では、皆さんの宿題ノートと、航平ノートの違いはなんでしょうか。また航平ノートで得られるものとはなんだろう。
C:航平ノートは自主的にやっている。
C:宿題はやらされていることが多い。
C:だから、航平ノートは続けられるし「楽しさ」を味わうことができる。
C:また、自分の成長の実感することもできる。
C:航平ノートは工夫することの楽しさを知ることができる。
C:続けることの大切さ。
(思考を整理)
T:なるほど、航平選手は自主的にやることで苦しいことや悔しいことを「楽しさ」「エネルギー」に変えたんだね。

【問い返し(Aだから○○だけど、Bなら〜)】
T:金メダルを取れたから、内村選手の努力は実ったけど、金メダルを取れなかったとしら、これらは全て無駄になるよね。
C:無駄にはならない。
C:努力することは次に生かされる。
C:また頑張ろうと思える。
(思考の整理)
T:そっか、努力すること自体にも意味があるんだね。その努力を楽しむことができるといいですね。

以上のように、努力のプロセスに目を向けたり、偉人の「考え方」に焦点を当てたりすることで、内容項目をより深く掘り下げて考えることができます。また、子どもたちの日常の努力への向き合い方と内村選手の姿勢を比較することで、新たな発見や気づきが得られるでしょう。こうした学びを通して、子どもたちの「努力との向き合い方」そのものが、より前向きで意義あるものへと変化していくはずです。

*私のnoteでは、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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