発問研究のポイント NO2
本シリーズでは、子どもをイキイキと授業に参加させるために欠かせない、道徳科の発問作りについて述べて参ります。本号は、その第2弾「多様な気づきを促す発問」についてです。
1 多様な気づきを促す発問
①発問で全く違う思考になる
教師は、ちょっとした発問の違いで全く違う思考が働いてしまうということを自覚しなければなりません。
例えば・・・
○主人公は、親切をした時、どんな気持ちだったでしょう。
○主人公は、親切をした時、どんなことを考えていたでしょう。
この二つの発問は、子どもにとって似て非なるものです。
教師にとっては「親切をした時の主人公の心情を理解させたい」というねらいがあるでしょう。
しかし・・・
子どもにとっては、全く違う思考が働くのです。
この発問は「気持ち」について尋ねているので、子どもは次のように答えることが予想されます。
「嬉しい気持ち」
「よかったという気持ち」
自分のこれまでの経験を感覚的にイメージして答えていることがわかります。つまり、直感的な思考が働いているのです。
一方で・・・
この発問は「考え方」を尋ねているので、直感的に答えることは難しいでしょう。そのため、主人公の行動や様子などを読み取り次のように答えるでしょう。
「相手が喜んでくれて嬉しい」
「困っている相手を助けることができてよかった」
つまり、分析的な思考が働いているといえるでしょう。
どちらの発問が良いということではなく、ちょっとした発問の違いでも、子どもの思考に与える影響は大きいということを、教師が自覚し使い分けることが大切なのです。
②同じねらいでも発問で「気づき」の質が異なる
上述したことを授業に置き換えて考えてみましょう。
授業のねらいを次のように設定(仮)したとしましょう。
先ほどの「親切をした時、どんな気持ちだったでしょう」という発問の場合には、「いい気持ち」「嬉しい気持ち」という答えが返ってくるため、親切をした当事者の視点から「よさ」に気づくことができます。
この発問を次のように変えます。
「親切は誰にどのような影響を与えるのでしょう」
子どもは上記のように「親切をした当事者」の視点から考える子どももいるでしょう。
しかし、それとは別に「親切をされた側」の視点から考え、「親切をされた人もとても嬉しかったと思う」と考えが広がっていきます。
さらには、それをそば見ていた「第3者」の視点から考える子供もいて、「それを見ていた人は『自分もやってみたい』と思うかも」などと発言が出てくるかもしれません。
このように多面的・多角的に考えが広がったところで、最後に教師が・・・
「親切はいろんな人によい影響を与えるのですね」
と思考を整理してあげるのです。そうすれば子どもの道徳的価値の理解は深まっていくことでしょう。
つまり、教師が子どもの多面的・多角的に考えるように刺激し、新たな気づきを生み出す問い方を考えなければならないのです。
最後に・・・
先ほども述べましたが、どの発問が良い悪いでなく、どの発問が子どもにどんな影響を与えるのかを教師が自覚し、使い分けることが大切なのです。
そして、道徳科においては多面的・多角的な思考を促し多様な気づきを促す発問を1時間に1発問は用意しておくことが大切だと考えています。
次回は、「思考を『揺さぶる』補助発問」について述べてまいります。