教材を深く読み解く思考法
【POINT】
1 相対主義で教材解釈を深める
2 人間理解から教材解釈を深める
3 人間の本質から教材解釈を深める
本シリーズでは、教科の中でも超難解だと言われる道徳科の教材解釈について、私なりの解読思考スキルについて述べていきます。
最初に・・・
道徳の授業を成功させるためには、教師が子どもの「まだ、気づいていないこと」をみつけて、それを学習のねらいにすることが大切です。
しかし、道徳科の教材はそれが難しいのです。
なぜなら・・・
大人(教師)も、まだ気づいていないからです
例えば・・・
「金色の魚」という教材があります。
次のような内容です。
この教材を読んで、どんなことを感じましたか。
ほとんどの場合、
「欲張らずに、途中でやめておけばよかったのに」
と考えるでしょう。
なぜなら、
この教材には、次のような価値が含まれているからです。
◯欲張ってはいけない。
◯わがままを言い過ぎてはいけない。
◯物事には限度がある。
しかし・・・
これぐらいのことなら、子どもたちもわかっています。
それなのに、
「わがままをせず、よく考えて行動しようとする心情(心)を育てる」
というわかりきったことを授業のねらいにしても、あまり意味がありません。
では、どのように教材を読み解いていけばいいのでしょう。
道徳科の授業には、内容項目という指導事項があります。
例えば・・・
教材「金色の魚」だと、節度節制「よく考えて行動し、節度節制のある生活をすること」です。
先ほども述べましたが書かれていることを、そのまま授業のねらいにしても、あまり意味がありません。
そのため、次のように教材を読み解いていきます。
①おばあさんは「よく考えないで行動」したのか。
②いや、そうではない。
③よく考えて「よりよく生きたい」と思ったからこそ「より良いものが欲しい」と思ったのだ。
④では、おばあさんが悪かったのはどこなのか。
⑤それは、自分の欲を途中で止められなかったことである。
⑥ではなぜ、欲を止められなかったのか。
⑦それは、人は何でも欲しいものが手に入る状況だと、欲望を止められない時がある。
⑧そう考えると、おばあさんが悪いのではない。
⑨人間は、誰でも同じような状況になると欲望を止められなくなってしまうのだ。
⑩つまり、人間には欲望を止められない時があるということを理解させることが必要だ。
このように、教材の読みを深めていきます。
そして、次のように授業のねらいを設定していきます。
子どもは、「わがままするのはよくない」「欲張るとダメ」ということはわかっています。
しかし、それができないのです。
だからこそ、「わがままはよくない」ということを教えるのではなく、
「どうしてわがままをしてしまうのだろう」
「どんな時に欲張ってしまうのだろう」
など、その時には冷静に考えられない心の状態を考えさせることに意味があるのです。
ねらいが明確になってきたら、あとは、そのねらいに迫るように発問を創っていけば授業の成功確率はアップするはずです。
(*発問作りについては、別号で述べたいと考えています)
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これまで、教材を読み深めることで「子どもが、まだ気づいていないこと」をみつけ「ねらい設定」が変わる。
ということを述べてきました。
しかし、どうすれば読みを深めるができるのでしょう。
実は、深く読み進めていくためには、最初の【Point】で示したように3つの思考スキルがあるのです。
次号では、Pointの一つ目「相対主義から教材解釈を深める」について述べていきます。