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伝記(偉人)の取り扱い方 〜低学年〜
本シリーズでは、道徳科の授業において、どの学年でも出てくるけど、「なんか上手く取り扱えない」という声が多い、伝記(偉人)教材について、私なりに迫ってみたいと思います。今回は、実際に低学年の教材を活用して、授業づくりを行います。
*前号と併せてお読みいただけると幸いです。
1 教材「平野美宇選手」で考える
前々号では、伝記(偉人)教材におけるねらい設定の方法、前号では発問構成の仕方について述べて参りまいした。
本号では、実際に低学年の教材を使って、授業計画を立ててみたいと思います。
本号で取り扱う教材は、卓球選手の「平野美宇選手」の幼少期から現在までのストーリーを描いた内容です。
内容項目は、「個性の伸長」です。
*参考教科書:学研2学年「美宇は、みう。」
2 教材の見方・考え方
この教材を用いる時の注意点として、「他人の真似をせず自分らしく努力し続けることが成功へ導く」という着地点(ゴール)にしてはいけないことです。
なぜなら、「自分らしく」あることの大切さであれば、周りの大人から何度も聞いたり、教えられたりしています。2年生でも知識として知っていると思います。しかし、知ってはいるが、どうしても他人と自分を比較してしまうのが人間です。そのため、上記のような着地点をしてしまうと、「人と比べるのではなく、自分のやりたいことをやることが大切だと思いました」と発言しても、個性の伸長の自覚まで至っておらず、表面的な理解にとどまってしまう可能性が高いです。
では、この教材では、どのような視点で授業展開をすればいいのでしょう。
「人は自分次第で自分のよさを伸ばしたり、広げたりすることができる」という視点がどうでしょうか。
個性があるのは、人だけではありません。むしろ、ロボットの方が個性があり、よさもあります。例えば、お皿を運ぶロボットはお皿を運ぶこと(個性)に特化し働くことができるし、それを続けられるよさがあります。同様なロボットは多様に存在します。では、人との違いは何でしょうか。それは、ロボットは人間の力や指示通り動き、自分の良さを活かすことができるが、自分の意思で成長したり、個性を変えることはできません。一方、人間は、自分で考えることができます。そして、自分のよさを一定に留めることなく、変化させたり、進化させたりすることができるのです。それが人間のよさだと思います。
つまり、美宇選手の生き方からは、自分の好きなことを自分で見つけ、自分の個性を活かしながらも、どんどん変化・発展させてきたのです。同時に、それができたのは、周りの影響を受けながらも、最後は自分で考えて決めたからです。
このような前提に立って、授業を構成してくことで、子どもにとって新たな気づきを促すことができると考えます。
以上のことをアナロジー思考を活用し図式化すると、以下のようになる。
![](https://assets.st-note.com/img/1699145982931-AdVFvtxEfD.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699145996689-VnqjK4JIQj.png?width=1200)
3 本時のねらい設定
上記のようなことを踏まえると、ねらいは次のようになります。
【本時のねらい】
自分のよさにはなかなか気付けないが、人はロボットとは違い、色々なことが出来るし、いろんな可能性(よさ)があることに気付くことができる。同時に、その可能性は自分次第で磨き伸ばすことが出来ることを知り、自分のやりたいことや可能性(よさ)を自分で見つけようとする心情を育てる。
4 授業展開
以下の主発問で、ねらいに迫ってみます。また、導入や終末の発問は省略します。
○お皿運びロボットを提示し、以下のように発問します。
*導入で「このロボットのいい所はどこでしょう」と考えさせておいても良いと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1699146633153-l4EIyKC8cB.png?width=1200)
T:このロボットのいいところは、何度もお皿を運ぶことができます。では、美宇選手のいい所はどこですか。
C:卓球で強いところ
C:自分で決めるところ
C:頑張り続けるところ
C:おりがみや縄跳び
【問い返し(AなのにBは〜)】
T:ロボットはいいところが少なく、変わることはないのに、どうして美宇選手は、いいところがたくさんあって、どんどん変わっていっているの。
C:それが人間だから
C:人間は、ロボットと違って色んなことができる。
C:色んな可能性がある。
【さらに問い返し】
T:その可能性を見つけてくれるのは誰ですか。
C:お母さんやお父さん
C:自分だと思う。
C:考えることで見つけられると思う。
【思考を整理する】
T:なるほど、人間はロボット違って、色んなことが出来るし、その可能性があるんだね。そして、それを自分で見つけて、どんどん成長させることができるだね。
以上のように、教材の構造をアナロジー思考で見ることで、より平野選手の人間としてのよさが見つけることができます。
そうすることで、子どもにとって新たな気付きを与えられるようなねらいを設定することができるのです。
そして、「AなのにBは」という発問で焦点化することで、よりねらいに迫ることが出来るのだと思います。
次号では、中学年の伝記(偉人)教材の授業づくりを行ってみたいと思います。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。