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道徳科の「ねらい」について

授業での「ねらい」の設定は、授業の方向性を示し、子どもに必要な力を育てるための重要なプロセスの一つです。
このプロセスは、教師と子供が共に「ゴール(ねらい)」に向かって学習に取り組み、深い学びを生み出す基盤となります。
特に道徳科では、どのような「ねらい」を設定するかが、授業の質と子供の学びに直結します。

そこで、本シリーズでは、道徳科の授業における「ねらい」の具体的な設定方法と、その達成に向けた実践的なアプローチを深掘りします。
最後までお読みいただけると幸いです。


1 わかりきった言葉の「ねらい」で満足しない

道徳科は、単に正しい行動を教える時間ではありません。
その時間を通じて、子供は新たな価値との出会い、自己を見つ直し、よりよい生き方を模索する必要があります。
そのことを踏まえ、教師がねらいを設定し明確な指導観を持って授業プランを設計していくことが大切です。
しかし、これまでの私自身の授業を見返すと、ねらいの設定や解釈が甘かったと反省しています。
例えば・・

【本時のねらい】
親切にした時の良さを知り、誰に対しても思いやりの心を持って接しようとする心情を育てる。

内容項目:思いやり、親切

このような指導書にある「ねらい」を設定していました。
今思えば、1年生でも知っているレベルの価値理解で授業に臨んでいたわけです(汗)。
そして、「わかりきった」言葉レベルの解釈で授業に臨んでいるため、その授業は形式的なものとなり、新たな学びを提供する機会を逃していました。
つまり、子どもにとって新しい学びがなく、当たり前のことを繰り返し言わせる「退屈な時間」になってしまっていました。

2 「解像度」を上げる

では、どうしたら良かったのでしょうか。
それは教師の価値理解の「解像度」を上げることが重要だと考えています。
解像度を上げるとは・・・
では、少し「解像度」という意味について考えてみたいと思います。

 解像度という言葉は、ディスプレイや画像などに用いられる言葉です。もちろん、解像度が上がれば画像がクリアになり、解像度が低いとぼんやりした画像になります。
 そのような元々は意味を持つ解像度という言葉が、昨今ビジネスに使われるようになりました。
「解像度が高い」「解像度が低い」と言われ、文脈的には物事への理解度や物事を表現する時の繊細さ、思考の明晰さを示す言葉として用いられるようになりました。

場田隆明「解像度を上げる」

さらに、書籍には「解像度」が低い状態を以下のように記してありました。
・物事への理解が足りていないように見える。
・議論がふわっとしていて地に足がついていない。
・具体的な数字などが挙げられず、説得力が弱い。
・抽象論だけで、具体例が挙げられない。

これを道徳授業に当てはめると・・
教材への価値理解が足りていない。
・発問が曖昧で、考える視点が不明瞭である。
・具体的に何に気づかせたいのか(ねらい)が弱い。
・抽象論だけで、子供が自分ごととして考えられない。

という状態であると言えます。
まさに、以前までの私の道徳授業は解像度が低い状態だったのです。

それとは逆に、解像度が上がると以下のように授業が変わります。
教材への価値理解が深い。
・発問が明確で、考えが焦点化され議論が活性化する。
・子どもに気づかせたいこと(ねらい)が明確である。
・話し合いに具体性があり、子供が自分ごとして考えやすい。

つまり、教師が教材に対する価値理解の「解像度」を上げることで、子供の道徳性を育み、魅力あふれる効果的な授業を創造することにつながるのです。

3 「解像度」を上げた価値理解

例えば、低学年の教材「橋の上のおおかみ」を活用して考えてみたいと思います。
指導書にある「ねらい」は以下のようになっています。

教材:はしの上のおおかみ:
内容項目:親切、思いやり
【本時のねらい】
親切にした時のよさを知り、誰に対しても思いやりの心を持って接しようとする心情を育てる。

学研:みんなのどうとく1年生(指導書)

指導書に書かれてある「ねらい」の解像度を上げ、さらに価値理解を深めるため、次のように考えていきます。
「親切にした時『よさ』はなんだろう」
このように「抽象的な言葉」に焦点を当て、自分自身に問い続けながら教材を読み深めていくのです。
そうすると、下記のように価値理解の解像度を上げることができます。

このように、親切にする「よさ」の解像度を上げて考え続けることで、普段は見過ごされがちな価値を追求し、子どもに気づけていない価値を見出すことができるのです。

以上が「解像度」を上げ、価値理解を深めることで、具体的な「ねらい」を設定する方法です。

次回は、解像度を上げることのメリットについて詳しく述べてみたいと思います。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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