企業や求職者に対する新しい学習機会の提供を開始~オンラインで多様化する学習ニーズ対応を~
鳥取県では、Udemy Business(以下、Udemy)を活用したオンライン学習受講促進事業を2021年度より開始。
県内の企業や求職者のリスキリング支援を通して、DXの推進に必要な人材育成をめざす鳥取県の取り組みをご紹介いたします。
鳥取県が取り組む県内DX人材の育成
鳥取県に限らず、地方でDXを進めるうえでの障壁としてまず挙げられるのは、人材の問題があります。
そもそもDX人材がいないというのが課題であり、DXを進められるスキルをもった 人材を企業が簡単には獲得できないというのが現状です。
また、重要なのが経営者のマインドです。
従来のビジネスのやり方を変えたり、組織を変革 することは決して簡単ではないため、経営者が意欲的でない場合、なかなかその企業での DXは進みません。
そして最後に、実施方法や資金の問題です。いかにその企業に合ったやりやすい実施方法を見つけ、取り組めるかが鍵を握るといえるでしょう。
これらの障壁を解消すべく、鳥取県では2021年4月より以下の3つの事業に取り組み始めました。
この中で、人材育成においては「オンライン学習受講促進事業」として、企業の業態転換や求職者のリスキリングなどを推進することを目的に、オンライン学習の機会を提供しています。
これは、商工会議所や県内企業などとの意見交換の際に出たITの専門スキルよりも「ITを利活用するスキル」や「ITリテラシー」を身につけてもらうことが必要という声を受け検討した事業になり ます。
本事業の実施が、地域の企業に求められるスキルやITリテラシーを身につけやすい機会になると考えています。
オンライン学習を活用した企業と求職者の支援事業
■企業のニーズに合わせた学習機会の提供
県内企業の支援については、新型コロナウイルス感染症の影響などにより「従来のビジネスを変えていきたい」「社内のDXを進めていきたい」など、さまざまな理由により新たなチャレンジを行ううえで人材育成を必要とする企業に対し、Udemyのライセンスを交付しています。
応募のあった企業の業種はさまざまで、情報通信系の企業はもちろん、卸売りや小売りなどの企業にも利用いただいています。
この点は、幅広い企業に活用いただきたいと考えていた当初の狙い通りになっています。
受講状況を確認すると、プログラミングなどの専門的な分野のみではなく、当初想定していなかった「AWSなどITツールの使い方」や「業務効率化」「ロジカルシンキング」「コミュニケーション」なども受講されており、利用者の現状の学習ニーズに応じたオンデマンドな学習機会の提供を実現できています。
まだまだ開始したばかりで受講者の傾向を明確にするには至っていないですが、今後、受講データやアンケート調査なども含め、次のアクションを検討していければと考えています。
■多様化する求職者のキャリアを支援
企業支援の傍らでスタートしたのが、求職者支援です。
求職者が習得したいスキルを自由に選択し、学んでキャリアにつなげてもらいたいという狙いから、求職中の方が「就職するために必要なスキルをオンライン学習で身につけて、就職してもらう」事業をスタートしています。
オンライン学習を利用することによって、各求職者のニーズに細かく対応した学習の機会を提供することをめざしています。
この求職者支援は、スキルアップ支援と就職サポートの2つで構成されています。
スキルアップ支援としては、めざすキャリア から逆算した学習カリキュラムの設定からつまずきポイントのフォローアップまでを、就職サポートはキャリアコンサルティング、履歴書の書き方の指導、現在の求人情報の提供などを実施し、求職者が就職するまでしっかりと支援できる形をとっています。
オンライン学習のみですべてが完結できるものばかりでは ないため、こうした対面でのサポートも大事にするとともに、学習効果の向上のため既存の職業訓練や集合型研修などと連携していくことも重要だと考えています。
また、オンライン学習を推進するにあたり「学び続けるための仕組み作り」の必要性も感じ始めています。
学んでいることを周りと共有したり、次の学びのきっかけに出会う仕組みとして「学習コミュニティ」を地域の中でどう作っていくのか、デジタルの次のトレンドに対応できる学びをどう提供していくかなどの課題に取り組んで、今後の鳥取県の人材育成の推進に役立てていきたいです。
データを活用し、次の施策へ
県としては、オンライン学習受講促進事業はただUdemyを人材育成の機会として提供するだけでなく、次に行う研修などの施策を検討するデータとしての活用をめざしています。
進行している企業支援や求職者支援では、従業員・求職者単位で「何を学んでいるか」というデータを取得することができるので、学習履歴データを今後実施する集合研修の内容に活かすことも考えています。
データを活用して、施策の打ち方を変えていくことにもチャレンジし、庁内のDX推進も担っていきたいです。
【鳥取県の取り組みについての動画事例はこちら】
※こちらの記事は2021年11月に発刊した行政DX通信vol.2に掲載された記事を一部編集したものになります。