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地域全体で進める自治体のDX人材育成 ~現状と課題 、そして未来~

AIやデジタル技術の発展に伴い、自治体においても早急なDXへの対応が求められる昨今。
デジタルに精通した自治体職員を育成するため、多様な研修機会の確保に加え、その学びを市民サービスの改善や業務効率化といった成果へつなげることが期待されています。

全国的に自治体DXへの取り組みが加速する一方で、人材育成の実施やその予算確保にはまだまだ多くの自治体が課題を抱えています。
これまで数多くの自治体にDX人材育成支援を行ってきたベネッセコーポレーションの黒岩が、DX人材育成の現状と今後の展望について解説します。

【話し手】
株式会社ベネッセコーポレーション Udemy事業本部 黒岩 祐樹(くろいわ ゆうき)
首都圏の自治体を中心に、人材育成の支援を担当。2024年度からは、東京都内・神奈川県内にて、Udemy Businessの共同調達を通じたエリアでの人材育成支援に従事。


ベネッセの調査から読み解く、自治体における人材育成の重要性

総務省の「人材育成・確保基本方針策定指針(2023年発表)」によると、行政サービスの向上においては、自治体が人材育成を実施して職員が新たな知識・スキルを獲得する必要があると述べられています。

これを踏まえ、ベネッセでは、全国地方自治体のDX推進関連部門を対象に2023年に調査を実施しました。

その結果、全国885自治体のうち職員の人材育成を行っているのは59%にのぼり、そのうち80%が何らかの職員研修を実施していることがわかりました。

すでに多くの自治体が積極的な人材育成に取り組み、市民サービスの質向上のための努力を続けています。
これらの取り組みが政策課題の解決や地域社会の発展に寄与することが期待されます。

DX人材育成に立ちはだかる「予算確保と人手不足」の壁

一方で、自治体がDX人材育成を推進する過程には様々な壁が存在しています。
ベネッセの調査では、人材育成を実施している自治体のうち、79%が「DX研修の予算がない」と回答しました。

外部研修に予算を割けない自治体や、無料の研修・OJT・内製研修などで対応している事例も多くあります。
しかし、AIやデジタルの変化が激しい今の時代、内製研修だけではトレンドのキャッチアップができない可能性もあり、研修の有用性や業務への活用においては課題が残ります。

また、アンケートで「人材育成を実施しない」と回答した自治体の声も集めたところ、「人手不足により人材育成に工数をかけることが困難」「人材育成計画の立案が難しく、どの研修に参加すればよいかわからない」といった意見が聞かれました。
このように予算の不足や人手不足といった理由により、人材育成に対する取り組みの遅れや内容の差につながっている現状が浮き彫りとなりました。

総務省が示す、都道府県主導の「研修の広域化」とは

先述の総務省の指針では、自治体の人材育成を推進するためには「研修の広域化」が重要であると示されています。
広域化の実現においては、自治体間の協力と情報共有が欠かせません。

各都道府県下の自治体で効率的な人材育成を行ううえでは、都道府県がリード役となって市町村を含めた広い範囲で研修を実施することが求められます。
これにより、限られた予算とリソースを有効活用した人材育成が実現します。
自治体同士が協力し合うことで、地域全体に学びの相乗効果が生まれることも期待できるでしょう。

自治体DX人材育成の未来:共同調達による育成促進

都道府県全域でDX人材育成を実施するため、ベネッセではUdemyBusiness(以下、Udemy)の共同調達をご提案しています。
共同調達とは、都道府県が主幹自治体となり、地域内の市区町村のUdemy学習者IDを取りまとめて一括で契約することで、ボリュームディスカウントを適用したライセンス単価でUdemyが学び放題になる仕組みです。

共同調達のメリットはコスト削減だけに留まりません。
各自治体がUdemyという同一のツールを使うと、人材育成ノウハウの共有学びの共通言語化を促すことにもつながります。
都道府県全域で学びのネットワークを構築できれば、DX推進やリスキリングの機運が広く醸成され、地域全体の学びを加速させる効果も期待できます。
人材育成や学びの領域においてこそ、学習者同士の共通言語やネットワークを構築することが重要です。


実際に2024年度から神奈川県ではUdemyの共同調達を実施しており、次のページにて神奈川県の事例をご紹介しています。

NEWS!「地域全体で進める庁内DX人材育成セミナー」を開催しました!

2024年6月、自治体DXを進めるうえでの課題や解決策について情報共有を行う「地域全体で進める庁内DX人材育成セミナー」を開催しました。
都道府県を対象に実施し、26自治体にご参加いただきました。

全国で多くの自治体がDX人材の育成に取り組む中、研修カリキュラムの組み立て・効果の検証・人事部門との連携などで課題を抱える都道府県はまだまだ多いのが実情です。
セミナーでは共同調達により市区町村と人材育成の連携を始めた先進事例の紹介など、活発な議論と情報共有がなされました。