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【言語技術で「考える」を強くする③】言語技術とは何か?

「考える」ということをどうすれば習得できるのか?そして教えることが出来るのか?
「考える」を理解して意識的に使えるようになることで、生産性も高まり、品質も高まり、コミュニケーションもうまくいくようになる。
「考える」を身につけてもらうにはどうすればよいのだろうか?私の長年の懸案であった。その答えが「言語技術」にあった。

前回までの記事
①私が論理思考力を身に着けるまで
②どうして言語技術を取り上げようと思ったのか?

第3回は、”言語技術”とはどのようなものかをお伝えします。

言語技術(Language Arts)とは?

言語技術とは、日常生活や社会生活を行う上で必要となる、言語を使用する様々なスキルを総称するものです。英語では、Language Arts と呼ばれています。

1.情報のインプット:読む、聞く
2.情報の加工:各種思考力(論理的思考、クリティカル思考、水平思考等)
3.情報のアウトプット:話す、書く

世界の多くの国で幅広く実施されている言語教育であり、小学校低学年から高校を卒業するまでに、母語教育の一環として体系的なカリキュラムに従い学ぶことが出来るようになっています。

日本では、近年小中高の学習指導要領に言語能力の育成の重要性が記載されるようになるなど、実践的な言語技術の養成は大きな課題として認識されるようになってきていますが、教育体系が構築されたとは言えません。日本の言語教育は遅れているのです。

日本人は、ディベートや議論が下手とよく言われます。それは忖度するからであるとか、行間を読んで理解する、といった日本特有の文化によるものだ、ということが半ば真実のように語られることもあります。
実際のところはどうでしょう。正しい教育を受け(られ)ていないため、言語を実践的に活用するテクニックが身についていない、というのが正しい解釈なのではないかと、私は考えています。

このように、日本においては遅ればせながら、サッカーやラグビーなどスポーツの世界を中心に言語技術教育が採用されはじめています。コーチの指導力向上、選手技術向上に用いられるようになっており、日本サッカーのレベル向上の一因に、この言語教育があったのではないかといわれています。

言語技術教育の目標

大学生・社会人のための言語技術トレーニング(三森ゆりか氏)によると

その目標は、人間形成にあります

出典:三森ゆりか 「大学生・社会人のための言語技術トレーニング」P.6

とあり、その人間形成の目標は

①自立してクリティカル・シンキングが出来る(自分の力で物事を論理的、分析的、多角的に検討し、適正な判断を下す能力を持つ)
②自立して問題解決をする能力を持つ
③考察したことを口頭・記述で自在に表現できる
④自国の文化に誇りを持つ教養ある国民を育てる(「教養」には「人間味豊かな人間」の意が含まれる)

出典:三森ゆりか 「ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門」Kindle版 P.21

とされています。つまり、自立して思考し、問題解決を実施したり、世界中の相手と議論や交渉ができるような人間を育てることが目標となります。

ただ、技術を学ぶだけではなく、教養のある人間を育てるために、各国のカリキュラムの中では、文学教育も非常に重視されており、年次が上がるにしたがって技術教育よりも文学教育にウエイトが変化するように構成されています。

言語技術教育カリキュラムとは、一種の「エリート教育」ととらえることもできるのではないでしょうか?

言語技術を習得することで得られること

言語技術を習得することによって、以下のような特徴(言葉を上手に使える生徒の持つ特徴として記述)がみられるようになります。

1.自分のことが表現できる
2.耽美的意識を持って言葉を使う
3.周りと協力しながら探求する
4.ストラテジーとして言葉を使う
5.創造的にコミュニケーションする
6.内省的に解釈する
7.しっかり考えたうえで応用する

出典:パメラ・J・ファリス、ドナ・E・ウェルデリッヒ「ランゲージアーツ 学校・教科・生徒をつなぐ6つの言語技術」P.28

どうでしょうか?ビジネスパーソンが必要となる様々な要素が含まれているように思われます。上記図書には、1~7までの特徴がさらに具体的に解説されているのですが、ことばを美しく、誤りなく、正しく使うことが出来ること。ことばを正しく活用して周りとコミュニケーションをとることが出来る。ことばを正しく活用して読む、書く、話すことが出来る。

このように、ことばを正しく活用することができている状態が一つの目標となりそうです。

諸外国ではこれらの技術を高校生までに習得し、大学生以降は、それらの技術を専門的な能力向上に応用することで、社会人になると即戦力として活躍できる人材が輩出される仕組みになっています。

翻って日本はどうでしょうか。上記を適切に使いこなせる社会人はどの程度いるでしょうか?私の周りを見渡しても5割に満たないように感じています。言語技術を身に着けることで、大きく評価が高まる要素になりうるということです。

世界中の多くの人が学んで自分のものにしている技術を日本人が出来ない理由はありません。必ずできるはずです。自信のない方々はぜひ学んでほしいと思います。

まとめ

言語技術の概要について説明しましたが、言語技術を学ぶことは、言葉遣いの技術を学べるだけではありません。

一人の自立した、教養ある人間を育てるための教育手段の一つ

と言っても過言ではないと思います。多くの人々が言語技術を習得することで、世界と共通の思考基盤の中で戦える教養豊かな人材になるとともに、ビジネスパーソンとして活躍できる人材が増加します。その結果、企業及び日本の成長に寄与できるのではないかと思います。

次回は、各国の言語技術教育について説明したいと思います。

参考文献

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