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雨天の運転の危険性について
【はじめに】
今年(2018年)の夏は豪雨に見舞われました。
梅雨ももう終わってしまいましたが、雨に見舞われる機会も多い季節なので、雨と運転に関することを書いていきたいと思います。
【路面が滑りやすい】
〈摩擦力の低下〉
車はタイヤと路面の摩擦力により走ることができます。
加速することも、止まることも、曲がることも、摩擦力あってのことです。
常識的な話ですが、雨の日は路面が滑りやすくなります。
具体的に言うと晴れの日の半分のグリップしかありません。
普段の運転で滑らないからといって、安心してはいけません。
滑り出すまでは摩擦力の限界のどの付近まで使っているかは分かりません。
普段から限界の半分付近まで使って運転している人は、雨の日はほぼ滑ります。
〈雨の降り始め〉
雨は降り始めと降り終わりが滑りやすいと言われています。
アスファルトの表面はよく見るとボコボコしていて、粒を敷き詰めたようになっています。
その隙間に普段は汚れや水などが移動してアスファルトの表面がタイヤに接するように出来ていますが、雨の降り始めはその汚れが再びアスファルトの表面に浮き出てきます。
汚れば油や泥などを含んで居るので、路面に出ていると、潤滑剤の役目をはたして滑りやすくなります。
〈雨の降り終わり〉
雨天の車はタイヤに泥や油などを踏んで移動するため、汚れを運んできます。
雨が普通に降っていれば、雨によって道路の脇に排水されるついでに汚れも運んでくれますが、降り終わりは水の流れが滞るため汚れが道路の表面に出たままです。
道路表面の汚れで滑りやすくなります。
〈金属の上〉
アスファルトではまだマシですが、橋の継ぎ目やマンホールの蓋など、金属がむき出しの部分では濡れると格段に滑りやすくなります。
金属むき出しの箇所は、道路に無数に存在しているので、滑りやすさには注意してください。
【視界が悪い】
〈ガラスについた雨滴〉
雨粒がガラスに着くのでとても見えにくいです。
ワイパーで拭き取れる部分はまだ視界がある程度確保できますが、拭き取れない部分は水滴のレンズで像が歪んで見えてまともに見えません。
〈景色がにじみやすくなる〉
信号などの光が十字状に拡散されて見えるようになります。
景色が普段通りとは違った形になるので見えづらくなります。
〈ワイパーの付いていないガラス面〉
フロントガラスやリヤガラスはワイパーが付いているので、水滴を除去できますが、サイドガラスはワイパーがついておらず水滴がつきやすくなります。
サイドガラス越しに見るドアミラーの視界は最悪です。
ドアミラーそのものにも水滴は付くので2重で水滴が見えることになります。
また、サイドガラスと違い、ミラーは走行風に直接さらされないのでミラーについた水滴が移動する機会が少ないです。
しかし、ミラーを見ずに運転するわけにはいかず、様々な場面でミラーによる安全確認は必要になるので、いつもよりも時間をかけて確認することになります。
基本的に確認に割ける時間は走行速度に依存するので、普段よりも速度を落として走行してください。
〈ガラスが曇りやすくなる〉
雨は湿度が高いのでガラスの内側が曇りやすくなります。
ガラスの曇りは拭きとることよりも、エアコンを使ったほうが効果が高いです。
曇ったまま走行すると危険なので、曇りが取れるまで待ってから走行してください。
〈ワイパーのメンテナンス〉
ワイパー次第で視界は大きく違ってきます。
ワイパーゴムはそんなに高い買い物でもないし、交換も楽だし、晴れの日には全く使わないですが、視界を確保するための「安全装置」のひとつだと思ってメンテナンスを欠かさず行ってください。
個人的なお勧めは拭くだけで撥水がかかる機能の付いたワイパーゴムです。
ガラスが撥水されていると雨滴がまとまりやすくなり、多少見えやすくなります。
撥水機能は強力なものではなく、そこはかとなく付くくらいのモノで良いです。
撥水が強すぎるとビビりやすくなります。
ワイパーはブレードごと交換する必要はあまりないと思っています。
純正のゴムはビビりにくく音が鳴りにくいようにチューニングされているように思えます。
しかし、撥水機能がないので、雨滴が残りやすいです。
〈夜間の雨天走行〉
特に雨の夜間はとても見にくいです。
路面の水の表面が雨によって平滑化されて全反射しやすくなります。
下方向の路面を照らしているはずなのに、路面には真っ暗な空が写っていることになり、路面は明るく見えません。
この状態だと道路の白線も見えにくくなるので、車線を守った走行が難しくなります。
これは照らしている側の視界の悪化にもつながりますが、照らされてる側の視界の悪化にもつながります。
前方の車両からのヘッドランプが路面の水膜に反射して、角度によってはほとんど直接ドライバーの目に入ることになります。
普段よりもより幻惑されやすいので目線を避けて走ることになります。
結果、視界は最悪です。
〈傘〉
雨天の歩行者や自転車は傘をさします。
傘は視界の多くを遮ります。
基本的に遠くが見えません。
物理的に遠くが見えないだけでなく、足元の水たまりに視線が向くため、周りの状況に割ける注意力が低下します。
〈カッパ〉
カッパを外に出る人もいるかと思います。
カッパはフードになっているので背面と一体で動きます。
フードをきゅっと絞れば頭と一体で動きますが、そうでなければ顔を向けた方向に追従してくれないので、顔だけで振り向いてもフードが邪魔をして視界を遮ります。
【音もよく聞こえない】
〈ドライバー〉
音もよく聞こえない雨音がうるさいし水しぶきの音でうるさいので、近くに車が通っていてもどの方向から来ているのかまでは分かりにくいです。
〈歩行者・自転車〉
傘やカッパに雨粒が当たると耳に近い部分で音が発生するので思いのほか大きく音が聴こえて、外界の音を遮断します。
また、ドライバーと同様、音が様々な方向から聞こえてくるので車の方向はわかりにくいです。
車は歩行者に水しぶきを浴びせるとクリーニング費用を支払う義務があるので近くを通すときは速度を落として、音を立てにくい状態で走行するので余計に察知しづらくなります。
【冠水に関して】
冠水した路面に突っ込み、走行不能状態に陥り、そのまま車内で溺死するという事故があります。
水没車はいきなり完全に水没するということは少ないです。
冠水した道路に突っ込んで動けなくなってそのままドアが開かずに脱出できないというケースになります。
冠水した道路に突っ込んだ場合、車が動けなくなるのはどういったメカニズムなのでししょう。
1.電気系がショートして電装が動かなくなる。
パワーウィンドウが開かなくなるのもこれが原因です。
最近はガソリン車であってもディーゼル車であっても電子制御でエンジンを動かしているので、電装系がショートするとエンジンが動かなくなります。
最近はハイブリッド車も多く、EVもあるので、電気系のショートは動作停止の主要因になります。
これらの車は高い電力を車内で扱っているので、ショートによる感電を防止するための機構を備えている。
しかし感電の防止と防水は別です。
2.水がエンジンの動作に影響を及ぼして動かなくなる
エンジンは空気を吸い込んで圧縮→爆発→膨張をして動いているので、エンジンが水を吸い込むと水を圧縮しようと動きます。
水はそんなに圧縮できないのでそのまま止まってしまうかエンジンが壊れます。
排気管からの水の侵入でも動かなくなります。
排気管に水が浸入すると水で詰まって排気が行いにくくなります。
排気が行われなければ、エンジンの負荷となってエンジンが止まります。
〈水没車のドアにかかる力〉
水深に対する圧力は意外と大きいです。
ドアは開かないと思ってください。
水圧は水深10mで1気圧増えます。
10cm単位で考えてみよう。
だいたいドアの長さが110cmで試算すると下記のようになります。
10cm:11kg
20cm:23kg
30cm:34kg
40cm:45kg
50cm:57kg
ドア高さは標準的な軽自動車で約70cm
この時ドアにかかる力は約80kg
完全に水没するガラス面まで含めると120cm
この時ドアにかかる圧力は136kg
これを座った体勢、すなわち反動をつけることもできずに力を入れにくい体勢で立ち向かわなければドアは開きません。
ここから脱出する際は、ガラスを割るのが一般的です。
〈ガラスを割るには〉
基本的に車内には硬いものがありません。
衝突した際に怪我をしないためです。
なので、ガラスを割るための道具に困ることが多いです。
最近は発煙筒にピックが付いたものがあります。
発煙筒購入時にこれを買っておけば大丈夫です。
車内から脱出するための専用器具もあります。
主にシートベルトカッターとセットになっているもの多いです。
このように事前に準備ができればいいですが、そうではない人のほうが多いと思います。
では、装備がない人はどうしたらいいのでしょうか?
ヘッドレストを使います。
ヘッドレストを引き抜いた時の鉄の棒をガラスとドアの隙間に無理やりねじ込んで、差込口を支点にテコの原理で力を加えるとガラスを割ることができます。
スポーツカーのシートや廉価車のシートはヘッドレストが背面と一体になったものがあります。
この場合はヘッドレストを使ったガラスやぶりができないので、別途ガラスを割るための器具の購入をお勧めします。
【終わりに】
雨は自然の恵みで、雨が降らないと土地が枯れ、人が生きていくことは難しくなります。
雨はとても大事で必要なのですが、交通環境には基本的に悪影響が多いです。
もしも避けられるようであれば、雨や雨の夜間を避けたほうがいいです。