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斜陽産業で過去最高益①〜音楽CDショップ〜【タワーレコード】編
こんにちは。斜陽産業と呼ばれて久しい業界「ラジオ業界」を何とかしたいと思っているけど、どうすればいいか全然わからない男。内田です。
ラジオに限らず、かつてエンタメを楽しむ定番チャネルだった業界、業態がデジタル化の時代の中で縮小、変化の波にさらされている昨今。
業界自体が地盤沈下する中にいると、もはや1社だけではいかんともしがたい、もしかすると業界全社でやっても時代の流れには抗いがたいのかもと思うこともなくもないですが、そんな中で最近気になるニュースを立て続けに2つ見つけました。
音楽の受け取り方がサブスク配信中心になりCDが売れない時代の音楽CDショップ、Amazonなどのネット通販の浸透、さらにはスマホ普及、Kindle、ジャンプ+などの電子書籍プラットフォームの伸長により、長期的減少傾向にある街の本屋さん。その2つの業態でタワーレコード、有隣堂がそれぞれ過去最高益、増収増益達成したとのこと。
参照:CD販売数&音楽配信、書店数
今回の記事では、まず、タワーレコード(CDショップ)について書きます。
タワーレコードの話はラジオで知りました。
【SAISON CARD ON THE EDGE】
— J-WAVE STEP ONE (@stepone813) November 12, 2024
過去最高益を出したタワーレコード!
そのV字回復の舞台ウラ!
タワーレコードの元社員でもある、
音楽評論家の冨田明宏さんにお話を伺いました!#radiko→https://t.co/KJQ4b9L89g#stepone813 #jwave pic.twitter.com/yj1XaOa78N
「タワレコが過去最高益!?」(直近決算で前期比85.5%増、営業利益18億8300万円達成)
僕が自分の番組のイベントグッズを考えている時に、「推し活」ブームも踏まえて、ライブ会場で発射される銀テープを使ったグッズが何か作れないか探していたところ、銀テープホルダーを既にタワーレコードが作って販売していて、かつ、権利も押さえていることを知り、直接、個別の音楽に関係しないライブグッズを作っている、さらに権利意識も高いというのが意外でした。(結局、その時はグッズにするのは止めて、ランダムにカットしたものをイベントBlu-ray、DVDケースの中に特典として封入しました。)
記事の見出しを読んだ時に、てっきりその方面(グッズ、マーチャンダイジング)でCD以外の売上を伸ばしているのかなと思ったのですが、オンエアを聴くと過去最高益、V字回復の理由は「ショップを聖地化している」からということでした。
聖地化?
タワレコでは各店舗が、それぞれ推すアーティストを決めて応援しているとのこと。
例に挙げられていたのが、名古屋・大高店。
大高店にはSMAPが大好きな店員がいて、お店でかなりSMAPを推しているそうです。
SMAPファンの間でも有名とのことで下記のような記事をネットで見ることができます。
すごいなと思ったのは、もともとSMAPが大高店はもとより名古屋とも特に縁がない点。本当に、ただただSMAPが好きな店員の方がいて、お店をSMAP応援に特化して作っていった結果、SMAPファンの中で有名になり、SMAPファンが押し寄せるお店になっていったとのこと。
そうこうしているうちに、なんとSMAP 香取慎吾くん(本人)が来店。
本人降臨となると本当に「聖地」ですよね。
そういうお店が他にもあるそうです。
下記は少し前になりますが、2019年の東洋経済の記事になります。
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昨日今日の話ではなくてもう結構な年数、ショップを聖地化して盛り上げることをやってきているんですね。
また各店舗で特定のアーティストに特化した聖地化をする一方で、旗艦店である渋谷店は、巨大なビルを生かし各階ごとに、多彩なジャンルのファンに向けた展開を行って、1つのお店で「熱烈なファンが集う場所」になり、ビヨンセ、ビリーアイリッシュからサイン会をしたいとオファーが来たそうです。(なんで?)
恥ずかしながら、僕は、この数年来、タワレコに行っていないので、ちゃんと生で見たことがないのですが、とにかく、このお店づくりの熱量によって生まれた場所の価値によって、タワーレコードは過去最高益を達成したとのことです。
>※有料会員限定記事ですが、こちらもリンク貼っておきます。
タワレコの歴史とともにその売上・利益・店舗数の推移、音楽市場、CD売上・配信市場の推移など丁寧に図示されています。
<タワーレコードまとめ>
①源流から今につながる流れあり(タワレコの強み)〜発見&発信
・もともと輸入レコードショップ。インディーズ&洋楽ロックの発信基地
・音楽好きで知識豊富な店員のレコメンドで売る(TOWER RECOMMEND〜♪)
↓
・お店のレコメンドに価値が生まれてブランド化「NO MUSIC NO LIFE」
↓
・1998年にピークを迎えて音楽市場が縮小するも店舗数の維持・拡大、コアなロックファンに売る事で対抗。しかし2010年代に配信が本格化し遂に低迷期へ
↓
「タワレコの場を再定義」
↓
・コアな音楽ファン(ロック)の場所から、全ジャンルのファンが集う場所へ
「マスコア戦略」…マス(一般的ファン)もコア(熱狂的ファン)も両方狙う。
→コアだけでは事業継続できない、マスとして「アイドル」ファンにフォーカス
↓
・もともと「好きでレコメンド」から「推し活」文化に繋がる
↓
・タワーレコードのスタンス「応援する人を応援する」
└知名度や動員力に関わらず応援したい人がいればサポート(イベント、棚)
└スタッフの裁量に任せる(売りたいものを自分で見つける)…「好きという情熱」>「データ」
↓
・ネットは検索、ショップは探索
↓
「目当ての物以外にも気に入るものに会える」→来たいと思わせる場所になる。
↓
・ショップを聖地化。ネットでは出来ないリアルならではの場所の価値を創出
・その場所の熱量が、ファンのSNSを通じて世の中に伝播、さらに新しいファンをオンラインからリアル店舗にお客さんとして呼び込む
②活発な多面的展開
・お店ごとに細かい展開(何でもかんでも大きければよいということではない)立地を生かしたり、取り扱い商品で差別化したり、小規模店の展開にも意味と作戦あり!
・推し活グッズ(権利も押さえる)
・店舗で1年間に1万件のイベントを開催!直近5年間で3000件増
・アーティストのライブ会場物販にも入りこむ!
・アナログレコード…国内のブームのみならずインバウンドもターゲット(7割外国人)
・更に、2024年10月からタワレコマーケットプレイス開始…音楽好きな人同士がオンラインで売り買い(廃盤CD等)
改めて思うのは、まず、ちゃんとした企業姿勢、ポリシーのある会社は強いなと思いました。
ビジョン、ポリシーと言っても、上辺だけのかっこよさげなものを言っているものも多く、特に何も語らないし、掲げた理想を実現しようとする行動がない会社も多いように思います。
そんな中で、創業以来「音楽が好き」ということを一番のモチベーションとし、「自分たちの好きな音楽を人に伝えたい」ということを一番の欲求としていて、それを続けることを存在理由としている…そこにファンも集まってくる。
そこで「応援する人を応援する」というタワレコのスタンスが具現化。ファンもお店を応援しているんだと思います。音楽を中心に、アーティストとファンをしっかりつなぐ存在として、ただ商品を買うだけの場所ではなくて作品を届けるタワレコの存在感、必要性をアーティストもファンもしっかり感じているように思います。
逆境かどうかに関わらず、常に企業は、なぜそこに存在するのか、存在理由を自分の言葉でしっかり語ることができる、応援している人も、それに賛同してくれることが大事なのかなと思います。
また、そういうシンプルかつ明確なスタンスを取った上で、タワレコのように、あの手この手で複合的、複層的な打ち手を適時に打っていくことが生き残りには必要なのだと思います。取材で話題に出てこない失敗した手も無数にあったのではないかと思います。
ラジオの場合は、どうすればよいのか?どういうスタンスで、どういう打ち手を繰り出すべきなのか、タワーレコードのV字回復の足跡はとても参考になるように思うので僕も近々、タワレコ行ってみようと思います。
(続く)