私の苦手なはじめまして
私ははじめましての会話が苦手だ。
はじめまして、と自分を名乗ってから必ずと言っていいほど以下のうちのいくつかの質問をされる。
「日本人じゃないですよね?」
「ハーフですか?」
「日本語上手ですね~」
「ああ!やっぱり!顔が日本人じゃないですものね!」
「そこは日本人なんですね!」
相手に悪気がないことは知っている。
でも正直、それらの言葉をきけばきくほど、自分の中のもやもやが広がる。悪気がないと知っているからこそ、余計苦しくなる時もある。
高校生の頃「ハーフ」という言葉に疑問をいだいていて、いわれるのがあまり好きではなかった。自分がどんなに日本語や日本の歴史・文化の勉強をしても、日本に帰るたびに外見で判断され、「ハーフ」の枠に閉じ込められているように感じ、とても嫌だった。「ルーツ」を大学の卒業制作のテーマにし、今までいだいていたルーツにまつわる言葉に対するもやもやに一年間向き合い、様々な本を読み、自分なりにもやもやを和らげる方法をみつけられた。
そのため、今は正直「ハーフ」といわれても気にしなくなっている。自分は使わないようにしているが、「ハーフ」という言葉が相手にとって私のルーツを説明するのに一番腑に落ちる言葉なのだろうと思い、周りが使うのはしょうがないと思ってしまう。それくらい、言われて一回一回説明するのに私は疲れてしまっている。
大袈裟だと思われるかもしれないが、はじめましての度に毎回ほぼ同じ質問を同じ順番できかれ、会話がパターン化している。
そして最近、こんな言葉を耳にした。
「純ジャパですか?」
脳内で大きな「は?」が響いた。また違うとき、こんな言葉を耳にした。
「あなた混血かい?」
このふたつの言葉に対して、私は何も言うことができなかった。
卒業制作の参考文献のなかでこれらの言葉を読んだことがあった。言葉の歴史も調べたことがあった。しかし、直接言われたことはなかった。
文面で読む言葉と実際誰かの声で発せられる言葉の影響の違いに驚かされた。
その時は何も反応できず、会話は普通に続いたが、家に帰ってからとてもいやな気持になったのを覚えている。まだこの言葉をつかっている人がいること、それが悪気もなく無意識に放たれたこと、そして何よりも何もリアクションできなかった自分に腹が立った。ただ質問を受けていつも通りに自分のルーツを説明した自分に。
こういう時、どのような反応をすればいいのだろうか。初めましての段階の会話で、相手のことも知らず、関係も築いていない段階でどのような言葉を発すればいいのだろうか。自分がその言葉に傷ついたと、使ってほしくないと、いやな思いをしたと、どのように伝えればいいのだろうか。それが仕事上での挨拶の場であるときはどう反応すればいいのだろうか。
シンプルに伝えればいいのだろうけど、未だに私は伝え方がわからないまま、黙ってしまう。
自分が伝えないことによってその言葉はまた違う場で放たれ、だれかがまた傷ついてしまうかもしれないと思いつつ、今だに言葉に迷い、考え続けている。
今私にできているのは初対面から何度か会って、関係性が築かれていく途中に自分のルーツにまつわる言葉の使い方や今まで言われて嫌だった経験の話をしていくことぐらいだ。
それがとても悔しく、初対面でちゃんと伝わる言い方を考えたい。
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