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在住者が思う、フランスの素敵なところとその向こう側にあるもの②

フランスに引っ越して7年目。
先日、自分が思う「フランスの素敵なところと、その向こう側にあるもの(嫌でも見えてしまうもの)」について言及したのだが、書きながら気づいてしまった。

「もっとある、もっとだ!」

ということで今回は、その続編をお届けしたいと思う。フランス生活の“素敵ポイント”をさらに掘り下げてみよう。

1、素敵ポイント4、過剰包装がない

過剰包装のない社会がこれほど心地良いとは、フランスに来てはじめて気づいたことかもしれない。ゴミが減るという大きな利点があるからだ。地球を汚さないで済む。

フランスでは、野菜や果物は基本的に量り売りが主流だ。2022年から青果物のプラスチック包装が全面的に禁止されたため、スーパーでは薄手の紙袋が用意されている。客は欲しい分をその紙袋に入れ、設置されているデジタル量りで計量する仕組み。

つまり、青果は裸のまま売られ、裸のまま買い、さらにエコバッグに詰めて持ち帰る。これで困ることはとくになく、しっかりと洗えば問題ない。

もちろん、青果だけに限らない。フランスでは紙ストローもかなり前に導入され、プラスチック製のものは廃止されている。しかし、それに対して文句を言う人はほとんどいなかったと記憶している。ストローを使う飲みものを、日常的に購入する習慣が少ないのだ。日本のようにペットボトル飲料のバリエーションも多くはない。

素敵ポイント5、声を上げていい

理不尽なことや間違っていることには、自信を持って声を上げていい。

「長い物には巻かれろ」という文化はなく、相手が上司であっても、自分の尊厳を傷つける行為に対しては毅然と立ち向かうべき。フランス人はこれを徹底している。
関係をこじらせる可能性があるのは言うまでもない。それでもフランス人は気にしない。彼らは「自らの尊厳」を、本当に大事しているんだと思う。

かくいうわたしもたまに声を上げる(差別的なイジリとかで)。
で、言うと、本当にスッキリする。
己を大切にしていいんだ、鎧を着て武装しなくていいんだ、と新たな自分を発見する。

ただし、若干のTPOはある。どの場面で声を上げるべきか、どの場面で我慢するべきかを見極めるには、やはり経験がものを言う。

素敵ポイント6、お金をかけなくていい、ズボラ万歳

これはわたしがフランスでもっとも好きなところかもしれない。先日も触れたように、フランスの物価は非常に高い。もともと高いうえに、さらに上昇を続けている。だからこそ、みんな金欠で余裕がない。

つまりは、見栄がはれない、ということになる。たとえば贈り物は「お気持ち」程度で済むし、無理をする必要がない。服装やメイクも普段はズボラでOK(もちろんTPO次第だが)。

家に誰かを招待するときもそうだ。フランスでは簡単なアペロ(おつまみと飲み物を楽しむ時間)に、袋から出したポテチやナッツ、ラディッシュをそのままボン!とテーブルに置く。手の込んだ料理はとくにない。

ピクニックなんかもそう。手作りのものを持って行くと驚かれるかもしれない。彼らはたいていポテチや出来合いの総菜、バゲットをそのまま食べている。

結論、楽だ。

その向こう側にあるもの1、ずさんな建築

フランスの建物は美しい。しかし、その美しさに反比例するのが「快適さ」である。フランス建築のずさんな構造に、何度ため息をついたことか。

たとえば風呂場。わたしはフランスで、水漏れをしなかった風呂場を見たことがない。使用時に気をつけないと、バスタブに設置されたガラスの仕切りから「ちょろちょろ」と水が漏れ出してしまうのだ。

concretehouse instagram  シャワーは壁側を背にして浴びることに

こうしたタイプのバスルームは日本ではほとんど見かけないが、ヨーロッパでは一般的だ。おしゃれではあるものの、非常に使いにくい。バスタブが深くて危険なことも多く、フランスでは高齢者の転倒事故が後を絶たないという。

さらに、カビに対する危機感もどこか弱いように思える。みな湿気を侮っている気がしてならない。キッチンやクローゼットも、日本の基準からするとほとんどが使いにくい設計だ。

内装業の雑さも気になる。業者にお願いすれば、床にペンキが散らばっていたり、壁に手形や足跡が残っていたり、コンセントのネジを締め忘れていたりすることも珍しくない。

結局のところ、フランスは「快適さ」を日本ほど追求しない国なのだろうと思う。

記念日ホームパーティーの時間が鬼ほど長い

結婚パーティ、誕生日会、結婚50周年祝いなど、フランスの記念日にはかなりの体力と精神力が求められる。日本の10倍は時間が長いからだ。

わたしが過去に経験した「もっとも長いパーティ」は、2日間だった。おそらく誰かの誕生日だったと思う。招待客のほとんどが泊まり込みで参加していた。しかも会場はレストランではなく、その方の自宅の庭。だいたいが長いから、一軒家の人は自宅の庭で開催する。

あまりよく知らない人々と、しかもフランス語ばかりの環境で2日間すごすのはきつい。プログラムも、アペロ(食前酒)、昼食、デザート、歓談、そして再びアペロ、夕食、デザート、さらに歓談とダンス…と延々つづく。人見知りには本当に辛い時間だろう。

それでも途中で帰るのは失礼にあたるらしい(ドタキャンはもってのほか)。招待状もかなり前に届くため、よほどの事情がない限り断ることも難しい。しかしフランス人、とりわけお年寄りたちは、こうした集まりが大好きなのだ。

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