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パリの美ファサード
パリの建物、とくにファサードを眺めていると、「これには敵わない」と思う。自分は行政担当者でも建築家でも何でもない。でもなぜか負けた気分になる。ただ、完敗する感覚がこれほど清々しいとは思わなかった。
そもそも勝負の話ではないのだが、美しすぎる何かに出会うとき、感嘆を超えて服従したくなることがある。パリのファサードがそうだった。
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自分の感覚では到底追いつかないもの、真似したくても絶対にできないものがある。生まれ育った環境で培われる美的センスだ。
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ファサードの素材、置かれた商品の相性、光の入り方、角度――すべてにおいて完成度が高い。整っていて使いやすいから「完璧」なのではない。むしろ、不揃いなものが多いし、中にはミニマリストの対極をいく「マキシマリスト」な店もある。
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わたしはフランス人と暮らしているが、彼もまたマキシマリストだと思う。捨てないことに美学を見出し、その美学を誇りに思っているのだ。たまに喧嘩になるけれど。
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何かに清々しく負けるとき。そこにネガティブな感情が湧かないのも素敵だと思う。リスペクトが生まれるし、その存在をもっと深く知りたくなる。