「惑わされたい」妙な気を起こす香り「ダチュラ ノワール」
セルジュ ルタンスの「Datura Noir(ダチュラ ノワール)」を嗅いだら、みな妙な気を起こすかもしれません。それくらい危険な香りを見つけました。
隠れた名香「Datura Noir(ダチュラ ノワール)」は、フランス語で「黒のダチュラ」を意味します。ダチュラとは、アサガオ科に属する(チョウセンアサガオ)のこと。とても美しい花ですが、猛毒があり、強い幻覚作用を持つことでも知られています。
ブランドの調香師クリストファー・シェルドレイク氏は、「世界でもっとも美しく危険な花」と呼ばれるこのダチュラをイメージして、「Datura Noir(ダチュラ ノワール)」を調香しました。
トップノートでは、マンダリンとレモンブロッサム、アーモンドのトロっとした香りが漂います。熟れた果実の甘さ、いや、それを通り越した濃密で妖しい香り。それはそれはリアルで、今すぐかぶり付きたくなるほどです。
シェルドレイク氏は、果物は「朽ち果てる寸前」がもっともおいしいことを熟知していたのでしょう。ドラマを伴ったいきなりの幕開けに、誰もが「この香水は普通じゃない」と思うはずです。
続くミドルノートでは、主役のチュベローズが“満を持して”現れます。チュベローズとビターアーモンド、そしてココナッツオイルが濃厚に混ざり合う姿は、もういやらしい以外の何者でもない。「したたり落ちる」ように、香りが下に向かって垂れていくのです。
チュベローズに興味がないという方でも、この香りには絶対に反応してしまうはず。さすがは「Datura Noir(ダチュラ ノワール)」、人間を“絶対に落とす”方法を知っているのですね。
しかしラストノートでは一転、香りがフラットに。父性や母性といったものが感じられるノートです。その優しく穏やかな香りには、脳も身体もまどろんでしまうに違いありません。実際にわたしは眠くなりました。
トップからミドルにかけての変化があまりにも劇的だからこそ、この落ち着いたラストがありがたく感じられます。ずっと刺激的な香りでは、本人も周囲も疲れてしまいますから。そしてこうしたメリハリが、大人のフレグランスとしての完成度を高めているのだと思います。
「Datura Noir(ダチュラ ノワール)」はフローラルを基調としていますが、ジェンダーを問わずにまとっていただける香水です。男性なら危うい魅力を、女性なら妖艶な魅力を上乗せ。下品にならないところも、さすがセルジュ ルタンスです。
ただし、この香りを嗅いだ相手が「妙な気を起こす」可能性もありますので、まとう際にはくれぐれもご注意くださいね☺