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峠道で見かけた光景

その峠の周囲は雑木林の山ばかりであった。二つの山の間に幅の狭い道が通っていた。車がやっと通れるくらいの道だ。昔の街道であったとされている。

私はその道ではなく、雑木林の間の細い登山道を登ってきて、やっと峠に立ったところである。これからやっと下り道になると思って、やってきた登山道を振り返って、麓の村が見えないか確認したが、周囲の高い雑木に囲まれて村の様子は見えなかった。

私は、麓から山道を登ってきたのだが、なぜそこまで登っていったのかは、はっきりとは思い出せない。

この峠からは、村が見えないということがわかったので、今度は登山道ではなく、車が通っている道路の脇道を帰ることにした。同じルートは通りたくないという思いからだ。

こんな山あいの峠には民家はないだろうと周囲を見渡すと、私が立っているところの反対側に、車の道から小道が伸びていて、しかもそこに1台のタクシーが停まっているのには少し驚いた。

こんな峠のところにも民家があるのだなぁと驚いて、しばらく注目していた。

もしかすると、その民家は昔、峠の茶屋でもやっていたのではないかと勝手に推測してみた。その子孫が代々ここに住み続けたのではないかなと考えたのである。

タクシーからは高齢の女性とその息子さんと思われる方が、降りてきた。

2人の会話が少しだけ聞こえてきたので、耳をすませていると、母親は病院から退院してきたところのようです。

母親の歩き方ついて、入院前と比べて思ったほど体力が落ちていないね、と言うような息子さんの声が聞こえてきた。

息子さんの母親思いは、大きな荷物を2つ抱えて、これから家に入ろうとしている後ろ姿からも伝わってきた。

タクシーは、村に一つだけあるタクシー会社のもので、これからUターンしてもどろうとしている。運転手が私に気づいて、一瞬私の方を向いたが、私は軽く手を挙げて返した。乗って帰ることもできるが、こんな天気のいい日は、紅葉の中を歩いていかないともったいない気がした。

秋が深まっているようで、道路脇の小道には落ち葉がたくさん積み重なり、歩き出すとカサカサとなった。私は落ち葉をわざと蹴り飛ばしながら、その音を紅葉の中に響かせて楽しんだ。

ドラマの一場面のような、こんな夢をイギリス旅行の帰りの便で見たので、すぐにメモしてまとめました。

帰りのフライトBA007便は13時間半でした。行きのBA006が15時間近くかかったのに比べたら楽に感じられたのは、こんな不思議な夢を見たからでしょうか。

作家やシナリオライターなら、こんな夢から、母と息子のドラマが出来そうですね。

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