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「流動的――」のリアクションから見えるリテラシー

Fluid Priorities and Roles (流動的優先順位と役割) というのが、スプラトゥーン界隈で先月 (2025年1月) すこし話題になった。
(ピンとこない人むけ :  ”海外提唱のライフハックが、有名人に取り上げられて話題になった” ぐらいの認識でだいたい正しい)

この話題へのリアクションを見ていて思うことがあり、noteをしたためることにした。


界隈のリテラシーが低そうに見える

情報の適切な処理能力、つまりリテラシーが低そうなリアクションが多い印象を受けた。

これは「頭が悪い」「能力が低い」という類の悪口、ではないSNSでは、こういうモードが普通なのだろうと感じたのだ。

疑わない

「流動的優先順位と役割」が正しい前提のリアクションが多くみられた。
「自分も実践しよう」「自分の実感とマッチしている」とか「解説のここが間違っている」など。

なぜか理論が正しいことになっている。よく出回っている解説には、正しさや妥当性の説明がほとんどないのに

海外から伝わってくるレベルだから?有名プレイヤーの紹介だから?

心理的には分かるリアクションだ。しかし冷静に考えると、誰が発信/紹介したかは正しさとは関係ないのだ。

ソースを確認しない

正しさは一次情報 (ソース, 元ネタ, 原文) で判断したい。
情報が正しくても、翻訳や解説で間違えてしまう/脚色されるケースもあり得る。

しかし大半の人は一次情報を見ていない気がする。トピックから日本語解説されていない部分が抜け落ちているからだ。(しかも結構重要な部分だったりする。)

  • 2018年・前作の発売初期に書かれた古い内容であり筆者自身も活用していないこと

  • なぜそのように考えるかという部分

  • ロールでブキを分類する行為が完全な誤解であること

とはいえ、一次情報を確認するのには労力がいる。だからこそ翻訳・解説のほうが拡散されたのだろう。

しかも「流動的優先順位と役割」の原文は、1万単語超の英文だ。言語の壁は翻訳ツールで解決できるとしても、長文を読解するのは骨が折れる。

井戸端は、学会じゃない

ここで「科学的・論理的に正しくなので、訂正すべきだ!」と声高に非難するのは感性がズレているとも思う。
下手すると、他人の思考・行動を推測する能力の低さを露呈することになる。(ゲームでも必要な能力だ)

私が察するに、趣味・暇つぶしで眺めているSNSで流れてくる情報の真偽など本当はどうでも良いのだ。

真理を探求しているわけではない。楽しくて暇がつぶせれば良い。ニーズを満たしてくれる、面白さ・興味深さ・センセーショナルさがあれば、多少間違っていても良い。
(この傾向を商業的に利用した “アテンション・エコノミー” には、それなりに批判があるところだが...)

それに、真偽を確かめるため、地道でつまらない作業にコストを割くほど暇じゃない。学会発表や論文執筆でもあるまいし、そういうモードじゃない

リテラシーを持っていながら (良い意味で) 適当にコミュニケーションしている人もいるので、全体としてリテラシー低めに見えるのかもしれない。

生暖かい目を持つ

もちろん本当にリテラシーが低い人もいるだろう。

全年齢向けゲームなので、まだ高等教育を受ける前の層だっている。大人でも、仕事/生活で科学的批判の出番が少なければリテラシーを働かせる習慣がない人も居るだろう。(リテラシーというのは、環境や文化の影響も大きいかもしれない。)

正しさを検討したいほど熱意がある人は、静かにリテラシーを発揮していれば良いと思う。その過程で他人の誤りを貶すのはコミュニケーションスキルに欠ける。

かといって、有害情報の蔓延を静観するのも倫理的に良くないように思う。真偽を見極められない人たちも居るからだ。

だから、その中間ぐらいの生暖かい目で見るバランス感がコミュニケーションとして適当なのかな、という雑感を抱いた。

おまけ (理論についての批判)

原文 Fluid Priorities and Roles はGoogleドキュメントとして公開されている。noteには日本語訳して下さった記事もある。

おおまかに目を通した感想を箇条書きしておく。

  • 長い (得られる知見のわりに文章量が多い)

    • 臨機応変に」を噛み砕いて説明しているに過ぎない

  • 「なぜそういう理論を提唱したのか」の部分に学びがある

    • ワイプアウト回避の優先度が高い理由 (索敵不要のフリーの数秒間が決定的すぎる)

    • 味方が思った通りに動かない前提で計画を建てるべきこと

  • 優先事項の説明がイマイチ

    • 優先事項2「交戦する」 → 優先事項3「対面に勝つ」は、キルそのものより交戦により敵の行動をしばることが重要という意味だろう

    • 優先事項3は「倒し切る」のほうが分かりやすそう

    • 優先事項4は「前線を上げる」のほうが分かりやすそう (厳密には違うが「加速する」では全く意味が分からない)

  • 不必要に新しい用語 (ロール) が導入されている

    • 用語のせいで行動の流動性が下がりそう
      (初めて知ったロールに当てはまろうと頑張ってしまう)

    • (海外では一般用語なのか?)

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