【お望月さんの】2024年映画ベスト10
こんにちは! お望月さんです。
我々が2024年に鑑賞した映画作品、94本からベスト10を選出。
それぞれホメホメしていく恒例の企画です。
KPI達成
今年は映画を鑑賞する本数は100本未満におさえることができました。しかも鑑賞作品にハズレなし。おもしろい映画だけを見ることができました。すばらしい。
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過去のベスト作品
2023年『地下室のヘンな穴』
2022年『ウィリーズ・ワンダーランド』
2021年 『モータルコンバット』
2020年 『メランコリック』
2019年 『スパイダーバース』
2018年 『キラーメイズ』
2024年鑑賞映画ベスト10
第1位 『熊は、いない/ノー・ベアーズ』(2023)
イランでの映画製作禁止・出国禁止となったパナヒ監督は、トルコ国境の村で映画のリモート撮影を指示していた。ところが、ある因習にまつわる事件が発生し監督は松村(松明をもって家屋を囲む村人)に取り囲まれてしまう。一方、トルコでの撮影ではトラブルが発生し密航カップルに亀裂が入り……というフィクション作品だが、現実との重ね合わせた結果リアルよりリアルになってしまっているすごい作品である。
撮影していないビデオの提出を求められる「天狗裁き」な場面は非常にスリリングでおもしろい。言葉は通じても理解はされないという今年のトレンドを的確につかみ「スゲーの見た!」となった作品です。
第2位 『枯れ葉』(2023)
とにかく楽しいラブコメディ。81分の尺に合わせた小規模な起伏も見事で映画の魔法を感じる。時代設定は2024年だけど、目に映るものは総じてレトロで『パラダイスの夕暮れ(1986)』と区別がつかない。変化があったのは、中年女性が肉体労働に従事するようになった境界の破壊だろうか。
沈黙と間と視線が絶妙におかしく、走馬灯のような映画体験だった
第3位 『侍タイムスリッパー』(2024)
不器用な会津藩士が幕末から平成の太秦時代劇村にタイムスリップ。時代劇の撮影を本物だと思い込み「義によって助太刀いたす!」と乱入し、やがて切られ役として活躍するようになる‥‥というおはなし。
あんまり触れらているのを見ないんだけど、タイムスリップ直後に高坂殿が撮影に鉢合わせたあと、リハーサルが終わったことで時間が巻き戻るシーンが入っているのがすごく良くて、この一点でこの映画はイケるぜとなったんだ。
「俺が推さなくてどうするよ」という枠だったんだけど・・・結局タイムラインの全員が見たので特に補足はありません。「SF時代劇」と「斬られ役モノ」というマイナーメジャーの題材を組み合わせているので関連作品を見れば見るほど楽しくなると思う。
関連作『スローな武士にしてくれ』(斬られ役が大役を任されるやつ)
関連作『鬼平犯科帳』(令和最新版)(山口馬木也氏が岸井左馬之助として主演してるやつ)
関連作『天晴れ夜十郎』(現代人が幕末にタイムスリップするやつ)
第4位 『セーヌ川の水面の下に』(2024)
ナイスセーヌ!非常にレベルの高かった本年のNetflix作品でも際立った完成度。パリの街並みを見る目は『セーヌ』前後で明らかに異なるものとなる。(『パリタクシー』を見ている間、ずっと面白かったもんね)想定以上の破壊を生み出す思い切りの良さとオリンピックイヤーのパリをセーヌしてやるという気概に満ちた一本であり。年度最高得点に達したと思う。
昨年公開の『シャーク・ド・フランス』とのアプローチの違いを楽しむのもオススメ。
第5位 『ロボット・ドリームズ』(2024)
ちょっと周囲と空気の合わないドッグはともだちロボを購入して海へ出かける。しかし、海辺で思わぬ事故が発生し、ふたりは離れ離れになってしまう、取り残されたロボは夢想の世界へ……。
ロボットやフェンスが何を意味しているかはあまりにあからさまであり、ドッグ野郎も不適格な父であり友人である。そういった意味で評価を下げる向きも理解できる。それでも
すべてが破壊されて不可逆の世界になるまえに、その日の前に前に我々にはできることがある、のだと思う。
第6位 『オッペンハイマー』(2024)
斬拳走鬼、すべてを備えた理想的な伝記映画である。「我々は破壊した」というのは本年を象徴するキーワードである。現代エンタテイメントのトレンドは「どうなる」ではなく「どうしよう」の段階にある。起こってしまった事象に対してどう向き合うかということが今後は重要な意識となるのだろう。そういうものだ。
第7位 『イノセンツ』(2023)
頭から尻尾まで手に汗を握る団地サイキックスリラー。「超能力」に目覚めた少年たちは団地で能力遊びを始めるがやがて無邪気さが悲劇を呼びこむ。この作品のもう一人の主人公は団地そのもの。団地には平等な格差と無限の無関心、つまり人生のすべてがある。つまり団地で暮らす少年たちは世界を守るために戦うのである。原案の『童夢』と見比べてもよいけど、単品でも十分な魅力を放つ逸品ですよ。
第8位 『レンフィールド』(2023)
抑圧に思い悩む作品が多い中、突き抜けた明るさが元気をくれた一作。
ドラキュラ(ニコケイ)に長年の圧迫祭りをされ続ける従者のレンフィールド君。セラピー会場での食糧漁りに飽き果てた彼は自分も幸せになる権利があると反旗を翻そうかな~どうしようかな~とウジウジしてしまう。抑圧されたものがさらに抑圧されたものを漁るという暗めの展開から始まるが、抑圧された世界は、ある種の暴力で打破することができる。という真理に覚醒してからは、とにかく底抜けに明るく爽快なアクションが続く。対吸血鬼狼牙棒まで突き抜けたのであれば何も言うことはない。
第9位 『対峙』(2023)
校内乱射事件の被害者家族と加害者家族が教会の一室で面会するというおはなし。センセーショナルな事件を扱っているが回想やフラッシュバックはなく、少しだけ祈りの暗転がある程度。作中の時間が常に一定方向へ進行するのが特徴だ。作品テーマにも一致している。(なお、ドキュメンタリーのような作品だけどフィクションです)
被害者と加害者という圧倒的な立場の差があるにも関わらず、お互いが「相手を尊重すること=自らを守ること」ということを全力で守ろうとした結果に生じる聖なる時間を描いている。
本作中で最大のショックシーンは、加害者父が被害者家族に配慮した結果ヒりだされた「被害者は特別な標的ではなく、たまたま居合わせただけだから、どうすればよかったとか考える必要はないので自分を責めないでください」という善意100%の加害発言。悲鳴上げちゃった。
とにかくこの対峙を見守ってほしい。
第10位 『シック・オブ・マイセルフ』(2023)
総合評価としては年内最低作品のひとつ。しかし、ヒロインの格の低さがチャーミングという一点でベスト10にランクインすることになった。
とにかく主人公の格が低いため作為症行動の効果が薄い。周囲も塩反応であり、作中で発生する事件については、因果バランスに全く不自然な部分がなく、不思議なことや乱数の偏りが発生していない。「干しきる」「反応しない」といった基本対応の重要性を分からせてくれる。完全に生きもの地球紀行のノリ。ほのぼの枠。
マン・オブ・ザ・イヤー
『侍タイムスリッパ―』より風見恭一郎
編集部内でも激論が交わされたが、最終的に風見さんがマン・オブ・ザ・イヤーに選出された。予想できないアクシデントに巻き込まれ何もわからない世界を手探りで行き抜き、ついに頂点に立っても埋めることができない「欠けたピース」を抱える男。彼の孤独、諦念、そして・・・歴代受賞者にも勝るとも劣らないダシが出せると判断されて受賞となった。
他のノミネーションは、ウィリアム(カード・カウンター)と雪祈(BLUE GIANT)、イリネイ(エストニアの聖なるカンフーマスター)。いずれ劣らぬマンである。
未来へ
2024年は鑑賞映画本数を絞り込み、意識して面白いと思える映画だけ選び取る目論見に成功した。それによって世間が狭くなったかといえば、Noだ。結果的に鑑賞しない場合でも、選び取る過程で少なからず作品に触れて味わっている。ランダム性がもたらす純粋性という神話から、少しだけ逸脱できたのではないかと思う。
来年はもう少し自由に凸凹のある鑑賞を楽しめればよいと思っています。
あと毎年順調に劇場が縮んでいる(京ことば)ような気がするので、たまには大きなところでのびやかに映画を見たい。
それでは良いお年を!