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日本人をやめたい

ほんとうに突然で申し訳ないのだが、わたしはトイレが好きだ。自分でも何を言っているんだろうと思うけれど、ここは正直に白状するしかない。

トイレという小さな空間も好きだし、用を足す行為そのものも清々しい。もちろん、多くの人々がそうであるように、私が思い描いているトイレというのも洋式トイレである。できればウォッシュレットがついているほうが好ましい。

ものを書く仕事をしていると、ずっと同じ場所にいることに飽きてしまうため、カフェなどをてんてんとすることがまぁよくある。そりゃもちろんオシャレであればあるほど良い。オシャレカフェはウォッシュレット率だって高い。オシャレはウォッシュレットから、といってもいいくらいなのかもしれない。

ただ、そういった場所はウォッシュレット率と同じくらいに金額も高い。そうなってくるとオシャレに徹することができないわたしは、けっこう図書館を利用する。調べてみると、実は図書館って結構いろんなところにあって、静かで集中もできて便利なものだ。なんたってタダだし。

昨日も気分を変えたくて某市立図書館へと行ってみた。こじんまりしているけど混雑もしてなくて、いい感じ。なんだか子供のころを思い出す。

もくもくと仕事をしていると、むくむくと便意がこみ上げてきた。便意は極限状態まで我慢するようにしている(そのほうが開放感があるんです)ので、いつものようにギリギリになってトイレに駆け込んでみると、そこには個室がひとつだけ。扉には「和式便所」の文字。その下には「JAPANESE STYLE」とある。なにがSTYLEだよ。でもどれだけ探してもEUROPEAN STYLEもなければAMERICAN STYLEもない。もちろんRUSSIAN STYLEだってない。(そんなSTYLEあるのか。)あるのは便所が一個だけ。そして人生は一回。

自分で極限状態まで追い込んでしまっているわたしに選択肢はなく(そもそも選択肢がないんだけど)JAPANESE STYLEへ。大丈夫、わたしは生粋のJAPANESE。このタイプで用を足したのはずいぶんと前のことだけど、経験は豊富だ。何よりここで躊躇していては危険だ。替えのパンツなんてもちろんないし。

ところが、しゃがんでみようにも、便座との距離感がいまいちわからない。足はどの辺においたらよかったんでしたっけ?どの辺まで腰を落すんでしたっけ?ズボンって、どれくらい下げるんでしたっけ?いや、何度も確認して距離を測っている時間はない。そして人生は一回。ええい、受け止めい!


その足で、私は仕事を中断し、急ぎユニクロへ向かった。

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