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【映画感想】黒沢清監督「chime」/なんなのだこれは

黒沢清監督作品「chime」見てきました!

映画見に行きたい欲が高まって、シアターキノの上映作品一覧の中から仕事終わりに行けそうな時間帯、かつ興味を惹くもの……って考えた結果「chime」に行き着いたわけですが……


🎦予告

🎦印象

レビューからしてもう咀嚼が難しそうな映画だろうなとは思っていた。
そして、黒沢清監督作品見たことないけど多分ホラー系(人怖系)?かなとも思っていた。
でも上映時間1時間ないし、3時間超えの「ボーはおそれている」が見れたんだから行けるでしょう!と思いつつ、職場の映画好きにも相談してエログロ系ではなさそうなことを確かめてから、いざ強行しました。

なんだろうな……あらすじはほぼ無いに等しくて、別にスプラッタでもオカルトでもないけどずっとうっすら不安。
どの登場人物もうっすら怖くて、しかもギリギリ日常にありそうな気まずさといたたまれなさ。なんだこれは。
二度寝しながら繋がってるようで繋がってない断片的な悪夢を見てるような感覚が一生続き、見てる最中から1時間もないのに1時間半くらい映画見てたようなストレスがありました。

何を書いてもネタバレになるのかならないのかすらよく分からないんですが、登場人物の不穏な予兆はあるのに行動がノータイムノーモーション過ぎてジャンプスケアじゃないのにびっくりします。
行動の意図を考えている間にもう次のシーンに移ってる感じ。
包丁が出てくるたびにびびるんだ。

あと、客観的に見てると登場人物の行動に一貫性がないように感じるのに多分本人の中では筋が通っているんだろうなと感じさせる説得力はなんだ???
電波系への解像度が高い。
ギリギリ現実にはいないけど、ギリギリいてもおかしくなさそうな様子のおかしい人しかいなくて、どこまでも非情なほど現実的なのに現実感がない。置き場のない不安のやり場がない。

ストーリーが上手い映画、場面作りが上手い映画はたくさんあるけど、この脈絡のなさで映画として完結していることに映画という表現の自由を感じます。

🎦以下、印象的な場面など

料理教室の生徒さんが「自分の脳は機械に入れ換えられている」と言い出す場面

料理教室のテーブルってキッチンが4×3みたいな感じで並んでいるじゃないですか、あのブロックの間を絶対に最短距離じゃないのに、わざわざ先生の通った道筋を辿って追いかけていく。
その非合理的な挙動が怖い。
あの場面、奥行きを感じさせるしあの位置に移動するっていうことがすでに意味を持たせてるんだなあとも思えて、思い返した時に真っ先に脳裏に浮かびます。

死体をシュラフに詰めたあと自分の手に絆創膏を貼る場面

返り血で汚れた手が気になるのかな、手を洗うのかなと思ったら、多分殺人とはまったく関係ないところでついた傷が気になっているだけのやつ。
手を洗ってから絆創膏を貼るとかそういう考えも存在してない。
怖い。
絆創膏を自分の私物から出してるっぽい几帳面加減も怖い。

妻が大量の缶を捨てる場面

同じお酒の缶ばっかりビニール袋に詰められてゴミ捨て場に捨てられてるのってよく見るし、狂気を感じてそれだけでもう怖いなってリアルな日常で感じるんですけど、妻が食事中何の前触れもなく突然席を立ってキッチンから袋4つ分くらい缶ゴミを持って庭に出て行ってカゴに次々移してるのが本当に怖かった。

まず食事中席を立たれるのが怖い。ご飯食べてる間ずっと無言だし、主人公は料理人なのに家では妻の方が食事用意して待っててしかも茹でるだけの素麺っていうのがすでに不気味で怖いんですが……

全体的に綺麗目な家なのにキッチンにそんなにゴミ袋溜まってるのも怖いし、ゴミ袋からわざわざ自前の庭に設置してあるカゴに移してるのも怖い。
ゴミ袋ごと出せない自治体だったとしても、朝ゴミ出し行く時にやればよくない!? わざわざ庭にカゴの状態で出しとく必要性ある!? なんでそんなこまめさがあるのに袋4つも溜め込んでる!?
全部意味不明で怖い。

何より、音が怖い。
あの響くガランガランいう音も嫌だし、その音が響く中無言で食事を続ける夫と息子が映されてるのも怖いよ。

湧いて出る車、長すぎる橋

近くに電車通ってるし帰り道的にも電車通勤なのかなと思ったら、突然自前の車が出てきた。
今思うと計画殺人のための車だった可能性があるな……

長回しで橋を渡るシーンがあるのですが、長すぎてびっくりした。
途中で編集を疑ったくらい長かったけど多分リアルに長い橋。
伊坂幸太郎『グラスホッパー』のラストの方の、"通過時間が長すぎる電車"の描写が好きなんですが、あれ思い出しました。

画面に映らない幽霊(?)

椅子だけぽつんと置かれて、客の目にも作中の誰の目にも(多分)映っていないであろう幽霊のような何かに主人公だけが怯えている。
悲鳴を挙げる主人公だけがアップで映し出されていて、決して主人公の見ている何かは映らない。

「アパシー鳴神学園七不思議」で荒井さんがホラー映画は低予算でも工夫して撮れる的なことを言ってましたが(これが低予算だとは言ってません)、ホラー映画らしい映像表現!!!!と大喜びしてました。
映さなくてもいいし、観客は想像して勝手に怖がるし、主人公にしか見えていない説明もできる。手法と意図がバッチリはまってるお手本みたいな場面だと思いました。

明らかに小さい音、モスキート音のような高い音、明らかに大きすぎる轟音など、音の使い方も「これ主人公にしか聞こえてないんだろうな~」と思えるものが多くて、映像の技巧が大好き人間としてはどのシーンも見てて本当に楽しかったですね。

🎦総括

良い気分転換になりました!
就活シーンはリアルにウッ…というしんどさがあったけど、それ以外は「あるあ…ねーよ……なにそれ知らん怖…」の感情に支配されながら、ラストでは「まさかこのまま放り投げられるのでは……」という期待通りに放り投げられるという、映画に振り回される体験が出来ます。
こういうの好き。

「ボーはおそれている」が楽しい人は絶対好きだし、ホラーやスプラッタが苦手でも良い塩梅でハラハラ不安になれる。
とくに気合いを入れておすすめはしないけど、見終わったあとにあれなんだろうね……と思わず顔を見合わせて話したくなる魅力があると思いました。

🍸️@キノバー

お隣のキノバー、入ったことなかったので今回は入りました。
本当は映画前にゆっくりしたかったんですが、今日は20時からの開店ということで観賞後に。

カルーアミルク

丸い氷入ってるの嬉しい~~
バーとか人生で数えるほどしか入ったことないので、お酒飲むだけの時間が贅沢に感じました。
また来よう!

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