街の匂い
街にはその街だけの匂いというものがあるように思う。その匂いをたまらなく愛しく感じるということは、その街のことが大好きということなのだろう。
わたしは、恵比寿という街の匂いがすごく好きだ。
人の記憶なんてどうしたって曖昧なものだから君の顔もあの仕事は退屈で嫌だったなあって思ったことも、もしかしたら楽しかった仕事ですらもきっといつかぼやけてしまうけど、駅前の銀だこの店員さんがかけてくれる「美味しく召し上がれますように」という言葉だったり、銀だこの近くのお寿司屋のおやっさんのキャラがよくてお寿司もすっごく美味しいことだとか、駅からちょっといったところのスタバの店員さんの優しさに泣きそうになったことだとか、吉野家の牛すき鍋が美味しそうだなあと足を止めたこととか、どうしても頑張れなくて頑張りたくて恵比寿神社でお願いをしたこととか、きっとずっと忘れないし、この街に来るたびにこの街の匂いが鼻をかすめるたびに思い出してちょっと切なく、胸を掴まれるんだろうなあと思う。
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