あれは、神様だったのかな・・・?
あれは……年の瀬。
神社の奉納提灯のあかりが、朱々と灯る時間だった。
家の前の神社をふと寝室の窓から眺めていた。
今年も提灯のあかりが美しく、この時期の雰囲気がとても好きだ。
外を眺めながら考えていると、神社の中から人が出て来た。
少し離れているし、暗く、灯りはその提灯のみ。
少し腰の曲がったおじいさんのようだった。しっかり覚えてはいないが、黒のスエット上下のような恰好だった気がする。
その腰の曲がったおじいさんは、神社の外、歩道で何かを拾い、それを車道の方へ投げる。それを繰り返していた。
その動きがまた独特だったのだ。
なんと説明したらいいのか、『小刻みに早く歩く』そう言ったら伝わるか。それが不思議でならなかった。腰の曲がったおじいさんが、ぜんまい仕掛けの人形のように、何かを拾っては捨て、拾っては捨てを繰り返していた。
夜遅い時間ではあったが、通り過ぎる人は何もないように、そのおじいさんとすれ違って行く。
あのおじいさんの小刻みな動きを見て、何とも思わないのかな?
私は不思議に感じていた。
時折また神社の中に戻っては何かを持って来て、車道に捨てる。
車に何かぶつかるような感じではない。
落ち葉か何か、落ちているものを車道に投げている。
神社の周りを綺麗にしようとしているのか?
とにかく、そのおじいさんの行動が不思議でならなかった。
その様子をどれくらいか見ていた。
5分か、10分か……いや、10分なんてそんなに長くはない。
でも、長いこと見ていた。そんな気にさせた。
その行動を何度も繰り返したおじいさんは、再び境内に入って行くと、その後は外に出てくることはなかった。
あのおじいさんは、どこに行ったんだろう?
もしかしたら神社の人で、あんな夜中に掃除をしていたのかもしれない。
住み込みで働いている人とか?
夜中にお参り(?)に来る人は今までも見たことがあった、あのおじいさんもお参りに来たのかもしれない。
神社を見つめ、いろんなことを考えた。
年が明け、新年を迎えると神社は賑わいを見せる。
いつものように家から見た神社は、普段灯りがついていない建物に灯りが見えた。
もしかすると、あの場所に住んでいる人だったのかもしれない!
混まないうちに初詣に行こう。
あの灯りのついた建物が気になっていた私は、足が速まる。
境内の一番奥、灯りのついた窓を目印に進むと、そこは神社で使うのもが仕舞われている倉庫のような建物で、シャッターが半分開いていた。
ここに人が住んでいる様子はなかった。
じゃあ、あのおじいさんは一体、誰?
その後も、私は気になって、同じくらいの時間になると神社を見つめる。
今日はいるかな?
いないかな?
神社の奉納提灯のあかりが消えてしまえば、暗闇。
きっと、あのおじいさんの姿は見えなくなってしまう。
誰だったのだろう?
私は、神様だったんじゃないかと思っている。
そして
いつかまた、私の前に姿を現してくれることを、心のどこかで願っているのだ。
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この物語はノンフィクションです。
実際私が見た、おじいさんのお話です。
本当のところは、どうかわかりませんが、私は神様だったと信じたい。
神様が年末に神社の掃除をしていたのかな?