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【詩】Bouquet room -purple-

また、朝が来た。藤のカーテンは美しいが、いつまで経っても開くことができない。その花で埋まる空だけが、私を囲む世界。隙間から微かに零れる以外に太陽の光は届かない。
池のように水を張った床に、紫陽花を浮かべた。まんまるな紫陽花達が水面に咲いている。カーテンから零れた光は水と花に融け、キラキラと輝いた。灯籠のようだ。
パルフェ・タムールの香り。キキョウのブーケ。カンザキアヤメの便りを心待ちにして、それらを抱き、もう一度眠りにつく。

いつか見た夜明けの、本物の空。太陽を全身に浴びていた日。この部屋に閉じこもる前。戻りたいわけじゃない。けど、もし戻る日が来たら──

嗚呼、セントポーリアの君へ。どうか私に微笑んで。
この部屋に美しさでは劣っても、それが素敵な朝をつくる。

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。