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【詩】i

朝の白いひかり カーテン揺らす、冷たい風
のどかな白に呑まれて、ラララしゅうまつ
淹れたばかりのミルクティーが冷めてしまうよ
「空が青く澄み渡ると何故哀しいのか」
そんなくだらないことを考えていた昨日が、そこにいるきみのすがた
トーストは味がしない 参ったな
「これは毒ですか?」
だとして、その正体は知れず
僕にはきみしかいないから、きみである可能性を考えた つまり"気の毒"だと
獅子/四肢よ肉体よ滅びるな
世界も滅びるな
きみも滅びるな
でも世界で一番嫌いな人間は一人くらい滅びろ

きみは空になって僕を見た
僕は哀しくなった
きみが青く澄み渡った美しい空だったから

慌ててミルクティーを飲み干して、
「誰も滅びないのが一番いい」
きみは きらきらと泣く
白いカーテンを白いひかりと風ではためかせて どうして?

僕は僕が憎かった
きみを青く澄み渡る空にした僕が
きみを泣かせた僕が
嘘を吐いても泣き止ませられない僕が
ミルクティーをぬるくしてしまった僕が
くだらないことばっか考えている僕が
きみが青空になった理由もわからない僕が

──もしかしたら、だけど
「空が青く澄み渡ると何故哀しいのか」
──ひょっとしないかもだけど、それは、

泥だらけの赤い地上にいる僕と、何にも侵されることのない天空の青に変わり果てた君との、埋められない倫理の違い

この赤い地が、泥ではなく、赤いバラだったら
赤いアネモネだったら
カーネーションだったら
チューリップだったら
ガーベラだったら
サルビアだったら
ポインセチアだったら

天と地の[愛/iぼくらだ/間]
太陽のブーケを持って
一緒に世界入刀しよう
終末なんか蹴散らそう

きみに相応しい世界になりたい

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。