池山後

20世紀生まれ21世紀育ちのオタク。 インターネットで青春を溶かした。 感想文を書きた…

池山後

20世紀生まれ21世紀育ちのオタク。 インターネットで青春を溶かした。 感想文を書きためては放流する。

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  • 読書感想文

    未読の方への推薦というより、感想を消化するための文章です。 ネタバレ前提で書いています。

  • 音楽の雑記

    よく聴く音楽の話をします。

  • ミッドサマー感想

    映画ミッドサマーの感想・考察記事をまとめました。 他の方が書かれたもの4つと、私が書いたもの1つを収めています。

最近の記事

雑記ザ師走

ヘアオイル自分は髪がぱさつかない人間だと思っていたけれど、そんなわけがなかった。体調をくずしたのをきっかけに生活全般を放棄しているのだが、おかげで髪の毛の感触がどうもおかしい。麻袋みたい。 そこでヘアオイルを塗ってみたら、たちどころに麻袋が人毛に戻った。  美容や健康って、頑張って続けなければ成果が出ないものだと思っていた。なのに、たったひと塗りで解決しちゃって拍子抜けした。 もちろん、日々こつこつとお手入れしている方々の美髪と比べるべくもないが、私にとってはじゅうぶん

    • 雑記

      のどの奥に言葉が詰まって苦しいので雑記を書いて吐き出します。脈絡はない。 Xいつのまにかツイッターが変わっている。私はことしの四月、ツイッターのアカウントを消して、界隈からおめおめと撤退したので、どう変わったのかはまったく知らない。 ツイッターを見ない生活は、静かで、ひまで、楽ちんだ。そりゃそうだ。 ツイートを見なければ他人の生活や交友関係をうらやまずに済むし、孤独のメンヘラbotと化した自分のツイートを読み返して最悪スパイラルに陥らずに済む。 はあ〜、しかし、それが

      • 『神州纐纈城』の祝福と呪い

        舞台は武田信玄の甲府、富士山周辺。 全体の印象としては、伝奇小説、因縁譚。 正直、グロテスクさを期待して読んだところもあるのだけど、とにかく風景描写が精緻で参ってしまった。 春の野山を病んだ男が歩くところなど、美しすぎてかえって残酷だ。 漢文調の人名羅列、七五調の詠い、チャキチャキした対話体など、めくるめくリズムも楽しい。 本文中にも引用されているが、モチーフは「宇治拾遺物語」169話。 「打聞集」18話も類話のようだ。 キリスト教的要素キリシタンは出てこないが、

        • 『同人女の感情』の効能

          同人女のあれ、私は好きだ。 百合としても好きだし、同人女を百合として消費するという着眼点も好きだ。 あと、あれを読むと自分語りをしたくなるよな。 確実に自分語りを誘発する成分が入ってる。 ウェルテル効果じゃん。 こわ……。 ということで、はてな匿名ダイアリーみたいな自分語りを書きます。 私は湿地に生息する同人女なので、エンジョイしている(ように見える)人々にめちゃくちゃ嫉妬するし、推し作家さんのツイートはリプまで追跡するし、ブクマとかいいねの数に一喜一憂しまくるし、そ

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        記事

          【小説】夜行

           路面にライトが反射し、よけいに周りの闇が際立って見えた。雨の滴がフロントガラスに絶えず光の凹凸を作りだすせいで、視界の先はいっそう不安だった。  時おりメーターにも目を配らなくては、尋常ではない加速がついていることもある。あらぬものにぶつかったらひとたまりもない速度だ。  夜道をひとり行くなぐさめにラジオを点けていたが、それも陰々とした古典芸能の吟唱に変わってしまった。ざらざらと続く砂嵐の途中にもの悲しい人声が紛れ込むのは、むしろ不気味な想像をかきたてる一因になった。急

          【小説】夜行

          『にんげんのくに』に吹く風

          熱帯雨林で狩猟採集をなりわいとする、裸同然の「人間」たち。 異人の血を引く子として疎まれていた少年は、しだいに「人間」たちの不条理な暴力の文化に溶け込みながら成長していく。 『伊藤計劃トリビュート』の収録作品の中で最もかっこいいと思ったのが、仁木稔「にんげんのくに」だ。 まえがきによれば、この作品集のテーマ設定は 「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いを内包したSF だという。 たしかに他の収録作品は、ドローン、仮想現実、ナノテク、分子ガストロノミー、情

          『にんげんのくに』に吹く風

          苦し紛れの雑記

          ネタが尽きたので、しばらくサボっていました。 仁木稔『にんげんのくに』の感想が全然書き終わらないので、雑記でお茶を濁すことにします。 ・コーヒーをドリップする逆円錐形のあれが壊れたので、買い直した。 以前、コーヒー屋で豆を買ったとき、「フレンチプレス流行ってるけどやめなさい! 絶対にフィルターのほうが美味しいから!」と怒られたのを思い出す。 私は「いえ、フィルター使ってます」と言い出せず、5分くらいお説教を浴びた。 こちらにまったく非が無い状況で怒られるという体験は、案

          苦し紛れの雑記

          『ドキュメント』とは素敵な欺瞞

          最初は「この歌詞にこの映像つけるか普通!?」と思ったんですが、女優さんの表情が印象的で何度も見てしまった。 とくにスパム解除するところ、自分がストーカーだと思われてると理解したうえでやってそうで、冷静な狂気を感じる。 しかも『ドキュメント』ってタイトルなのに、歌い出しがすごい。 今までの僕の話は全部嘘さ つまり、ドキュメントという名前のフィクションだと開始早々宣言しているのだ。 欺瞞じゃないですか~~! さらに、この曲は『DocumentaLy』というアルバムの一

          『ドキュメント』とは素敵な欺瞞

          『悟浄出立』はB面の人々

          中国古典のスピンオフ短編集。 身もふたもないことを言えば、FGOの幕間みたいな感じです。 ストーリーよりはキャラクターに焦点が当たっている。 ハイテンションな雰囲気の万城目作品にしてはしっとりしている。落語家が人情噺やるみたいな感じだろうか。 悟浄出立悟浄自身の話というより、彼が八戒の過去を知っていく話だった。 悟浄は、八戒が本当はすごい奴なのではないかと疑っている。 凡人だと思っていた仲間が実はずば抜けた才能を持っていたという事実は、凡人という自覚がある者にとっては脅威

          『悟浄出立』はB面の人々

          自己紹介

          名前池山 後(いけやま うしろ) 属性- 歴史・民俗のオタク - 喋るのが苦手。イ段をうまく発音できない - よく運転する。回り道が好き。車には詳しくない 読書傾向書籍関係のリンクを貼るときは、たいていhonto(ジュンク堂)の電子書籍です。 近くに実店舗があるのと、ブックツリー機能が便利だと感じるので使っています。 以下、好きな小説です。 - 伊坂幸太郎『死神の精度』 - 伊藤計劃『虐殺器官』 - 乾石智子『魔道師の月』 - 円城塔『これはペンです』 - 小川哲『ゲ

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          『荒神』がいる近世史

          時は元禄。 いわゆる「生類憐みの令」で知られる五代将軍・綱吉の治世である。 舞台は永津野藩・香山藩という架空の藩。 巻頭地図によれば、現在の福島県中部に位置する。 この物語は群像劇として、複数の人物の目線で語られる。 永津野藩の筆頭家老の妹・朱音、香山藩主の小姓・直哉、藩境を越えた農民の少年・蓑吉。 こうした時代劇としての設定のうえに、怪異が出現する。 しかし、それは同作者の『三島屋変調百物語』シリーズのような江戸怪談ものとはまったく違う。 『荒神』の怪異は、妖怪や

          『荒神』がいる近世史

          『最後にして最初のアイドル』は問答無用

           古月みかが大人気アイドルになったのは、ファンのおかげだ。  特に、デビュー当初からのファンである新園眞織の功績は並々ならぬものがある。  彼女は、まだ光ヶ丘高校アイドル部のいち部員にすぎなかった古月みかの才能を見出して以来、その活動を献身的に支えてきた。  古月みかが所属事務所の倒産によって活動休止の憂き目にあった時も、新園眞織は諦めなかった。  新園眞織は、持てる限りの知識、技術、資産、時間、労力を尽くして、古月みかの活動再開を応援した。古月みかの復活に生涯を捧げた

          『最後にして最初のアイドル』は問答無用

          『これはペンです』の文体が脳にしみる

          やべっ。 娯楽と興奮を期待して読むと拍子抜けするが、大学生協で売ってるテキストだと思って読むと面白い。 以前読んだ『屍者の帝国』では、説明過剰な文体がちょっと重たく感じたけれど、本書では思考が冴えすぎて空転しているありさまがよく伝わってくる。 円城塔の文章は、行間を読むのを許さないのだと思う。 たとえば修辞が少ない。 とくに「良い夜を持っている」には体言止めがほとんど無い。 たしか論文書くときって、体言止めしちゃいけないと習ったような気がする。 体言止めは曖昧な表現で

          『これはペンです』の文体が脳にしみる

          『日食なつこ』を推すことにした

          東京喰種のプレイリストに入ってた「水流のロック」で知った。 33曲目です。 最初に聴いた時、倉橋ヨエコが活動再開したのかと思った。 改めて聞き比べてみるとそんなには似てなかった。 倉橋ヨエコの声は太くて泣き笑いしてる感じがするし、日食なつこの声は真面目でまっすぐで憤ってる感じがする。 アーティスト情報を見たら花巻出身って書いてあって、かなりびっくりした。 実家の母に聞いてみたら「エフエム岩手でラジオやってる人でしょ」とこともなげに言われた。 そう思って聴けば、「あのデ

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          『ゲームの王国』に住んでいる

          歴史ものの面白さは、いつ何が起こるか分かるところだと思う。 有名な歴史人物は、物語の中でアトリビュートとして機能している。 たとえば、織田信長が登場した時点で本能寺が燃えるのは分かってるし、石田三成が出てきた時点で西軍が負けるのが分かってしまう。 どんなに順風満帆な描かれ方をしていても、彼らの名前に「滅び」を予感してしまう。 『ゲームの王国』も、一行目の人名を見ただけで悪い予感がする。 ご丁寧にも、登場人物紹介にサロト・サルが何者なのか書いてあるからだ。 物語は視点を変

          『ゲームの王国』に住んでいる

          『冥丁』からいくつかの連想

          Meitei is an ambient producer/trackmaker from Hiroshima, Japan. His music focuses on recreating a "lost japanese mood". 「失われた日本の空気」を再現する音楽。 和楽器メインの華々しい和風BGMじゃなくて、本当に「空気」を再現してる。 虫や蛙の鳴き声とか、何かが軋む音とか、リアルなノイズが入ってる。 私は田舎の古い家に住んでるので、それが現実の音なのかスピ

          『冥丁』からいくつかの連想