村上選手の2022年以降の失速を動物の反応として考察する
「肩に力が入る」というのは、勝ちたいとか、何かを成し遂げたいと強く思うときに現れる。
これは人間が動物であることの証と思われる。
猫が敵に相対したときの姿を思い浮かべていただきたい。
背を丸くして、毛を逆立てて、身体を大きく見せようとする。他の多くの哺乳類が、戦わなくてはならないときには、防御のために全身に力が入り、身体を大きく見せようとする。
人間も戦って勝ちたいと思うときには同じ反応が起こるものと思われる。
私達も、大事なプレゼンの時や、上司に呼ばれて叱責を受けるときなど、後でものすごく肩が凝っていたりするのは、肩に力が入っていたからだろう。
問題は、それが無意識に起こっていることである。
村上宗隆選手は2022年に3冠王になったが、シーズン終盤は失速していた。ホームラン55本を打って、56本を打つ最終戦までの間の13試合はスランプに陥ったのだ。
無意識に56本を成し遂げたいと思う気持ちが「肩に力が入っている」状態にしてしまったのだろう。
思い起こせば、王貞治氏も世界記録の856本目の前はスランプだったそうだ。
村上選手は、悪いことにそのリズムを修正しきれないままWBCに突入し、勝ちたいと思う気持ち、4番の責任、メジャーに認められたいという思いが、さらに「肩に力が入っている」状態を助長した。
さらにさらに悪いことに、目の前で大谷翔平選手のバッティングを見てしまって、完全に自分を見失ってしまった。
「肩に力が入る」とは、具体的には僧帽筋、肩甲挙筋など肩甲骨を持ち上げる筋肉に力が入りっぱなしの状態のことだ。
自分の意志によってコントロールされた筋肉の反応であれば良いが、身体の一部に無意識に力が入ってしまっている状態では、全身の良いパフォーマンスができるはずがない。ましてや上半身の運動の最も重要な部分である肩甲骨周囲となれば、その影響は計り知れない。
近年はメンタルの状態がパフォーマンスに与える影響が重要視され、試合に臨むときに「楽しんで」とか「リラックス」などと声をかける。
村上選手に限らず、ベストパフォーマンスを目指す選手は、まずは気楽に、勝敗よりもゲームを楽しむメンタルを維持し、身体に悪い影響を及ぼさないようにすることが最も重要だろう。
ただし楽しみ方は人それぞれだ。「楽しんで」と言われて楽しめるなら苦労はない。
責任感も、勝敗へのこだわりも、あらゆることが人それぞれ。
だから、とにかく、楽しくてしょうがなかったあの頃のあの気分を原点とするということだけ忘れないことが大事なのだ。