初めての海
休みの日が来ると
よく近くの海へ行き何をするでもなく
ただ砂浜をひたすら歩く
海が好きだ
その日は友人と海の近くへ遊びに行くからと楽しみにしていた
昼食を済ませてから少し歩こうということになり
海沿いの堤防に登り、海を眺めながら歩く
ここの海は湾の中にあるので
太平洋に面してる地元の海とはまた違う風景
風は吹いているものの寄せる波は穏やかで
砂浜がほとんど無い
小さめの風車がいくつか立っていて
海風を受けキイキイと音を立てて回っている
目の先には工場のような建物がいくつも見え
海の周りの風景ももちろん違う
地元の海も内海側はこんな感じだなと思いながら
砂浜に打ち寄せられているのはアオサなんだろうか
きれいな緑色
びっくりするほどたまっている所もあったけれど
腐っているような臭いがすることもなく
磯の香りがする
その香りでさえいつもの海とは違っていた
友人とは久しぶりに会うので
お互いの近況報告に花が咲く
ここ数日ですっかり秋めいて
吹いている風は爽やかで心地良く
日向を歩いていても辛くないくらいの気温になった
さすが彼岸だなと思う
暑さ寒さも、と
昔の人はよく言ったものだ
初めて行く海
初めて歩く道
初めて見る海
初めての海風
初めての風景
初めての香り
たくさんの初めてを楽しみながらも
次の休みにはまたいつもの海を歩きたいな
なんて考えていた
堤防を歩きながらずっと“栞”が頭の中で流れていたので貼っておく