あまり評判が良くないけど好きな映画のこと
1.「ヒアアフター」(クリント・イーストウッド)
このあいだ見た黒沢清監督「Chime」の中で、料理教室が印象的な舞台として出て来るのだが、
あれにはクリント・イーストウッドの「ヒアアフター」の料理教室のシーンの影響がある、ということを黒沢監督が語っているインタビュー記事を読んだ。
それで、そういえば「ヒアアフター」のパンフレットで黒沢清監督と青山真治監督が対談していて、その中で料理教室のシーンについて語っていたな、と思い出した。
「ヒアアフター」の料理教室のシーンは、特に恐ろしいことが起こるわけではなく、マット・デイモンとブライス・ダラス・ハワードが知り合うシーンだったと思うのだが、そこに何かただならぬ気配を感じ取った、ということなのだろう。
「ヒアアフター」はクリント・イーストウッド監督作品の中では評価が低い映画だ。
死後の世界を扱った作品ということもあって、なんとなくはっきりとしない、ひとつの方向にグイグイ引っ張っていくようなタイプの物語ではないという理由もあるかもしれない。
しかし私は大好きな映画で、滅多に買わないパンフレットを買ったほどである。
そこに黒沢清監督と青山真治監督の対談が載っていたわけだ。
こんなふうに世間の評判があまり良くない作品。
その監督を高く評価する人たちの間でも人気がない作品に惹かれることがたまにある。
2.「ダークシャドウ」(ティム・バートン監督)
たとえばティム・バートン監督の「ダークシャドウ」
ジョニー・デップ
ミシェル・ファイファー
ヘレナ・ボナム・カーター
クロエ・グレース・モレッツ
クリストファー・リー
アリス・クーパー
というびっくりするほどの豪華俳優陣をとり揃えて、監督が好き勝手やっているような楽しい映画なのにどうも今ひとつ人気がないらしい。
アメリカのTV番組のリメイクで、日本人にはなじみがない(私も元のTV番組は知らない)こともあるかもしれないし、基本悪ふざけなので、「シザーハンズ」とか「ビッグフィッシュ」みたいな詩情を期待する向きには受け入れられないのはわかるのだが・・・。
3.「マジック・イン・ムーンライト」(ウディ・アレン監督)
ウディ・アレン監督の「マジック・イン・ムーンライト」もその一つ。
超能力や霊能力をはなから信じていないマジシャンの男が、ある霊能力者の女のトリックを暴いてやろうと近づくのだが、やがてその女と恋に落ちてしまって、という軽いコメディを、マジシャンにコリン・ファース、霊能力者にエマ・ストーン、という布陣でウディ・アレンが撮るのだから面白くならないわけがない。
実際「これぞウェルメイドなラブコメディ」という感じの楽しい作品に仕上がっているのだが、どうも評判は芳しくないらしい。
ウディ・アレンにはもっとひねったものを期待する人が多いのだろうか。
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で、こういうふうに世間であんまり評判が良くないのに自分はかなり好き、という映画があった場合、「もっと評価されてもいいのに」と残念に思う気持ちももちろんあるのだが、
逆に、
「ああ、君たちにはこれの良さがわからないんだね、いいんだよいいんだよ、君たちにはまだ難しいよね」
みたいな、ちょっと優越感めいた気持ちを抱くことが無いこともない。
鼻持ちならない上から目線だが、誰に言う訳でもないのだから許してほしい。