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カミュ『ペスト』

カミュ『ペスト』(1947)
宮崎嶺雄 訳


近過去を振り返ることがたまたま続いている。

2020年からのコロナ禍で俄に脚光を浴びた古典だったが、それまで読んだことはなかったので文庫を購入した。
思い起こせば、ちょうどこの時期に放送が始まった高橋源一郎「飛ぶ教室」も最初の方で『ペスト』を取り上げていた(それこそ初回だったか?)。

あの時期は一体何だったのだろう。
一言で簡単に言い表せるほど自分の中でもまだ考えがまとめられていない。
いずれまた、遅かれ早かれ同じような事態がやってくるだろう。
そのときまでに自分は準備し、そして対処できるだろうか。





この小説だけは2020年のうちにと思っていて、なんとか読了した。

感染症の突発的な大流行による市の封鎖、医療従事者たちと市民の先が見えない苦闘。

そのような目下の状況に、翻弄される人と、自らを根本から見つめ直す人が出てくる。

「ペスト」を他に置き換え読み解くこともできる構造になっているし、現在の事態は見事なまでに今作の変奏曲になっている。

いつの時代も変わらない、普遍的な様相なのか。

物語の持つ強さを実感させられた一年。
最後にこれを読めて、ほんの少し現状の理解に近づけた気がする。


(2020年12月20日)




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