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映画『アンドレイ・ルブリョフ』
アンドレイ・タルコフスキー『アンドレイ・ルブリョフ』(1967、ソ連、182分)
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渋谷ユーロスペースでは、毎年のようにタルコフスキーを特集している。
上映作品を選定している人たちにとっても、最重要作家の一人と位置付けられているのだろう。
この歴史大作では、15世紀のイコン(聖画像)画家、アンドレイ・ルブリョフの一生を描く。
共同脚本には、先頃『親愛なる同志たちへ』が公開されたアンドレイ・コンチャロフスキー。
いわゆる偉人伝、伝記作品ということになる。
二部構成で、重厚な語り口だが、長い人生の中では劇的な出来事も起きる。
特にタタール人たちの襲来により、町はおろか教会まで壊滅させられるのは衝撃的だ。
このとき致し方なく取った行動により、長い悔悟の期間に入る。
後半では、巨大な鐘の建造を指揮する少年に焦点が当てられる。
時の権力者の体面がかかった事業で、失敗すれば命はない。
不安そうに見守る中、彼がどれだけの重圧に耐えていたかを悟るとき、アンドレイは遂に自分の使命に取りかかる。
自分は宗教心がないどころか批判的な立場の人間なので、最後だけカラーになる聖人画の接写も、浄化作用みたいなものは感じられず淡々と眺めていた。
が、同時並行で活写される西暦1400年頃からの民衆のあり方も興味深かった。
この時代、人々は何を思い、どのように生きてきたのか。
気球をこしらえ、どこまでも飛んで行こうとしたり、道化師を囲んで憂さ晴らししたりする。
宗教や信仰の重みも、今とはかなり違っていただろうとは予測できる。
タルコフスキーらしい、雨、川や沼、泥など水にこだわる描写に加え、火や炎に対する畏れもあったように思う。