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#181 人生で一番驚いた年賀状の出し方


「年賀状出し行くついでに、スーパーでなんか美味いものこうちゃる」

義父の言葉に、正直めんどいな…と思いつつ、妻と一緒に古いワーゲンに乗りました。

「さきに郵便局に行くからの」

田舎なのでまぁまぁな距離があります。ポストも少ないです。投函しても回収が遅いので、結局は郵便局に出すのが吉なのです。


信号待ちになりました。

チッカッチッカッチッカッ…
乾いた音が冬の寒さを引き立てます。
車内でも息が白いです。


後部座席でうとうとしていると、義父が助手席の窓を全開にしました。このクソ寒いのに、なんだと思っていると、突然…

「うおいっ!!おーーいっ!!」

義父が叫び始めました。あまりの大声に、事故でも起きたのかと、私と妻の肩がビクッとなりました。

「ハッ!?」

声の先に、バイクのお兄さんがいました。横の車から突然大声を出されて驚いています。こちらの声が聞こえにくいのか、フルフェイスの右耳側を少し浮かせました。

「おーーい!!これぇ!!!」

義父は、助手席の窓へ腕を伸ばしています。

「ハイーッ!?」

バイクのお兄さんは、状況がよく飲み込めないのか、何か聞き返している様子です。

「青になる、青に!!これぇ!!」

箱根駅伝のタスキかと思いました。

「ハイッ!?」

バイクのお兄さんは、反射的に何かを受け取りました。そのまま、義父の車は発進しました。まさに、一瞬の出来事でした。

後ろを振り返ると、右手に年賀状を持ったまま、呆然と立ちすくんだお兄さんがいました。

「ラッキーやったのぉ!!」

私と妻は、郵便局員さんに手を合わせました。

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