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イギリスのAIティーチングアシスタント"Aila"を使ってみた
直近3回は韓国のAIデジタル教科書の話題を書き、アクセスも多くなかなか反響がありました。
生成AI×学校教育の海外事例をちょこちょこ調べ始めており、今回は英国の生成AI×学校の教育について簡単に共有してみたいと思います。
今日は別件の仕事があり(休日勤務、、涙)、1時間1本勝負の時間制限で調査しながら書いてみます。(なので誤字・脱字や読みづらいなどはご容赦を、という言い訳)
英国で「教師不在でAIが学習指導」の試み
今週、気になったのは以下の記事。
AIを教師代わりとし、16歳の生徒が受ける義務教育修了時の全国統一試験(GCSE)の主要科目を学習を試みている、という事例。実態としては、教師不在ではなく、コーチングの観点では配置されているようで、いわゆるティーチング部分をAIに代替させている事例なのだと思います。
以前、"環境を通して行う教育とデジタル"というタイトルでnoteを書いた際に、「スラム街でもネットがあって褒める人がいれば」というスガタ・ミトラ氏の研究を紹介しましたが、それを学校で、かつ公的試験をターゲットにやっている、というざっくりイメージ。
この記事の本筋とは関係ないのですが、個人的に気になったのは以下の部分。
キア・スターマー首相は今月、英国を「AI超大国」にする方針を表明。AIは授業計画の立案や添削にも役立ち得るとの考えに基づき、政府主導の下で、ナショナル・カリキュラムに沿ったAIティーチングアシスタント「Aila」が開発された。
政府主導の下で、ナショナル・カリキュラムに沿ったAIティーチングアシスタント「Aila」が開発された?
なんか気になるので、そっちを調べてみます。
AIティーチングアシスタント「Aila」
もうこういうの調べるのは生成AI。自腹で200ドル払っている(辛い)ので、使わないと損。ということでChatGPTのDeep Researchで調べてみる。
詳細は上記ですが、要約すると以下です(この要約も生成AIですが)。
背景と政府方針
英国政府は教師の業務負担軽減と教育の質向上を目的にAilaを開発。
AIを教師のアシスタントとして活用し、授業計画や採点支援を行う方針。
3百万ポンド規模の「AIコンテンツストア」構想でAIの学習データを強化。
実証研究
試験運用では教師の業務時間が週3.5時間削減。
ロンドンの私立校で「教師不在のクラス」導入実験が実施。
教師の懸念点は「AIの正確性」「バイアス」「安全性」。
成果と効果
教師の時間節約とワークライフバランス改善に寄与。
国家基準に準拠し、信頼性の高い教材生成が可能。
生徒の学習意欲向上が報告され、「個別最適化」が強み。
コストと負担
政府が開発資金を負担し、教師は無料で利用可能。
運営費も公共投資で継続予定、学校負担はなし。
今後の展望
画像生成やAPI連携を予定し、機能を強化。
教師の役割は「AI補助を活用するファシリテーター」へ変化。
AIと人間教師の共存を前提に、慎重に導入拡大を進める方針。
政府(より正確には外郭機関であるOak National Academy)が開発。先生をアシストする生成AIが無料で使える、とのこと。うーん、これはすごい。使ってみたい。
Deep Researchでは調べられなかったですが、粘って「Aila」の試用ができないかを探ってみます。
「Aila」を使ってみる
開発しているOak National Academyのウェブサイトを漁ってみたら、「Aila」のページを発見。
ユーザ登録すると試用ができる模様。お、これはチャレンジしてみよう。(ちなみに英国の先生であることの認証がされると無制限で使え、そうでないと3レッスンに限られる模様)
上記から誰でも利用可能なようなので、気になった方はご自身でチャレンジしてみてください。
「Aila」でできることの具体
最初の画面は以下のような感じ。
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入力例が「History • Key stage 3 • The end of Roman Britain」。「歴史・中学校・ローマ帝国の終焉」って感じなので、教科・学年・単元みたいなのを入れる感じ。
これならフリーテキスト入力ではなく、選択肢から選ぶ方式にしてほしい気もしますが、、、小6・理科での「月の満ち欠け」みたいな授業をやることを想定して入力してみます。
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入力するとこんな画面に。
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左側で生成AIと対話していくと、右側でカリキュラムやコンテンツができる、という作りのようです。(ここからは翻訳差し込むのが面倒なのでブラウザで翻訳)
左側の生成AIの選択肢がなんか的外れな感じですが、続けてみます。
お、単元計画が自動生成された。
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学習目標、学習の流れ、必要な知識、学習のポイント、が生成。これらは選択肢で変更が可能になっています。
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一旦、提案してもらったままで続けてみます。
授業で確認すべきこと、キーワードが設定されます。誤って理解してしまう可能性がある部分、把握しておくべき単語の設定の模様。ここもクラスの状況に応じて追加・修正ができます。
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続けると、予備知識の確認のためのレディネステストを生成。
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さらに続けると、1単位時間の指導略案的なものが生成されます。
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ここでスライドやワークシートのようなものが記載されていますが、ダウンロードが可能なようなのでそれは後ほど。
さらに続けると2時間目、3時間目と指導略案を生成。この間もチャットや選択肢で内容を調整可能です。
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最後に終了クイズ=確認テストを生成。これで完成。
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生成した授業計画のリンクもつくれたので貼っておきます。
そして生成されたコンテンツはダウンロードが可能。
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例えばスライドやワークシートはこんな感じで自動生成されています。
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具体的なファイルを見たい方は以下で。
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オープンソースで公開している
使ってみた感想は「教師用指導書を自分のクラス向けにカスタマイズするツール」という感じ。指導案と簡易コンテンツ作成ツール、とも言えます。
これを国費でやっているのが英国はなかなかすごいですね。
しかも調べてみるとオープンソースにして公開している。マジで偉い。
英国のEdTechに「Aila」を組み込み広がっていくことも想定しているようです。国費で無償利用しつつ、プラットフォームとしても広げようとするあたり、うーむ、この辺りは本当に見習いたい。
肝はカリキュラムの構造化と公開
生成AIを活用するうえで、重要なのはハルシネーション(誤情報)対策。特に教育分野での利用では「誤った情報で学ぶ」はダメージが大き過ぎます。
Ailaはこれにどう対策を打っているのか。以下の記事から。
Ailaを開発しているのは英国政府の外郭機関であるOak National Academy。上記記事では、英国政府はOak NationalにはAcademyに対し、カリキュラム開発として80億円もの予算を投じています。Ailaの開発費としても3.5億も。
策定しているカリキュラムの内容は、大まかには以下で確認できます。
日本のイメージでざっくり例えると、学習指導要領を整理し、教科書単元を公開し、そこでの学習目標や内容を公開しているもの、です。
このカリキュラムをベースにしていることで、AIの精度を向上させ、かつハルシネーションを抑制しているのです。
おわりに
おっと、あと5分で1時間なので締めないといけないです。
英国政府がつくっているティーチングアシスタント「Aila」のイメージは伝えることができたのでは、と思います。
韓国のAIデジタル教科書もそうですが、世界的にAIシフトが活発になっています。
文部科学省が生成AIの利活用に関するガイドラインを出しており、それ自体はめっちゃ良いのですが、ガイドラインを出すだけで良い状態ではなさそう、もっと検討も行動も速度をあげないと致命的な差ができそうな予感がします。
日本での教育分野での利用はどうしていくのか、を考え・行動していかねば、と改めて感じました。
その中で特に気になった部分はカリキュラムの構造化と公開の部分。
日本の場合は学習指導要領コードは付与されているものの、システム利用に適した構造化がなされていません。
また、教科書単元は公開されているもののフリーで使えるものになっていません。
この辺り、今後のデータやAIを用いたデジタル学習基盤に世界的に移行していくうえで、解決するべき大きな課題になりそうです。
昨年末から次期学習指導要領の検討が始まっていますし、デジタル教科書の在り方の検討も始まっています。ここ最近何度も書いてしまっていますが、上記辺り、カリキュラムの構造化と公開への考慮は必須だと思うので、自分なりにも行動してみたいと思います。
お、1時間ピッタリになったので今回はこの辺で。
ではまたー。