教育はデジタルだけで変わらない
色々バタバタで2週休んでしまったので、今回はリハビリかねて読みやすい(書きやすい)ショートに。
また今回から毎週書けるよう頑張りますー。
デジタルによって教育は変わる?
今回はちょっと前に内々で議論していたことを、メモがてらnoteに書いてみます。
デジタル(ICT・テクノロジ・データと言い換えても)によって教育は変わるのか、という話。
これまで自分がnoteに書いている流れだと「変わる」というスタンスで、それ自体は変わりありません。
そのうえで議論していたのは「教育のデジタル化に関わる人は、「これまでの教育が変わる」ということについて、デジタルの価値を安易に信じ過ぎていないか」ということ。
ざっと上記について整理すると、論点は以下の3つあたり。
デジタルは既存からの転換より、既存の強化のほうが容易
なので人の意思、指し示す方向性がなくては変わらない
どこにどんな価値があるのか、の研究が全然足りていない
それぞれ書いてみます。
デジタルは既存からの転換より、既存の強化のほうが容易
"教育の転換"というと、以下のような言葉が表現されることが多そう。
教師主導 ⇒ 生徒主導
コンテンツベース ⇒ コンピテンシベース
系統学習 ⇒ 経験学習
客観主義 ⇒ 構成主義
履修主義 ⇒ 習得主義
デジタル(ICT・テクノロジ・データ)があると、これらを左から右に転換できる、という話。
一方で、実はデジタルは左側との相性もとても良い。むしろ左の強化の方が容易だったりする。例えば以下。
◆教師主導の強化
・授業支援システムやGoogle Classroomなどを通じて学習者の進捗状況を詳細に管理
・オンライン授業を用いることで教師側が一方向で授業進行するスタイルをより多くの学習者に届けられる
◆コンテンツベースの強化
・高品質なコンテンツを電子黒板で拡大提示・GIGA端末に一斉送信
・ドリルなど特定コンテンツを反復的に学べるアプリを授業に組み込む
◆系統学習の強化
・各学習のステージを順序立てて提示し、次の内容に進むには特定の基準を満たす必要があるよう設計
・学習者の進捗を分析し、理解度に応じて次の課題を提示
◆客観主義の強化
・各質問に一意の正解を設定し、学習者が正しい知識を記憶する
・統一の学習内容を大規模配信、学習者全員が同一の知識体系にアクセス
◆履修主義の強化
・対授業に参加判定をデジタルツールの利用状況から自動化
・学習管理システム(LMS)で、各課程の課題提出・履修状況を可視化
ざっと思いつく限り書いてみたので「必ずしもそうじゃないよ」という声もあると思います。
が、現在利用されているアプリって上記がメインのものの方が多くないですか?
個人的には、デジタルって普通にしていると、むしろ左側の学びの強化に使われるものなんだと思っています。
もちろん「iPhone=スマホの登場によって社会構造が変わる」というテクノロジ起源での構造転換の例もあります。
が、それ以上に「これまでの強化」で使われる例、つまりはデジタイゼーション・デジタライゼーションの例の方が圧倒的に多いのが実態です。
なので人の意思、指し示す方向性がなくては変わらない
そうなるのは、従来の方法が悪いものではないから。
教師主導 ⇒ 生徒主導
コンテンツベース ⇒ コンピテンシベース
系統学習 ⇒ 経験学習
客観主義 ⇒ 構成主義
履修主義 ⇒ 習得主義
上記は左右の二項対立ではなく、グラデーションであること。さらには両立させる止揚(アウフヘーベン)を求めるべき事項なのだと思います。
とはいえ「二項対立じゃない」とか言っていると、一向に変わらないのも現実。グラデーションといっても、左ばっかり濃いのが実態。
なので、右を濃くするような意思を見せること、方向性を指し示すミッション・ビジョンを掲げることが重要。
学習指導要領なり、各学校設置者による教育振興計画なり、各学校の学校経営計画なり、各クラスの学級目標なり、まずは右に相当する目標を掲げていることがベースになってくる、と感じています。
そして目標だけなく、その手段の運用もとても大事になってきます。
どこにどんな価値があるのか、の研究が全然足りていない
一方で、ではデジタルはどこにどんな価値があるのか、の研究は全然足りていない印象です。
その状態では右の色濃くしていく手段の運用が設計できない。
例えば「教育データの活用」みたいな話でもスタディログによって右の「生徒主導」「コンピテンシベース」「経験学習」「構成主義」「習得主義」はどう実現するのか、みたいなことって全然研究できていない。
「教育ダッシュボード」という話も概念的な効果が一人歩きしている感があります(自分もこんなの書いている身なので天唾ですが、、)。
昔昔の100校プロジェクトのように、100人の研究者に1億円/1研究(3年)とかで、日本のデジタル教育への研究観点の予算を増やしてみたら、と思ったりしています。
1人の研究者に3年1億は科研費ベースだと超破格。
初年度4000万・2年目3000万・3年目3000万とかにして、1年毎にステージゲート審査して継続は半分だけ、みたいなノックアウト型のエコスシステムとかどうでしょうか。
こうすれば100件100億じゃなく62.5億で済みますし、めっちゃ成果あげるために研究頑張るんじゃないかと。
DXハイスクールより費用対効果ありそうな気がしますが、どうっすかね?
おわりに…
ということで「教育はデジタルだけでは変わらない」でした。
いつもより分量抑えて読みやすくしてみようという試みでしたが、どうでしょうか?
最後の研究に予算が足りていない、は心からそう思っているので、何かしらの形で実現したい事項の1つではあります。
大胆に大きく予算を使って大きなリターンを狙う、も大きく、どうせならノックアウト型にして効果を高めつつ、エンタメ化したいぐらいです。
次はちょっと技術寄りの話でも書こうかな、と思っています。来週になったら状況変わっているかもですが、、
ではまたー。