「いつか本を出したい!」という人が考えておくといいこと
移住をして、別業界の方と話す機会が増えました。
そんな中でもよく聞かれる質問がこれです。
「どうすれば本は出版できるの?」
異ジャンルの方からすると、出版とはブラックボックス。誰もが商業出版すればいい、とまでは思いませんが、もしかすると出すべき人に情報が閉ざされているのかもしれません。適切なフラット化は、未来の社会をつくる、一つのアプローチになるかもしれない。
そんなことを思って、出版社の「中の人」として、10年間、書籍編集の仕事についてきて、「大事にしたほうがいいかも?」と思えることを書きました。
「2022年こそは本を出版したい!」と目標を掲げている人もいるかもしれません。ぜひご参照ください。
1・商業出版とは?
ここでは商業出版の定義を、出版社からオファーを受けて本を書く。著者に持ち出しがない。本屋に本が並ぶ、と定義します。
今やAmazonで著者が直接、原稿を電子化できる時代です。
ブログのように書きたいことを自由に書く。もちろんそのことが持つ価値は計り知れません。誰かに頼まれるのではなく、止むに止まれぬ理由で書く。その衝動が力を持つのはいうまでもないことです。
一方で、自費出版ではなく、商業出版をめざすときに考えておきたい大きな違いは、「読者」の存在です。
1・まず、企画書を書いてみる
出版をめざすときに、用意しておきたいのが、出版企画書です。
WEBを検索すると、出版企画書のフォーマットや、抑えるべきポイント、さらには出版社の編集者がどこに着目するか、などが事細かに書かれています。
ので、ここでは項目など、細部には踏み込みません。
ひとつ、言えることは、「まず企画書の項目を埋めていって欲しい」ということです。そうすることで、頭の中でぼんやり考えていたことが言語化され、足りないものも見えてくるからです。
2・企画書の壁
項目を埋めていったときに、最初にぶつかる壁。それは、
「これが本になるのか?」という違和感です。
この違和感が生まれてきたら、良い兆候。
ここで手が止まった方に、ぜひ考えてもらいたいことがあります。
その本を読む人はどんな人でしょうか?
どんな悩みを抱えて本を手に取るのでしょう?
どんな会社に勤めて、どんな生活を送って、家族はいるのか?独身か?
休日は何をしている人か?どこに住んでいるのか?
そんなことをイメージしていくと、漠然としたどこかの誰かではなく、輪郭をもった知り合いの顔が浮かぶのではないでしょうか。
「ペルソナ」という言葉がありますが、何もそんなマーケティング用語を使わなくても、あなたが書きたい・届けたい、とおもう初期衝動は、相手のことをイメージするだけで、形になってくるはずです。
3・自分の「書きたい」と読者の「読みたい」の重なりを探す
ここで大切なのが、書きたいことを書く、から、読者の読みたいことへと重なり合わせる、という作業・発想です。
もしかすると「出版したい」という想いは個人的なもので、誰かに向けて始まったものではないかもしれません。
けれど、企画を通すだけではなく、文章を書く中で、必要不可欠になってくるのが、相手(他者)の存在だと思います。極端なことを言ってしまえば、読み手のいない本には、存在価値はないのではないでしょうか。
もちろん、文芸のような、内面を書き記す、読まれることを意識しないことで生まれる商品をあります。ただ、それであっても、どこかで「商品化」の工程を経ているからこそ、読者の元に届けられるのです。
ここで注意したいのが、読者に迎合するのではなく、あくまで、重なり合わせる。
書き手のあなたが伝えたいこと、もっている知識やスキルや知恵を、どこか困った人のために差し出す。
そんなイメージで企画書を眺め直してみてください。
おそらく、編集者は、どのくらいの重なりがあるかを、直感的に、定量的に、判断しているのだと思います。
twitterのフォロワーが多いというのは実にわかりやすい定量的な数字ですね。ただ、それだけで、本が売れるかどうかはわかりません。SNSで読者との交流に優れているからといって、悩みを解決できる本になるかは担保されていないからです。
4・書店に足を運ぶと見えるもの
少しスキル的なことに話を振るならば、ここで考えて欲しいのは「相場観」ということです。
ブックライターの上阪さんが、御著書の中で触れていますので詳細はそちらを参照ください。
著名ブロガー・ちきりんさんの「マーケット感覚」も参考になるかもしれません。
今、どんな本が売れているのか、書店の一等地に並んでいるか。
そしてそれを「読者である」自分はどのように受け取るか。
なぜ、その本が売れているか。
どんな読者の深層心理がその本を手にとらせているのか。
流行やトレンドを追う必要はありません。
もちろん、ベストセラーの二番煎じも、アンチ本もいりません。
そうではなくて、想像して欲しいのです。読者が本を手にとった動機と、その本をめくるモチベーションを。
そのことを考えて、書店を周り、1ヶ月も熟成して考える。
その後に、自身の企画書に立ち戻るならば、何か違う見え方がしてくるはずです。
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