見出し画像

『中学受験社会 思考力を身につけるレッスン帳』作成話




10/5に初の著書『中学受験社会 思考力を身につけるレッスン帳』が出版されました。そこで、作成に至った経緯や、作成して感じたことなどについて述べたいと思います。

1,作成の依頼

(1)Twitterを始めた動機

 元々Twitterを始めた理由に、「自分の作った教材を出版して売りたい。」というのがありました。Twitterを始める前からDL販売サイトで時事問題集を販売していたのですが、情報発信をしていなかったこともあり、全く売れませんでした。そこで、多くの人が見ているTwitterなどのSNSを通して情報発信すれば関心が高まり購入してくれるのではと思いTwitterを始めました。ただ、そのDL販売サイトは時事問題集を出そうとする直前に閉鎖されてしまうんですけどね(この辺のことは以前インタビューを受けた東京受験.jpさんの記事をご覧下さい。https://tokyojyuken.jp/2020-social-studies-with-tyuukisya/「【前編】2020年度中学受験「社会」攻略~「中学受験の社会はある種総合力が試される教科である。」~中貴社さんインタビュー」。東京受験.jpさんにはそれ以前にも今年の1月に私のTwitterを紹介していただいたので、今回の出版とは無関係ではないと思っています。)
 DL販売は一旦諦めることになりましたが、生徒には取り組ませていましたし、発信し続けていれば何かが起こるのではないかと考え、Twitterを始めてから夏に思考力問題を、秋~冬にかけて時事問題をTwitterで紹介していくことにしました(これがライフワークになってしまい、3年目になってしまいました)。幸い、時事問題については購入していただいた方もいらっしゃり、少しずつ認知度が上がってきたのかなと思っていました。

(2)作成の依頼

 そして2月、中学受験が終わって一息ついた頃にTwitterのDMにエール出版社から、社会科の問題集を出すので書かないかというお話を頂きました。私としては目的が叶うと思い、二つ返事で引き受けました。すると、エール出版社から出したい本の企画書を出して欲しいと返信が来ました。
 正直、少し焦りました。おそらく出版社側から「こういうのを出したいので、そうした問題集を作って欲しい」と具体的な要望がくると思っていたのに、まさかこちらが企画立案することになるとは思ってもみなかったからです。こうして中学受験が終わった後の束の間の休息が終わり、悪戦苦闘(ただとても楽しかった)の日々が始まりました。

2,問題のコンセプト作成

(1)コンセプトの作成

 DMでのやりとり後、どのような問題集を出すことが出来るか考えました。そして、現在の自分が作れそうなのは以下の3つだと思いました。

①思考力(AL)問題集
②時事問題集
③白地図ノート

 ①は夏に、②は秋~冬にTwitterで投稿していたので問題作成の経験値があること、③は個人的にこういう白地図ノートがあったらと思いながらコツコツと作成したのでどれも作れると思いました(③は未完です。いつか形に出来たらと思いますし、投稿するかもしれません)。
 考えた末、出そうと思ったのが①です。理由は以下の通りです・

・②は新型コロナウイルスの状況などで例年に比べて時事問題の予想が難しいこと。また出版時期が秋から冬に限定されてしまうため、初めての著書が締切に追われるものにするのはリスクが高い(毎年投稿している時事問題は自分の目論見よりもはるかに遅く完成しています)。

・③は未完なこと。また地形の範囲など慎重に取り組まなければならないものが多く、リスクが高いこと。そしてエール出版社は私のTwitterを見て依頼しているのであり、投稿したことのないテーマの問題集を予想(期待)していないと考えたこと。こうしたことから作成のリスクが高い。

・①はこれまでの作成実績があるので作りやすいこと。またエール出版社が出している『論述でおぼえる最強の社会』に近い構成の問題集を作れると考えたこと。そして、近年多様な解答が考えられる問題が増えてきていることから、これからの需要にあった問題集になると考えたこと。

以上のことから①の思考力(AL)問題を中心とした問題集を出すことにしました。

(2)入試問題を使うか自作するか

 思考力(AL)問題を出すことは決まりましたが、次にどのような問題を載せるかで悩みました。これまでTwitterでは実際に入試で出たものと、それを基に私がアレンジした問題を紹介していたからです。前者はこれからの社会科の傾向を示すことができ、問題集のコンセプトにあったものに出来ます。後者は多様な解答が考えられる問題にアレンジすることができ、面白い内容を扱う問題集に出来ます。どちらにも利点があるので悩みました。
結局は思考力(AL)問題がこれから来る可能性が高いことを理解している人が、受験関係者含めて少ないことから、今回は思考力(AL)問題の導入の役割が強い方がよいと考え、実際に出題した問題をまとめた問題集を出すことにしました。
 そして、以上のコンセプトをエール出版社に伝えたところ、OKの許可を頂き、作成に入ることにしました。

3,ラインナップの作成


(1)問題のラインナップの作成


 こうしてコンセプトを定めたことで実際に作成に入ることになりました。まずは問題集としてどの問題を載せるか考えることにしました。分量としてここ今年と去年の問題を使えば1冊分になると思い(2年前の問題を集めなかったのは、以前リスト化しているので後でやれば大丈夫と考えたのもあります。そして以前作ったことが幸いすることになります。)、入試問題を集めることにしました。そしてある程度の問題を集めたのですが、どのように分類・配列すればよいかで悩むことになりました。
そこで、大きく2つの種類に分類することにしました。

A:問題分野
 さらに分けると以下の通りです。
①地理分野
 さらに細分して
1)地形(災害など含む)
2)産業
3)地域

②歴史分野
 多様な解答が考えられる問題を多く集めるのが難しいので載せるべきか考えましたが、歴史分野だけ掲載しないのもどうかと思い、結局は史料分析など深く考えさせる問題を載せることにしました。

③公民分野
 さらに細分して
1)公民全般(憲法・国政・地方自治など)
2)国際社会
3)SDGs
 個人的に分けて入れたかったのがSDGsです。SDGsは注目しているジャンルであり、近年の中学受験でも注目されています。また、SDGsは17の目標に向けた具体的な取り組みを考えることが出来ることから、思考力(AL)問題のテーマとして最適だと思ったからです。

もう1つがこれです。

B:要求内容
①課題発見
②課題解決
③AL(アクティブラーニング型)

 ③は①と②を合わせたものです。つまり、①の発見した課題について②の解決策も合わせて考える、自問自答形式で考えを深めていく問題です。こうした問題は今後出題が増える考えると思い、1つの独立した大問にしました。
 そして配列ですが、地理・歴史・公民の3分野に加えて最後にAL問題を加える形にしました。またその際に地理分野を大きく2つの分野に分けることにしました。こうして分けて作ったのが以下のラインナップです。

第1章 地理地形
第2章 地理産業
第3章 歴史分野
第4章 公民分野
第5章 国際社会
第6章 SDGs
第7章 AL問題

 これは本書の裏表紙に載せていますので是非確認下さい。

(2)解答の作成

 問題を分類・配列後に考えたのが解答です。問題集のコンセプトが「多様な解答が考えられる」ですので、解答が1つだけというのはよくないだろうと思い、歴史分野の一部を除きほとんどの問題で解答を複数作成することにしました。その際に悩んだのは学校が解答を公開している問題の解答を作成することです。理由としては3つあります。
 1つ目は、解答の1つは学校が公開しているものを利用したのですが、もう1つは自作にする必要がありました。しかし、学校が公開している解答は当然完成度が高く、多くの人がそう考えるだろうと思える解答です。そうした解答と同レベルの解答を別の視点でまとめるのは苦労しました。実際、解答を見る前に自分なりに解答を考えたのですが、ほとんどが方向性で学校と大差ない解答になっていました。
 2つ目は解答の数です。本書は読者への負担も考えて「2つ答えなさい」といった複数解答を求める部分をカットしています。ただ、こちらとしては問題で求めている解答数と同じというわけにはいかないと思いました。つまり、「2つ答えなさい」とあった問題であれば最低でも3つは載せるようにしました(それ以上に作ったものは筆が乗ったものと思って結構です)。こちらも作問者が2つ位が丁度よいと考えたものですので、他に作るのに苦労しました。
 そして3つ目は学校の解答の分量に合わせることです。学校の解答例は簡単にまとまっているものもあれば100字以上の長文記述のものもありました。前者については比較的簡単に別解を作ることができました。問題は後者です。別解を作るにしても学校側の解答に出来るだけ合わせるべきだと思いましたが、記述量が多い問題はそのせいで苦労しました(解答例を見て長文だなと思ったら、学校が公開している解答も長かったんだな思って結構です)。そのため、学校の解答の対句表現のような解答にして体裁を合わせるようにしました。
 こうして、2019・2020年入試の問題をベースにした思考力問題とその解答例を作成しエール出版社に提出しました。ただ、その後も産みの苦しみを味わうことになるのですが・・・。・

4,初校~校了まで


(1)問題の追加


 原稿を出してからはしばらくエール出版社から連絡が来ず、何も出来ませんでした。コロナ禍もあり、すぐに出版できない状況だったからです。エール出版社から連絡と初校の原稿が来たのはおよそ2ヶ月後です。その中に「原稿用紙○○枚分追加して欲しい」という言葉がありました。自分の目算よりも分量が少なかったのです。どう対応しようか考えましたが、もう1年分すなわち2018年入試の問題を入れて対応することにしました。以前作っていたことがここで幸いしたのです。
 こうして追加問題を作成したのですが、どこに問題をはさむかで苦労しました。こういう作業では間違えてはさむと大変なことになります。自分の性格上、こうした作業が苦手なので、あの時は本当に慎重にやっていたことを思い出します。幸いエール出版社のチェックでも問題が無かったので事なきを得ました。

(2)タイトルの決定

 最後に待ち受けていたのが締切とタイトルです。8月の終わりにはAmazonではすでに10月に出版予定と載っていました。その時はまだタイトルが正式に決まっておらず、Amazonでも「(仮)」になっていました。また、校了もしていませんでした。何もかも初めての自分にとってはこれが普通なのかなという理解と、急がなければならないという危機意識が同時にありました。
 タイトルはシンプルに「思考力(型)問題集」がいいなと考えていました。しかし、エール出版社から似たようなタイトルがあると指摘を受けました。そこで「思考力」の言葉を残しつつ他のタイトルも考えたのですがそれも似たようなのがあると指摘されました(調べてみると塾教材だったのでそこまで見てくれたんだなと感心してしまいました)。そこで最終的にはプロの判断に任せた方がよいだろうと思い、エール出版社が提案していただいた『中学受験社会 思考力を身につけるレッスン帳』にしました。

5,作成して感じたこと、今後の目標


(1)作成して感じたこと

 作成して感じたことは本書の「あとがき」にも載せていますが、簡単に言うと以下の通りです。

①思考力問題が増えてきていること
②思考力問題と時事問題の相性がよいこと

 こちらは本書を読んで確認して欲しいです。それに加えて「あとがき」に載せていないことがもう1点あります。それは「学校のレベルに関係なく思考力問題が出ていること」です。これは学校に失礼になるおそれがあることと字数の都合で本書に載せませんでしたが、偏差値関係なくまた東西関係なく思考力問題が出ています。これは表紙裏にある掲載校をご覧になれば分かると思います。おそらく掲載校の中には受験予定校が1つは入っていると思います。
 また、掲載校はほんの一部です。本書は資料の多い問題やリード文の長い問題は紙幅の都合上泣く泣く非掲載にしましたが、そうした問題は多くあります。表紙裏の掲載校を見て「なんでこの学校が入っていないんだ」と思うかもしれませんが、それはそうした理由からです。ですので、程度はともあれ思考力問題の対策はする必要があるといえます。

(2)今後の目標

 そして最後に今後の目標ですが、大きく2つあります。1つは今回作成した思考力問題をもっと紹介していくことです。本書は実際の入試問題を掲載し、思考力問題の導入として作成しました。しかし、この分野は今後もっと広がっていくはずです。そのためさまざまな問題に取り組んで対策する(楽しむ)必要があると思います。そのためにも本書以外の、例えば各分野・テーマ別にまとめた、授業で習った単元の復習や上乗せを目的とした問題集を作りたいという思いがあります。また、2,3年すればまた入試問題が溜まります。その時に再び最新版として出版したいという気持ちもあります。
 ただ、これらを実現するためには本書がある程度の評価を得る必要があります。そのためにも是非購入していただければと思います。

 そしてもう1つは時事問題集の販売です。中学受験業界での自分の認知度を高めたのはTwitterで時事問題を紹介していたからだと思います。それに自分がTwitterを始めたのは時事問題集を売りたいという動機からです。図らずも時事問題に注目するべきと思っていた思考力の問題集を先に出版することになりましたが、時事問題集も出版したいという気持ちは揺らいでいません。

 秋に時事問題集、年に1冊思考力問題に関する教材を出すことを今後の目標にしたいと思っています。そのためにもみなさんの協力が必要です。まとめがお願いになってしまいましたが、是非とも本書をお買い頂ければと思います。


Amazon
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E5%8F%97%E9%A8%93%E7%A4%BE%E4%BC%9A-%E6%80%9D%E8%80%83%E5%8A%9B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E9%9B%86-%E4%BB%AE-%E7%94%B0%E4%B8%AD%E5%89%87%E8%A1%8C/dp/4753934861/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&qid=1598107876&s=books&sr=1-1
7andy
https://7net.omni7.jp/detail/1107122057
楽天ブックス
https://books.rakuten.co.jp/rb/16425403/?l-id=search-c-item-text-01


いいなと思ったら応援しよう!