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マーケティングとは、広義のプロダクトと世界観作り。「マーケティング」に憧れがない人ほど向いている理由
こんにちは邨山毅です。
元々マーケティングの責任者をしていた自分の主観で、実務をやっていた時から感じていることのアウトプットです。
要約すると、マーケティングをPL的なものではなくBS的に捉えようという話です。
人は感情で意思決定し、後から理由を作る
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マーケティングをやる人は全員理解しておいた方がいいと思う心理です。
行動経済学的な話ですが、人間は感情の生き物で、どれだけロジカルに見える人でも感情先行の場合が極めて高いです。
つまり、感情でやりたいことを決め、そこに導くためにロジックを組み立てているということです。(思い当たる節ないでしょうか、残念ながら人間とはそういう生き物みたいです。)
ダン・アリエリーの「予想通りに不合理」読んでいただくと納得いただけるかと思います。
つまり、「こんなマーケティング施策をやりたい」という深層心理がある人は、その方向に近づくような意思決定をしがちであるということです。明確に、憧れは邪魔になります。
本質的にはどの領域でも起こりうる話ですが、実施したアクションがわかりやすく目に見える形になることが多いからこそ、マーケティング領域あるあるだと思っています。
逆にいうと、感情を排除して意思決定できる人はビジネス上は重宝し、クリティカルシンキングができる場合が多いです。(自分も、気がつけば感情先行で意思決定していることが時折あり、日々反省を重ねています。)
感情で意思決定して後から理由を作るのは、顧客も同じ
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少し話逸れますが、このあたりの話は逆に顧客に対しても当てはまるので、マーケティング活動上重要なポイントになってきます。
つまり、施策決定において適切な意思決定を邪魔するだけでなく、マーケティング戦略を考える上でも上記の行動経済学は役立ちます。
例えばですが、顧客獲得活動においてwho,what,howを考える際、whatの部分を以下の2点に分解して考えることもできます。
顧客の感情を動かす(直感的に利用したいと思わせる)
顧客に大義名分となる理由を与える(自分を納得させる材料を与える)
この辺りは諸説あるのかもしれませんが、必ずしも納得すればそのサービスを使うわけではなく、感情を動かさなければ顧客の行動は変えられないと私は考えています。
逆に、あんな広告やこんな施策を考える企画屋のような業務内容を想定している方からしても想定外かもしれません。アイデアだけではなく、右脳左脳どちらにもアプローチする思考の深さがものを言う領域です。
そうなるとアクションベースではなく、必然的に顧客視点でゼロベースで思考する必要性があります。顧客を理解して初めて、マーケティング活動は始まります。
この側面も、アクションベースで思考が走ってしまう程度にマーケティングが好きな人には退屈かもしれません。
顧客の感情を動かすのは、世界観
顧客の感情を動かすのはアウトプット(クリエイティブや広告手段)に起因することも多いと思いますが、最終的に顧客の感情を動かすのは世界観であるように感じています。
そしてその世界観はどこから来るかというと、「プロダクトミッション」「プロダクトビジョン」あたりから降りてくるべきものです。
まさに、プロダクトマネジメントの領域です。「仮説のミルフィーユ」ですね。
そもそもマーケティングはプロダクトをグロースさせる手段の一つでしかなくマーケティングの成功のKSFはプロダクト自身でもあるわけなのですが、そのマーケティング活動自体も担当者がプロダクトにどれだけ向き合えているかがKSFになるのだと思います。
マーケティングの本質を突き詰めるとどうしてもプロダクトにたどり着きます。
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そんな中で僕が大事にしていたことの一つが、「広義のプロダクト及び世界観」をマーケティング活動で作っていくことです。システム構築として、マーケティング活動を捉えることでPLではなくBS的に資産としてマーケティング活動を捉えることができます。
この図で言うと市場から広義のプロダクトに連れてくる一番外側の矢印が、広告などになるイメージですね。プロダクトミッションから世界観を作り、それをクリエイティブに落とし込むことで顧客との接点に納得感を生めます。
狭義のプロダクトでどんな便益が得られるのかだけでなく、ミッションやビジョンはどのようなもので、どんな世界観のプロダクトなのか、それら全てを落とし込んだクリエイティブにしていくことで、最終的には顧客の感情を動かせるのだと、つくづく感じています。
マーケティングの顧客理解
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ここまで述べてきたことを考えるにあたってのベースとなるのは、もちろん顧客の深層心理の理解です。
表面のニーズだけを理解して実務に入ってしまう人が世の中的には大多数だと思っていますが、本質的には、その方の育ったバックボーンや家族構成、思考性などまで理解した上でないと発掘できない深度のニーズも存在しているはずだと思っています。
ここでいう「ニーズ」とはただ単に「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」と切り分けられるような類のものではなく、それらのニーズを発生させている個々人の欲望に近いものです。
(程度の話なので終わりのない探究ではありますが)
僕自身はマズローの5段階欲求を頻繁に頭に思い浮かべながら解釈することが多いのですが、意外と、全ての思考は下の階層に繋がっているように思います。
田部さんの本などを読めばエッセンスは得られますが、基本すべてはユーザーを理解することからはじまります。とても丁寧な作業がここには必要です。
「マーケティング」という響きの良さに、キラキラした憧れを抱く人が一定数いらっしゃると思いますが、実務レベルに落とすと大半が細かい数字を見る作業や微細な改善、丁寧なユーザー理解に帰結します。
ここには本当に多大な時間を割くことになりますし、一次情報を持っていないと中途半端な成果に着地することが過去の経験からもわかっており、広告運用などは比較的外注しやすい性質ですがインハウスに拘っていたりします。(合わせて、そこにコミットできる方でないとやりきれないと感じています)
おわりに
カテゴリ(市場)創造やブランディングの領域まで視座を上げると少しアート側面のある戦略的なものも入ってきますが、そうでない限りは緻密で丁寧な側面が強いです。
とはいえ1:nで圧倒的大多数に効率的にアプローチできるのもマーケティングの面白いところで、割と明確に数字に跳ね返ってくるために目に見える改善活動も行えます。
客観視点で市場からのフィードバックを定量的に受け取れるという意味でも、自己成長を求める方にとってはかなり適したフィールドだと思っています。
「マーケティング」には憧れも興味もなかったが、プロダクトグロースおよび将棋や麻雀のような戦略思考が好きな人にはもってこいのフィールドではないでしょうか!
(マーケティングマネージャー採用中です。。)