登るために出かけ、帰るために登るという行為
中級ソロ登山者の上島です。今回は、僕の趣味である「登山」について語りたいと思います。
日本にはもともと山岳信仰があり「参拝や修行のために山に登る」という文化は古くからありますが、登山そのものを楽しむ、いわゆる「近代登山」がはじまったのは明治時代とされています。しかし、ひとくちに「登山」と言っても、山にはさまざまな種族の民がひしめき合っていますので、まずはそのイカれたメンバーたちを紹介します。
※個人のイメージです。
■ハイカー
一番ライトなプレーヤー。そこまでキツくない、なるべく安全な低山(300〜1,000m)を好み、軽く汗をかきつつ余裕をもってハイキングを
楽しむ。
■中級者
僕です。中低山(1,000〜2,000m)を主戦場とし、そこそこキツい縦走(山から山へ続けて歩くこと。5〜8時間ぐらいかかる)を好む。基本は日帰り登山だが、たまに泊まり込みで3,000m級にチャレンジすることもある。
■名山ハンター
「日本百名山」と呼ばれる、険しい山々を踏破することが生きがい。衣・食・住すべてをバックパックに詰め込み、一度山に入ったら1週間ぐらい下りてこないことも日常茶飯事。このあたりから急速に変態度が増す。
■ガチ勢
命の危険がある崖をよじ登ったり、真冬の雪山にテントを張ったり、国内だけでは飽き足らず海外のもっと険しい山に挑んだりする山にガチな人たち。ここまで来ると、もはやアルピニスト。
■トレラン勢
そして登山者と少し別のカテゴリに生息する「トレラン(トレイルランニング)勢」。とにかく軽装で激しく山中をダッシュしているので、転んで怪我しないだろうかとヒヤヒヤしながら見ています。
僕はこの勢力図においては割とライトな「中級者・ソロ」という属性ですので、今回はその目線で登山の魅力を語ります。
1.登山計画
登山メディアで情報を集めつつ、登山計画を立てます。どこの山を目指し、何時に出発し、どういうルートで登り、何時間で下りてくるのか。どんな装備で臨むのか。ご飯は何を食べるのか。近くに温泉はあるのか。旅行の計画を立てるのと同じで、とても楽しい時間。
2.登山口に向かう
日帰り登山の朝は早い。東京から向かうには遅くとも6時起きです。向かう途中はとくに楽しくはないです。ぼーっとTwitterなどをしてやり過ごす。山に近づくにつれ、逸る気持ちを抑えて靴紐を締め直したり準備を整えます。
3.登る
いよいよ登山スタート。たまに眼下に開ける展望や、豊かに生い茂るさまざまな植物、小鳥のさえずりや虫の鳴き声など、美しい自然を楽しむ余裕は、ほとんどないです。上りはとにかくキツい。特に夏はキツい。登りはじめから1時間ぐらいがピークにキツくて、このあたりから「超帰りたい」という思いが湧き出し早くも「帰るために登る」に目的が切り替わります。
あと基本怖いです。「え、なにここ暗っ」「なんかでかいハチいる!スズメバチ?怖っ!!」「あれこの先道なくない?迷った?」「うわびっくりした。なんでここにしめ縄あんの?こわ」「まだ山頂着かないんかい…いい加減飽きた…」「まじでバテた死ぬ」「早くお風呂入りたい…」などと愚痴と汗をこぼしながらひたすら登ることになります。この理不尽な時間がたまらなく最高に楽しいですね。登山の醍醐味です。
4.登頂
僕はことさら登頂を目的としないタイプなのですが、さすがにここまで苦労して登ってきたので「よっしゃ着いたーーー!!!」という達成感はそれなりにあります。重い荷物を下ろして身軽になり、ピッコロの気分で登頂の余韻に浸りながら眺望を楽しみます。
5.昼飯
飯は山頂で調理して食べるのが登山の醍醐味です。計画をミスると昼飯が15:00とかになってしまうこともありますが、とにかく山頂で食います。基本的には「メスティン」というスウェーデン製の飯ごうで玄米を炊きます。この玄米が炊けるまでの30分間が、恐怖や疲労からしばし開放されてゆっくりできる束の間のひとときです。(※この日は大量のスズメバチの襲来によりそのささやかな安らぎも粉々に破壊されました)
6.下山
飯を食ったらソッコーで下ります。なぜなら、早く下りないと日が暮れてしまうからです。漆黒に包まれた夜の山の怖さは、まじでハンパないです。下山時は、基本「無」です。「疲労」と「焦り」と「恐怖」がいっぺんに押し寄せ、心は自然と無になります。迫りくる暗闇(とスズメバチ)から逃げるようにひたすら無我の境地で下りる。下山時は、基本「無」です。「疲労」と「焦り」と「恐怖」がいっぺんに押し寄せ、心は自然と無になります。迫りくる暗闇(とスズメバチ)から逃げるようにひたすら無我の境地で下りる。
7.湯
ようやく下山できたら、最後の締めは温泉。登山と温泉は切っても切れない組み合わせ。登山計画時に入念に周辺の温泉チェックを行い、最短ルートで温泉に向かいます。疲れた後に安堵で脱力して浸かる温泉は最高。
8.帰路
温泉で疲れを癒やしたら、夜飯をそのへんで食って、ビールを飲んで、すぐに帰る。来た道をそのまま帰るだけなのでとくに楽しくはないです。ぼーっとTwitterなどをしてやり過ごす。
9.メンテ
家についたら荷物の片付け。バックパックの汚れを拭き取り、ギアを片付け、食器を洗い、登山靴を洗ってクリームを塗り、服を洗濯して干します。「疲れてるので片付けは明日」という人もいると思いますが、僕は寝る前に全部片付ける派です。
10.反省
寝床についたらひとり反省会。薄れゆく意識の中で、出発時間が遅かったとか、ルート選択ミスったとか、昼飯は山頂の手前で食うべきだったとか、虫よけだけじゃなく殺虫剤も必要だったとか、夕飯は鹿肉のパスタの方がよさそうだったとか、細々とした反省を行い次の山行に活かします。
これで終了です。楽しかったですね。
・今回登った山:六ツ石山(奥多摩・水根ルート)
・アクセス:JR奥多摩駅からバスで「水根」下車
・標高:1,478m
・所要時間:5時間(上り2h/下り3h)
・消費カロリー:2,184kcal
・立ち寄った温泉:奥多摩温泉もえぎの湯