◆不確かな約束◆しめじ編 第5章 中 怠惰な生活
うちのサークルは、別の大学と合同で飲み会をする事もよくあった。そんな時、一緒に行動するのはカズヤだった。カズヤは女の子を口説くのが趣味だと言うくらい、目に映った全ての女の子に、次々に声を掛けていった。
「シュウは自意識過剰だから、声を掛けるのを躊躇っちゃうんだよ! 自意識なんて捨てなさい。ただ自分の欲望と、女の子を喜ばす事に集中しなさい。見てくれはいいんだから、それさえ出来ればどんな女の子だって落とす事が出来るでしょう。さあ、私の後に続きなさい」
そうして僕はカズヤの後ろにくっついて、彼が女の子達を口説くのを見ていた。大抵の場合は、ただ笑われて終わった。でも10回に1回くらいは、「面白い人」から始まり興味をもってもらい、次の店に誘えたりした。10回に1回を馬鹿にしてはいけない。飲み会に一度参加したら、7、8人には声を掛けるから、ナンパ成功して次の段階(誰にも邪魔されず口説けるチャンスを得ること)に繋げられる事は多かった。
カズヤは一瞬にして、目の前の女の子を誉めるポイントを見つける事が出来た。そして冗談ぽさも交えながら、上手に楽しく誉める事が出来た。だから断られる場合でも、女の子達は一様に楽しそうで、悪い気はしていなさそうだった。僕はそんなカズヤを尊敬できるレベルだと思った。ただカズヤの良くないのは、彼を気に入ってくれたコとその夜ベッドを共にし、翌朝にはそのコから興味を無くしてしまう事だった。
カズヤと一緒に居ると、僕の方を気に入ってくれるコも居た。理由は大概「シュウ君ってカズヤ君と違って、真面目で優しそう」だって。そして僕もそんな女の子と、ベッドを共にするのだった。しかもカズヤと同じように、次の日には女の子の顔さえ思い浮かべる事が出来ない。
お酒については、だいぶ呑めるようになった。それまでには何度も吐いたし、酒なんて二度と呑むもんかと思うほど酷い宿酔いも経験した。その中で少しづつ、失敗しない呑み方を学んだ。それにしても、授業にはちゃんと出席しているものの、なんて怠惰な生活を送っているんだろう。ユキへの当てつけのように、酒とSEXに溺れ始めている。
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その日の飲み会は、カジュアルなイタリアンバルだった。みんなで赤ワインのボトルを空けていた。ワインはとても美味しかった。でも呑むペースに気をつけないと危ない。
いつものようにカズヤと他の大学の女の子達に声を掛けていると、めちゃくちゃ綺麗な女の子がカズヤに興味をもった。
「あなたって気もきくし、ほんまにおもろい人やね。でもそういう人に限ってむっちゃ寂しがり屋さんだったりするんよね」
その言葉につられて、隣のおとなしめのコも笑った。それから、おしとやかに美しくワインのグラスを口に運んだ。
「ズッキーン。つ、ついに見破られてしまったか。これまで誰にも話した事はなかったが、ようやく話すべき時が来たようだ。さっ そういう事で一緒に静かなバーにでも移りましょ!」
「ハハハ、もー カズヤ君てば、ほんまにおちゃらけた人やわ。まっ ウチはええけど、ミユはどうする?」
「んー ウチはええわ。明日早いし。アヤひとりで行きー。カズヤ君のこと気に入ったんやろ」
「うーん そうやけどぉ」
「なら、俺もやめとくわ。カズヤとアヤちゃんで行ってきなよ。俺、ミユちゃんを駅まで送ってくから」
「ほな、アヤちゃん。おふたりの言葉に甘えさせてもらって、いきまひょか」
「えー ミユほんまにええの?」
「ぜんぜんかまへんて。ふたりで楽しんでおいでや」
「もー ミユったら、なんかやらしい言い方してー。じゃ 行ってまうでー」
カズヤはグラスの中のワインを一気に飲み干すと、アヤちゃんの分も一緒に幹事に金を払い、ふたりで仲良く店を出て行った。
そして僕はミユと一緒に店に残った。ミユはまた美しくワインを口に含み、グラスを軽く優雅に揺らしながら、僕に向かって話し始めた。
大学2年の秋の出来事。
これが僕とミユとの出会いだった。
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