教授のプロジェクト 七田苗子君のレポート全容
さてさて、今日も講義をはじめようかのう。
今回は先週の七田苗子君のレポートの続きじゃ。
まずは諸君、苗子君の提出してくれたレポートを読んでくれたまえ。
かなりしっかりとしたレポートになっておるので、ボリュームはあるぞ。
今回の講義の時間はたっぷりととってあるから、念入りにしっかりと読んでくれたまえ。
皆が読み終わるまで、ワシは一眠りしとるわい。
あっ、そうじゃ。
先週の講義に出席していない者は最初から全て読むように。
先週も出席している者は⑤からじゃな。
苗子君のところでもう既に読んでいる者は、もう一度読み返してくれてもいいし、ワシと同じように寝てても良いぞ。
では、そろそろ良いかの。
あらっ、どうした?
皆、豆鉄砲を喰らったような顔をしておるぞ。
まあ、無理もない。
衝撃的な内容だったからのう。
しかしじゃなぁ、プロジェクト終了後の被験者4名のその後の生活まで追ってくれてあって、それを知って皆も安心したであろう。
一番安心したのは、このプロジェクトを立ち上げたワシに間違いはなかろうがな。ふぉっふぉっふぉっふぉ。
観察者のひとりとしての、苗子君の見たプロジェクト内容は悲惨な終わり方となってしまったが、これは全てワシの杜撰な計画と管理不足のせいじゃな。
箱庭環境における人間の心理及び行動についての研究じゃったが、被験者のありのままの姿を知りたいが為に、放置してしまった。
ホントに皆、命に別状が無くてよかったわい。
そもそも被験者の人選の仕方に問題があったようじゃのう。
まさか小春と冬音が姉妹であったとは。
ちゃんと個人について下調べしておく必要があったということじゃろう。
それから夏樹と文秋に至っては、最初から友達どうしだと知っていて2人とも参加させてしまったからのう。
いくら希望者が見つからず困っていたからといって、元々の知り合いを連れてくるべきではなかった。
反省しておる。
さて、この実験結果についてじゃが、
苗子君もレポート内で書いてくれておる通り、特殊な事情、人間関係という要素が入ってしまったので、一般的に再現不能な環境下での実験となってしまった。
この点において、この実験自体は失敗と言わざるおえんのじゃろう。
ただしかし、ある観点から見れば、それ以上の研究が出来たとも言える。
苗子君が被験者それぞれの過去をも掘り起こし、内面に持った不安や負の要素を炙り出してくれたおかげで、そのような各々の持つ特殊状況下において、被験者4名が関わりあった際の心理からとる行動が思いもよらない形で目にする事が出来たではないか。
これは諸君の中で、DVを含む親子間の関係、又は家族という人間関係における小さな集合体について特に興味を持って勉強している者にとっては、他には換えがたい研究となったであろう。
諸君各々がこのレポートを元に、しっかりともう一度考え、研究していって欲しい。
七田君のまとめレポートは大変に素晴らしかった。
花丸、特Aじゃ。
ただ、ワシが諸君に伝えたい事は、それだけが全てではない、という事じゃ。
同じ事象を見ても、人それぞれ見方・感じ方は違うはずだ。
そして結論も変わってくる。
自分の見解は自分の見解としてどうどうと発表して欲しい。
じゃが、違う見方をする者にも敬意をはらい、その考え方や物の見方を受け入れる寛容さを持った上で議論して欲しいのじゃ。
といったところで、今回の講義は終了としようかのう。
レポートを提出してくれた七田苗子君、ありがとう。
本当にご苦労さんじゃった。
皆も拍手で送ってくれたまえ。
あっ、それから一つ。
今回のこの箱庭プロジェクトじゃがのう、どうやらパラレルワールドになっていたんじゃないかという噂がたっていての、もし自分は全く違うものを見たという者がおれば、またレポートにして提出してくれたまえ。
ワシはにわかには信じられんのじゃが。
パラレルワールド?
あの箱庭の中で違う事象が起きていたと?
ふぉっふぉっふぉっふぉ。
まあ、それもまた興味深くて面白そうじゃがのう。
ふぉっふぉっふぉっふぉ。